疑義照会をきちんとする薬局はかかりつけ医の最後の砦

忙しい外来の最中に薬局から疑義照会が
あると、つい煩わしく感じることもあるのではないでしょうか。

ところが、疑義照会は適正な薬物療法や
副作用の回避など、かかりつけ医の診療の
アドバンテージにつながるのです。

かかりつけ医の最後の砦として、疑義照会のメリットを紹介していきます。

ネガティブな感情を抱きがちな「疑義照会」

薬局からの疑義照会に対して、ネガティブな
感情を抱いてしまう医師は少なくないようです。

一方、日本薬剤師会による調査では、
疑義照会のあと、7〜8割が処方を変更しています。

処方ミスが原因で医薬品の事故に
つながることは珍しくありません。
場合によっては死亡事故になる可能性もあります。

薬局からの疑義照会の発生は約3%とまれ
ですが、かかりつけ医を事故から未然に防ぐ、
大きな役割を担っていると言えるでしょう。

疑義照会で事なきを得た事例も
医師も人間ですので、ヒューマンエラーを
起こすことはあります。

処方せんに関連するトラブルはさまざまな
種類がありますが、実際に疑義照会で
事なきを得た典型的な例を、いくつかご紹介します。

疑義照会で事なきを得た事例も

医師も人間ですので、ヒューマンエラーを
起こすことはあります。

処方せんに関連するトラブルはさまざまな
種類がありますが、実際に疑義照会で
事なきを得た典型的な例を、いくつかご紹介します。

■事例1 処方せんの入力ミス

1つ目は、処方せんの入力ミスです。
花粉症の患者さんに糖尿病治療薬
「ルセフィ(ルセオグリフロジン)」が
処方されましたが、薬剤師が症状と薬剤の
不一致に気付いて疑義照会を実施。

その結果、抗アレルギー薬「ルバフィン
(ルパタジン)」に処方変更されました。

処方オーダリングシステムで起こりがちな
類似名称薬の誤選択からの事故を回避したと言えます。

■事例2 禁忌薬処方のミス

2つ目は、気付かずに禁忌薬を処方してしまった例です。

腰痛患者に消炎鎮痛薬「ロキソニン
(ロキソプロフェン)」が処方されましたが、
薬剤師による聞き取りで、過去に他院で処方
された同剤のジェネリック薬(製品名は
ロキソニンではない)による浮腫の既往が判明。

疑義照会で他の消炎鎮痛薬に処方変更されました。

患者さんはロキソプロフェンの禁忌または
使用注意の腎機能障害であった可能性があります。

■事例3 力価の確認ミス

3つ目は、力価の違いに気付かずに処方してしまった例です。

鎮咳薬アスベリン(チペジピンヒベンズ酸)
には2種類の粉末製剤があり、
ドライシロップは2%、散剤は10%と力価が違います。

ドライシロップの投与量と同じだと思って
散剤を処方すると、5倍量になってしまいます。

小児処方など慣れない症例で見られ、
薬局からしばしば疑義紹介が入るケースです。

疑義照会は日本全体の医療改善にもつながる

疑義照会は、事故の防止だけでなく、医療の無駄も省く効果があります。

■疑義照会の医療経済メリットは年間236億円

疑義照会には、用法用量順守や残薬の
チェック、重複薬剤削減、そして副作用回避の機能があります。

全国的な調査によれば、薬局薬剤師が行う
疑義照会は、薬剤費節減で103億円、
重篤な副作用回避で133億円、
合計で年間236億円の医療費削減効果があると推定されています。

1つ1つは小さな事例ですが、積み重なると
日本の医療全体に大きな影響を及ぼしているのです。

■薬剤師から提案した減薬、実現すると支援料算定

多剤投与は健康被害を引き起こす可能性が高くなります。

そのため、厚労省は薬剤師から提案して
内服薬の種類を持続的に減らしたケースを、
薬局の服用薬剤調整支援料の算定対象にしました。

薬局からの疑義照会がかかりつけ医のアドバンテージになる

疑義照会はかかりつけ医の診療にも
メリットが多いことがご理解いただけたかと思います。

疑義照会をきちんとする薬局はかかりつけ医の最後の砦です。

医師をはじめ、薬剤師や看護師など
同じ患者さんに関わる全員が一丸となって、
より安心安全な医療を提供することで

「選ばれ続けるかかりつけ医」を目指して
ゆけるとよいのではないでしょうか。

薬剤師 (M.H)

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