患者さんにイラッとしたらどうする?ポイントは「受容」

日々、皆さまのクリニックに来られている患者さんの
性格や生活は十人十色です。

中には、ついイラッとしてしまう言動を
する人もいるでしょう。

病状が悪化するまで受診しない、病識が誤っている、
指示通りの服薬や食事制限をしないなど、治療に悪影響を及ぼす
行為は批判したくなりますよね。

今回は『患者さんにイラッとしたらどうする?』というお話です。

怒ると叱るは違う

医師として最善を尽くしているのに、
患者さんの協力が得られなかったとき、
ついついこのような表現をしていませんか?

「どうしてこんなになるまで、放っておいたの?」
「決まった時間に内服するように言いましたよね?」
「体重が増えていますよ!」

これらは患者さんの間違いを指摘しているようですが、
実はイラッとした感情をぶつけてしまっています。

「怒る」は腹を立てた気持ちを表現すること。
相手のためではなく、自分本位な行動です。

それに似た言葉に「叱る」があります。

「叱る」とは、相手の改善すべき点を明確にして、
成長を促すことです。
相手を知らなければ叱ることはできません。

患者さんを知人と呼べる関係なら、叱ることはできるでしょう。
多くの場合そうではありません。
医師が患者さんを「叱る」のはとても難しいことです。

怒っても変えられない

怒られた患者さんは間違いを反省するでしょう。
しかし、それと同時に
「でも忙しかったから」
「ネットに書いてあったのに」
「自分なりに頑張ったのだけど…」
と反論も思いつきます。

この段階では「先生に怒られた」ということだけで、
その理由や改善方法は明らかになっていません。

つまり、何も変わってはいないのです。

自分の病気を悪化させたい人はいません。
不適切に見える行動には、患者さんなりの事情があります。

  • 仕事がどうしても休めなくて受診が遅れた
  • 育児に追われて内服時間を守るのが難しい
  • 日々のストレスで食べ過ぎてしまう
    など。

患者さんには生活があり、その中で様々な困難に直面しているのです。
それを明らかにしなければ、本当の問題は見えません。

しかし、医師に強く否定されてしまうと、
患者さんは口を閉ざしてしまいます。

行動変容の必要性は理解しても、その糸口が見えなければ
いつまで経っても患者さんは変わることができません。

「なるほど」「そうですか」は魔法の言葉

患者さんの行動が不適切であると思うからイラッとするのです。

まずは行動の良し悪しを評価するのではなく、
「このようなことがあったのだ」と受容することが大切です。

「なるほど」
「そうですか」
とゆっくりと穏やかに話し始めます。

すると自分の中では
「患者さんなりの事情がある」
と言うことを認識でき、
怒りの感情をおさえることができます。

それと同時に、患者さんには
「あなたのことを受容します」
と伝えることができます。

「そうですか。だいぶ前から症状があったのに、受診されなかったのですね」
「なるほど。決まった時間に内服できなかったのですね」
「そうですか。仕事で色々あって、ダイエットどころではなかったのですね」

「先生は自分を受け入れてくれた」
と感じると、患者さんは安心して話すことができます。

内容によっては、「患者さんの言い分も一理あるな」と
思えるかもしれません。

会話の中でお互いに課題を認識し、
実行可能な具体策を見つけられれば、
患者さんはそれを行動に移すだけです。

「1日3回の内服が難しいようでしたら、回数を減らせる薬に変更しましょう。」
「決まった時間に内服するために、携帯のアラーム機能を活用してみはどうですか?」

「これならできます」という言葉が聞かれたら、
患者さんが行動変容のスタートラインに立ったサインです。

まとめ

患者さんを怒っても、行動を変えることはできません。

「なるほど」「そうですか」と受容の態度を示し、
患者さんの主張に耳を傾けましょう。

患者さんと一緒に問題点を見つけ、
具体的に実行可能な方法を検討することが、
行動変容の第一歩なのです。

イラッとしたときこそ、穏やかな態度を心がけてみてください。

看護師M.K.

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