指示から提案へ 患者さんと「できる」治療方針を

コンコーダンスという言葉をご存じでしょうか?
1990年代半ばからイギリスで発展してきた考え方で、
服薬コンプライアンス向上のために検討されました。

「患者さんと医療者は同じチームの一員」という概念で、
最終的な意思決定は患者さんが行うというものです。

コンコーダンスの概念やモデルの解説ではなく、
今日からすぐに始められる、患者さんと「できる」
治療方針の具体的内容をお伝えします。

睡眠薬が飲めない:経験談


2年ほど前に筆者(私)は、寝た気がしない、1日中眠い、
何だか気分が落ち込むという症状に悩まされました。
そこで家の近くの心療内科を受診。

とても穏やかな先生で、しっかりと話を聴いてくれました。
「それほど深刻ではないです。薬を飲めば大丈夫。
眠れば元気になりますよ。」と先生。
睡眠薬を処方してもらいました。

大したことないと分かり、ほっとした半面、
当時の私は4歳と0歳の育児中。
夜中は子どもに起こされることも多く、
寝入ってしまうことに不安がありました。

またフリーランスで仕事をしていたので、
子どもが寝た深夜に作業をすることもしばしば。

寝入ってしまうかもという不安と、
不規則な就寝時間のせいで
内服を続けることはできませんでした。

先生にも申し訳ないような気がして、その後は未受診。

自力で何とか乗り越えるという結果になったのです。

患者さんは医師の指示に従うはずという前提

医師が考える治療が最善であるのは言うまでもありません。
治療は計画通りの行動をしてはじめて効果があります。

しかし、患者さんに合った方法であるとは限らないのです。

あなたは患者さんが守ってくれることを
前提に指示を出していませんか?

高血圧や糖尿病など、自覚症状が乏しいものの、
しっかりとした管理が必要な疾患はさらに問題です。

自分自身があまり辛くなければ、
優先順位を低くしてしまいがちです。
しかし、これらを放置すれば、深刻な問題を
引き起こす可能性が高まります。

自覚症状の少ない患者さんは、日常の中で
自分を「患者」として意識する時間はあまりありません。

医師の指示を守っていないことに、
何となく罪悪感や危機感を覚えながらも、
知識の不足からその先に何が起こるかを、
具体的に想像することはできません。

「仕方ない」の繰り返しで過ごしてしまうのです。

もちろん、患者さんの努力も必要です。
病気に対して理解を深める、少しずつ行動を見直す、
定期的に受診するなどはそれほど無理なこと
ではないでしょう。

どんなに素晴らしい計画でも、
実行されなければ意味がありません。
もっとも効果が高いと思われる治療方法を採用しても、
患者さんが行動に移さなければ、効果が得られる
可能性は低いでしょう。
一方で、たとえ効果が少し落ちる可能性が
あったとしても、患者さんが「できる」方法にするほうが、
得られる効果は高いかもしれません。

「指示」ではなく「提案」を

患者さん自身も医師の指示に従うべきだと考えています。
科学的に最も有効な方法であると理解しているからです。
指示に従えるかどうか自信がなくても、
それは自分の問題であり、先生の指示にあれこれ
言うのは申し訳ないとも思っています。

「〇〇してください」という指示の表現から、
「〇〇してほしいのですが」
「〇〇はできそうですか?」
と提案の表現にするだけでも
患者さんに与える印象は大きく変わります。

指示を出す、従うという関係から
対等に話し合い、お互いに協力し合う
関係であることを示唆するのです。

それでは診察時間がいくらあっても足りないと
思われるかもしれません。
説明を工夫するだけでも違ってきます。


例えば、
・優先順位の高いことに絞って話をする
・診察のたびに少しずつ患者さんの情報を得られるようにする
・パンフレットやインターネットを活用する
など、先生の腕の見せ所ではないでしょうか。

私も心療内科を受診した際に、
先生に自分の不安を話せていたら…と今では思います。

「まずは試してみましょう。
お子さんをご家族にお願いできるときに
内服してみてください。
今は1回でも2回でもしっかりと
眠ることが大切です。
違うな…と思ったら他の方法を考えましょう。」

と言ってもらえたなら、だいぶ違っていたでしょう。

まとめ


一方的に指示をすると、患者さんは口を閉ざしてしてしまいがちです。
「〇〇してください」ではなく、
「〇〇してほしいのですが」「〇〇はできそうですか?」
という表現に変えみてください。
それだけで患者さんは意志表示がしやすくなります。

遂行すれば確実に効果が得られるが、
患者さんが継続できるか不安がある方法より
患者さんが自分自身で「これならできます」という方法を
一緒に探してみてはいかがでしょうか。

看護師M.K.

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