クリニックに見えない悪影響をもたらす「当たり前」という感覚

「何で当たり前のことができないの?」
新人の頃よく言われたかもしれません。

そして誰かに対して
言ったことがあるのではないでしょうか?

今回は「当たり前」という感覚について
改めて掘り下げて考えてみます。
また、「当たり前」という感覚の理由と
改善策についてご紹介します。

クリニックの職員は既卒者が多い

学校を卒業した医療従事者の多くは、
大規模の病院に就職して知識や技術を学びます。
そして既卒者(経験者)は、
医療従事者として一人前であると見なされます。

つまり既卒者は「当たり前」の行動が
できる人と言うことができます。

新人教育体制にはコストがかかります。
そのためクリニックは、即戦力となる人材を
求める傾向にあり、既卒者が多い現場だと言えるかもしれません。

指導手順や業務マニュアルを完備し、
計画的な新人指導をしているクリニックは
なかなかありません。
教育に人も時間も割けない…
というのが正直なところではないでしょうか。

実は違う!ひとりひとりの「当たり前」

細かい指導をしなくてもすぐに
現場に慣れてくれるのが既卒者です。
医療的な禁忌事項や法令違反といった
ルールが明確なものへの認識は信用できるでしょう。

しかし意外と気づかないのは
業務に対する細かい「当たり前」という感覚です。

筆者は複数の病院・クリニックで働き、
保育園や不動産業など医療業界以外の勤務経験もあります。
就業開始何分前に出勤するか
電話でのメモの取り方
ゴミの捨て方 など、
細かい「当たり前」は現場ごとに異なりました。
また、ひとりひとりの「当たり前」も異なりました。

以下は筆者の体験です。
ゴミ袋を2重にする現場に慣れていた筆者が
別の現場でも無意識に同じことをすると
「ゴミ袋の無駄遣いだ」と怒られました。
ある先輩の指導通りにしたら、
別の先輩に「どうしてこんなことするの?」
と指摘を受けたこともありました。

「当たり前」がズレると何が起こるか

「当たり前」がズレる職場は
とても働きにくい現場になってしまいます。
以下に例を2つ記載します。

  • 医療事故を起こすリスクが高まる
    Aさんは「違います」と否定されなければ、
    相手の了承を得たものと認識します。
    Bさんは「◯◯ですね。承知しました」と
    相手が指示を復唱しなければ、
    再度確認し直す必要があると考えています。

この2人が互いに指示を確認したらどうなるでしょう?

お互いが勘違いしてしまい、
医療事故のリスクも考えられるかもしれません。

  • 自分も否定された気分になる
    「どうしてそんなことを聞くの?」
    「これって当たり前だよね?」など、
    自分があたかも常識不足かのように
    指摘されると、単純に傷つきます。
    仕事に誇りを持ち誠実に勤務している人ほど
    ダメージは大きいかもしれません。

知識や技術が未熟であるという指摘は、
ある程度自覚もあるでしょうし、
改善の方法もあります。

しかし、常識を否定されたときの対処は
とても難しいと感じるかもしれません。

合わせるべきは「常識」ではなく「ビジョン」

とは言っても常識を一定にするのは困難です。
生まれや育ち、医療現場での経験など、
それぞれが異なる人生であるスタッフの
細かい「当たり前」をひとつひとつ整理することはできません。

そこで共有すべきはクリニックの「ビジョン」です。

  • 何のためにクリニックがあるのか
  • 何を目指すのか
  • 何を大切にするのか
  • コスト面をどう考えるか

クリニックが創造したい未来を共有すれば、
お互いにある程度の違いを認めることができます。

先ほど述べた筆者の体験である、ゴミ袋の話で考えます。
「あの人が2重にして捨てたのは悪臭を防ぐためかも。
患者さんが嫌な思いをしないようにかな。
前のクリニックでそう指導されたのかも。
でも私の経験では1重でも匂いは気にならなかったから、
コスト面を考えると1重にしてもらう方がいいな。
そう伝えてみよう。」

このように考えることができていたら、
丁寧に説明できたかもしれません。
スタッフがクリニックのビジョンを共有し、
常にそれに向かって行動しようとすると、
自分と異なる考えや行動を否定しにくくなります。

「きっとあの人も理由があってしているんだ」
と思うことができれば、
批判ではなく理由を確認し、
その方法がビジョンに合っているか
議論することができます。

細かい「当たり前」の違いを業務改善の
糸口にすることもできるでしょう。

まとめ

既卒者の多いクリニックでは、
お互いの「当たり前」がもたらす悪影響に
気づかないまま、働きにくい環境に
陥っているかもしれません。

クリニックのビジョンを共有することが、
スタッフごとで異なる「当たり前」という
壁を乗り越える力になるでしょう。

「当たり前」になっていないか、
ぜひ見直してみてはいかがでしょうか。

看護師 M.K.

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