医療機関の経営において資金調達が必要なときは?

事業運営には少なからず資金が必要です。
今回は、医療機関における資金調達に
ついて開業前から開業後の必要資金まで、
事例に応じた資金調達の方法を紹介します。

新規開業~分院開業するとき

自己資金のみでクリニックを開業された
というケースは稀ではないでしょうか。

多くの方は新規開業(起業)の際に
借入をされた経験があると思います。

開業に必要な資金は

  • 内装工事費用、
  • 医療機器購入費用などの設備資金
  • 数ヶ月分の人件費
  • ランニングコストなどの運転資金等

多額になります。

この資金を自己資金のみで準備できる
のはごく少数派で、大多数の方は
借入等の調達をする必要があります。

開業資金の借入先は都市銀行や
地方銀行といった民間金融機関が
代表的です。

諸条件は金融機関によって異なりますが、
返済期間については
設備資金なら10年~20年、
運転資金は7年~10年
のケースが大半です。

また、融資に対する審査は
数週間~数ヶ月の期間を要します。

クリニックの開業を決意しても
すぐに開業出来るわけでは無く、
長い準備期間を要します。

資金調達については準備期間の中で
スケジュールを立て、金融機関へ
申し込むことが必要です。

金利等の条件や開業後のメインバンクを
持つという観点からも、都市銀行や
地方銀行といった民間金融機関を
メインに開業資金の調達先を検討
されるのがベターな選択肢と思われます。

薬機未承認医療機器を購入するとき

ここからは開業後の資金調達のお話です。

診療科目によっては、海外製の
国内未承認医療機器を導入されることも
あると思います。
(事例:皮膚科用レーザー装置など)

日本国内で未承認の医療機器は
リースや割賦購入などの分割払いを
利用することは困難です。

では、自己資金で購入するしか
ないのでしょうか?

銀行から融資を受けて外貨に換金し、
海外送金する方法もありますが、
銀行に資金使途を明確に説明する
必要が生じます。

銀行の担当者が医療業界に詳しければ
苦労することはありませんが、
そうではないケースも多いです。

融資実行までひと月以上かかることもあり、
支払期限に間に合わなくなる危険性があります。

海外から輸入するにあたり、為替相場に
よって必要資金額が変動すると更に
銀行との調整が必要なケースも考えられます。

そんなときは、リース会社による
融資を利用するという手法もあります。

医療機関向けに融資制度を持つ
リース会社もあり、手続きに詳しい
ところであれば審査も比較的早く、
申込みから融資実行まで短期間で
対応できるケースもあります。

運転資金について

クリニックの運営には
人件費や医薬品の仕入など
日々の資金が必要です。

予想通り、もしくは予想以上の患者さんが
来院され、業績が順調であれば良いのですが、
逆に当初計画を下回り、見込んでいた収入を
得ることができないケースも
想定しておかなければなりません。

また、予期せぬ事態により急遽多額の
資金が必要になった場合は
新たな運転資金を確保する必要があります。

メインバンクから借入するのが
ベターですが、一般的に予定外の運転資金の
調達は難しいと言われています。

借入出来なかった場合は、新たに別の銀行に
借入を申し込むことも可能ですが、
その場合はさらに調達が困難です。

そこで資金調達の手段として、売掛金を
早期資金化する「ファクタリング」という
制度があります。

医療機関から診療報酬債権を
ファクタリング会社が買取り、
前払いするサービスです。

通常、国保・社保からの入金は
診療報酬の請求から1.5ヵ月の期間を
要しますが、ファクタリング会社に手数料を
支払うことにより、国保・社保からの入金を
待たずして、ファクタリング会社から
診療報酬相当額が医療機関に支払われると
いうものです。

結果として、およそ保険請求額の1ヵ月分を
運転資金として確保することが出来ます。

ただ、手数料や諸条件はファクタリング会社に
よって異なるのでよく調べる必要があります。


運転資金が必要な予期せぬ事態に備えて、
自己資金や親族からの資金などは
温存しておくのが安心でしょう。

事業譲渡・M&A資金

後継者が不在・未定といった
クリニックが増えていると言われています。

一方で、独立を目指す医師は増えており
毎年数千件のクリニックが開業しています。

引退を考えたいけれども、
後継者がいない等でお困りの場合、
事業譲渡・M&Aという選択肢があります。

事業譲渡には企業価値評価などの
様々な手続きが必要であり、
専門家に依頼するケースが主流です。

開示情報不足等による後々のトラブルを
避けるためにも当事者だけでなく
専門家を介した事業譲渡をおすすめします。

逆に、昨今はM&Aにより
買取ったクリニックを分院にするケースも
珍しくありません。

その場合、事業の売り主へ支払う
事業買取資金を準備する必要があります。

手元資金で足りるケースもあるかも
しれませんが、前項で述べたように
予期せぬ事態に備えて自己資金は
温存するのが安心です。

そこで、資金調達は新規開業時と同様に
クリニック開業資金として銀行に
相談する方法の他に、リース会社の
医療機関向け融資制度を利用する
方法もあります。

資金調達の選択肢は複数ありますが、
金融機関によって考え方は異なり、
融資の対応が出来ないところもありますので
早めの相談が必要です。

ちなみに銀行やノンバンクはM&Aの
相談を受ける事も多く、売り手・買い手の
情報を蓄積しているケースもありますので、
M&Aを検討する際には相談してみると良いでしょう。

最後に

資金調達といっても資金使途や
クリニックの経営状況、
融資が必要な時期など
個々の事情に応じて課題や
重要視するものが異なると思います。

資金調達の種類を理解し、
自身の状況に応じた手段を
選択すると良いでしょう。

予めの準備として、日頃から
顧問税理士などに相談しておくと良いでしょう。

記事提供:シャープファイナンス株式会社 N・N

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