日本人の2人に1人は一生のうちにがんと診断される時代です。
そのため、かかりつけ患者さんが
がん治療を受けていることは珍しくないでしょう。
社会生活を送りながら治療を受ける
がん患者さんが増えたことなどにより、
近年は患者さんの「外見へのケア」に注目が集まっています。
厚生労働省の第4期がん対策推進基本計画
にも示されているように、国は
「アピアランスケア」に関する相談体制や
情報提供体制の構築を図る意向です。
本記事では、かかりつけ医として
知っておきたい「アピアランスケア」の
定義や種類、相談先についてご紹介します。
がん患者さんは治療による見た目の変化に悩んでいる
「アピアランスケア」とは、
「医学的・整容的・心理社会的支援を用いて
外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア」です。
国立がん研究センターが提唱する造語で、
がんやその治療に伴う外見の変化に悩む
患者さんや家族に対して、多職種の医療者が
支援することを意味します。
アピアランスケアには、
外見への介入・心理的な介入・社会的な介入
の3つのアプローチがあります。
それぞれ、以下で解説します。
- 外見への介入
外見への介入とは、がん治療によって
変化した外見を自分らしく、
社会生活しやすいように整えることです。
皮膚科や形成外科での治療、
ウィッグやカバーメイクを用いた
外見へのケアなどが含まれます。
- 心理的な介入
脱毛や浮腫といった外見の変化があると、
「みっともない」「恥ずかしい」と
感じてしまう患者さんもいるでしょう。
心理的な介入では、患者さんの自己認知、
身体認知、社会認知などへ
働きかけることで、外見の変化に伴う
心理的な負担を軽減します。
- 社会的な介入
患者さんは、がんであることを
周囲の人に打ち明けることで
「これまでと同じように接してくれるか」
「同情されたり気を遣われたりしないか」
といったことが気になります。
社会的介入では、外見が変化した後も
対人関係を保ち、安心して社会生活を
送るための方法について検討します。
がんや治療によって外見の変化が起きても、
患者さん自身が気にならない場合には、
アピアランスケアを無理に行う必要はありません。
また、アピアランスケアの目的は
「外見が変化しても自分らしく過ごせること」
であり、がんになる前と同じ状態に
戻ることを目指すものではないのです。
がん治療による副作用とアピアランスケアの具体例
ここからは、がん治療によって起こり得る
外見の変化と、「外見への介入」の一例を紹介します。
- 脱毛
髪の毛の脱毛には、帽子やウィッグ、
バンダナなどを使用します。
髪の毛が薄くなる程度であれば、
薄毛用パウダーで対応できることもあるでしょう。
眉毛やまつ毛の脱毛は、メイクやメガネで
目立ちにくくすることが可能です。
- 傷跡
外科的治療後の傷跡をカバーする際は、
帽子やネックウォーマーなどの衣類、
カバーメイク、エピテーゼ(※)などです。
※失われた身体の一部を人工の材料を使って補う技法
形成外科や皮膚科で治療を受けるという
選択肢もありますが、美容上の理由で
受ける治療は健康保険の適応にならない
ケースがあることに注意が必要です。
- 肌や爪の変化
白斑や皮膚炎といった肌の変化には、
保湿中心のスキンケアを行い、
紫外線などの刺激を避けることが大切です。
肌色の違いが気になる部分は、
メイクや衣類でカバーします。
爪が変色したり、薄くなったりした場合は、
マニキュアやネイルオイル、
ハンドクリームなどを使って保護します。
- 乳がん術後の変化
乳房切除術などによる見た目の変化を
整える際には、ブラパッドやエピテーゼ
といった補整具を使用します。
周囲の目が気になりやすい浴場や
サウナを利用するときには、
専用入浴着の着用を許可されている
場所を選ぶと良いでしょう。
がん治療に伴う外見の変化は個人差があり、
最適な対処法もそれぞれ異なります。
しかし、アピアランスケアについて
専門的な助言ができる医療者はまだ少なく、
人材の育成が課題となっています。
近隣のアピアランスケア相談窓口をチェック!
アピアランスケアに関する相談窓口には、
全国のがん診療連携拠点病院や
小児がん拠点病院などにある、
がん相談支援センター、保健センターなどがあります。
アピアランスケア専用の窓口を設けている
病院もあるため、クリニック近隣の相談窓口を確認してみましょう。
また、アピアランスケア支援事業を
実施している自治体に居住していれば、
医療用ウィッグや乳房補整具などの購入費用が助成されます。
がんによる外見の変化に悩んでいる
かかりつけ患者さんがいる場合には、
主治医への相談を促すとともに、
活用できる社会資源を紹介すると良いかもしれません。
看護師 K.Y