【前編:鹿児島大学 隅田泰生 先生監修】PCR検査とは?イムノクロマト法との違い
もくじ
    • PCRとは?
    • イムノクロマト法とPCR法の違い

PCRとは?

PCRとは、
「ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)」
の略語であり、生物の遺伝情報をもつ
DNAを複製し、増幅させる方法のことを言います。

PCRを利用すれば、ごく微量な検体でも
そこに含まれるわずかなDNAから、
特定の配列だけを短時間で増やし、
目的の遺伝子配列が存在しているかを
知ることができます。

インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス
のようにRNAを検出対象とする場合は、
まず逆転写酵素を使ってRNAからDNAを作り、
それを用いてPCRを行うので
reverse transcription PCR:RT-PCRと略されます。

これらPCRやRT-PCRの特性を活かして、
体内や食品などに潜む細菌やウイルスを検出し、
その存在を確認しさらに定量することもできます。

イムノクロマト法とPCR法の違い

インフルエンザは、
イムノクロマト法による迅速診断キット
(簡易キット)が広く使用されています。

迅速診断キット(簡易キット)は、その多くが
特別な設備や管理・技術が不要で、かつ短時間
で結果が得ることができ、その名の通り
迅速に診断ができる点がメリットです。

しかし一方で、イムノクロマト法は(RT-)PCR法に
比べると感度が低いため※、
ウイルスに罹患し、体外へウイルスを
排出しているにもかかわらず、
陰性と判定して(偽陰性)しまうことがあります。
※イムノクロマト法はウイルスが10万~100万個、
RT-PCR法は10~100個あれば検出可能

つまり、イムノクロマト法は感度が十分
ではないため、偽陰性患者から感染が
広がる危険があります。

また、病状が進み、ウイルス量が増えないと陽性結果が
得られないため、患者は受診を
待機させられる事例が多く見られます。

病状が悪化した結果、より多くの治療薬が
必要になり、回復までに時間がかかります。

実際、アメリカ感染症学会からは、
インフルエンザの入院患者の検査には
イムノクロマト法を用いず、PCRを
用いるようにガイドライン(※)が出されています。
※IDSA インフルエンザガイドライン 2018
https://www.idsociety.org/practice-guideline/influenza/

さらに、「呼吸器感染症」では、
鼻咽頭や咽頭ぬぐい液を検体として
使用するケースが主流であり、
検体採取をする際に鼻などに綿棒を入れる
ことで異物感や痛みを感じて、
特に小児患者などで検査を嫌がる
ケースがあります。

では、
・侵襲性が低い検体の採取方法
・ウイルス量が少ない、感染初期から高感度に検出できる
という技術があればよいと思いませんか?

次回の記事では、このような希望が実現できる
新しい検査方法をご紹介します。

続きはこちら
↓↓↓
【後編:鹿児島大学 隅田泰生 先生監修】
辛くない感染症検査を実現!さらに高感度に検出するための技術

執筆:鹿児島大学大学院理工学研究科 特任教授 隅田 泰生 先生

※本記事内の「RT-PCR」は、reverse transcription PCRのことです。

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