本当にモンスターペイシェント?クレームを受けたら考えたいこと

クリニック経営者のなかには、
患者さんからのクレーム対応に
悩んでいる人もいるでしょう。

「モンスターペイシェントだからでは?」
と思うようなトラブルも、
実はクリニック側の対応が
きっかけになっている可能性があります。
患者さんをクレーマー扱いすると、
問題がさらに複雑化するかもしれません。

今回は、モンスターペイシェントの心理と、
患者さんからクレームを受けた際に
クリニックのスタッフで
考えて欲しいことについて解説します。

患者さんは医療に何を求めているのか?消費者の4大欲求

インターネットから容易に
医療情報を得られるようになったことや、
患者さん側の権利意識が向上したことで、
医療機関はよりレベルの高い診療技術や
接遇を求められるようになりました。

かつて厚生労働省が
「国立病院・療養所における医療サービスの質の向上に関する指針」
 (※2002年発刊 )
のなかで、患者さんの姓名に「様」を
つけることが望ましいと通達したことが、
過剰な権利意識を助長したとも言われています。

高まる医療へのニーズに応え、
患者さんのモンスター化を防ぐためには
「消費者欲求」について理解しておく必要があります。
「消費者欲求」は以下の4つが挙げられます。

 1. 機能・品質欲求
品質の高い商品や、機能的に優れた商品が欲しいという欲求です。
「高度で適格な治療を受けたい」といった
患者さんの欲求は、機能・品質欲求に含まれます。

 2. 経済的欲求
商品をできるだけ安く手に入れたいという欲求です。
「診療時間が短いわりに治療費が高い」
「診療報酬の仕組みがわからない」
といったことがあると、
患者さんの経済的欲求は満たされにくくなります。

 3. 愛情欲求
「もっと声をかけて欲しい」
「愛想よく対応して欲しい」
など、自分を大切な存在として丁寧に扱って欲しいという欲求です。
院内の雰囲気や待ち時間の長さ、
スタッフの対応などは、
患者さんの愛情欲求に影響します。

 4. 尊厳欲求
自分を特別扱いして欲しいという欲求であり
「診療の順番を後回しにされた」
「自分の訴えを聞いてもらえない」
といった感覚があると、
尊厳欲求が満たされない可能性があります。

機能・品質欲求と経済的欲求には、
医療技術や施設設備、治療費用などが関連しています。
これらの欲求は、満たされているかどうかを
患者さん自身が認識しやすく、
「満足できて当然だ」
という感覚があるため、
クレームに結びつきやすいと言われています。

愛情欲求や尊厳欲求は
「自分の気持ちをわかって欲しい」
という心理的補償を求めるものです。
「どのようなサービスを、どの程度提供すれば良いのか」
が見えにくいですが、
欲求を満たすことができれば、
患者さんの満足度を向上させることもできます。

実例から考えるモンスターペイシェントの心理

モンスターペイシェントは、
一体どのような思いで理不尽な要求を繰り返すのでしょうか。
実際にあった患者さんからのクレームのうち、
弁護士や警察が介入した事例には、以下のような動機がありました。

● 期待していた治療効果が得られなかった
● 治療に関して納得できる説明をしてもらえなかった
● スタッフの対応や病院のシステムに不満を感じていた
● スタッフによってケアの方法に違いがあった
● 特別扱いされたいという思いがあった
● 治療費などをできるだけ支払いたくなかった

いずれの事例も、患者さんの消費者欲求が
満たされなかったことをきっかけに、
患者さんがモンスター化していたことがわかります。

医療従事者に対する暴言や暴力、
業務を妨害するほどの過剰な要求は、
決して許されるものではありません。

しかし、
「治療や検査について不安なことがないかを確認する」
「ケアの方法に差が出にくいようスタッフ間で情報共有する」
といった配慮があれば、
問題が大きくならずに済んだかもしれません。

患者さんからのクレームはクリニックの課題を見つけるチャンス

医療サービスの大部分は
人の手を介して提供されるため、
患者さんとのコミュニケーションが
不十分であるとトラブルが発生しやすくなります。

東京都保健医療局の
「令和5年度『患者の声相談窓口』実践報告」
によれば、都本庁と都保健所に寄せられた
医療機関に対するクレームのうち、
最も多かったのは「コミュニケーションに関すること」でした。
なかでも「医療従事者の接遇」に関する
相談やクレームは多く、診療所も例外ではありません。

患者さんからクレームを受けたら
「モンスターペイシェントだ」
「クリニック側に問題はない」
といった先入観を持たずに、
まずは話を最後まで聴くことが大切です。

患者さんの気持ちに共感しながら、
クレームが合理的な理由によるものなのか、
事実関係を確認しましょう。
その場で具体的な解決策を提示できなくても、
真摯に対応していることが伝われば、
患者さんの不満は軽減されます。

患者さんからのクレームを通じて、
クリニック側に課題が見つかった場合は、
可能な限り改善するよう努めましょう。

クリニックの経営者の皆さんが
クレームに誠意を持って対応する姿勢を
スタッフに見せることで、意識が高まり、
医療サービスの質の向上にもつながるかもしれません。

看護師 K.Y

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