クリニックや病院のホームページに
広告を載せていない場合でも、
医療広告ガイドラインの広告規制の
対象になるのをご存じでしょうか?
どんな内容がNGで、違反したらどうなるのか
気になる方も多いことでしょう。
そこで今回は、
医療広告ガイドラインに関する疑問とその考え方を
解説します。
医療広告ガイドラインとは?
医療広告ガイドラインとは、
厚生労働省から出された医療広告に関する
方針のことです。
正式名称は
「医業若しくは歯科医業又は病院若しく
は診療所に関する広告等に関する指針」です。
医療は人の命や身体に関わるサービスです。
そのため、不適切な広告によって被害を受けた場合、
他の分野に比べてダメージが大きくなります。
また、医療は専門的な分野のため、
不適切な広告であったとしても気付かれにくく、
患者さんがそれを見抜くことは
難しいという問題があります。
そこで、患者さんが不適切な広告によって、
被害を受けないようにするための決まりが
「医療広告ガイドライン」です。
■医療広告ガイドラインでいう「広告」とは?
医療広告ガイドラインの「広告」に該当するのは、
下記の2点を満たすものになります。
①誘引性:患者の受診を誘引する意図がある
②特定性:医療を提供する者の指名、
病院名の特定が可能である
広告の具体的な内容としては、下記が挙げられます。
・チラシやパンフレット
・ポスター
・新聞紙、雑誌などの出版物
・ウェブサイト など
医療広告ガイドラインでは、
これらの広告が規制の対象となります。
しかし、院内で患者さんに渡すチラシや
パンフレット、院内掲示のポスター、
誘引性のない(クリニック側が依頼していない)
新聞や雑誌の記事などは広告に該当しないため、
規制の対象外になります。
■クリニックのホームページも対象になる?
2007年に制定された医療広告ガイドラインですが、
2018年の医療法改正に伴って内容が
大幅に改正されました。
この改正に伴い、クリニックや病院などの
医療機関のホームページも規制の対象に
含まれることになりました。
そのため、ホームページ内に不適切な内容があれば、
医療広告ガイドラインに違反していることになります。
■どんな内容が不適切?
ホームページには、写真はもちろん、
文章での案内や説明などが必須になります。
しかし、内容によっては医療広告ガイドラインの
違反となるケースがあります。
例えば、
「最高の医療を提供します」
「絶対に当院で治せます」
「この手術を受ければ痛みがなくなる」
「有名芸能人○○推薦!」
などの文章や、患者さんが回復して
元気になる姿の写真やイラストなどは、
治療効果を誤認させるおそれがあるため、
違反と判断される可能性が高いです。
また「今なら来院者に○○をプレゼント!」
「期間限定で○○(自費診療内容)が
○○円で受けられる」など、
患者さんの治療選択の意思を惑わせる表現も
違反となります。
もちろん、「この治療で100%の人が完治!」
など虚偽の内容を掲載することは
避ける必要があります。
医療広告ガイドラインの疑問点
医療広告ガイドラインについて、
気になる疑問点とその答えを見てみましょう。
■ビフォーアフターの掲載はNG?
改正前の医療広告ガイドラインでは、
治療の効果を示すためのビフォーアフターはNGでした。
これは、患者さんの状態によって
治療効果がそれぞれ異なるにも関わらず、
一律に治療効果があると
誤認させるおそれがあるためでした。
しかし、ガイドラインの改正によって、
ビフォーアフターの写真と共に、
治療内容、費用などに関する事項、
治療などの主なリスク、副作用などに関する事項の
詳細を説明した内容を加えることで
掲載OKとなっています。
説明内容について、
ネガティブな部分を小さく書いたり、
リンクで別ページに掲載したりと、
意図的にわかりにくくしているものはNGですので、
注意しましょう。
■体験談の掲載はNG?
クリニックのホームページに、
自院の治療内容や効果に関する体験談を
掲載することはNGです。
例えば、「○○先生の○○治療を受けたことで
元気になりました」「○○の治療について多くの
患者さんから喜びの言葉を頂戴しています」などは、
患者さんが治療効果を誤認する恐れがあるため、
ホームページには記載しないようにしましょう。
■違反した場合はどうなる?
クリニックのホームページに違反していると
疑われる内容があった場合、
行政(各都道府県、保健所設置市、特別区)より
調査が入ります。
そこで違反していると判断された場合、
広告の中止や広告内容の見直しなどの
行政指導が行われます。
もし指導に従わなかった場合は、
行政より中止や是正の命令が
入ることになるでしょう。
さらに従わなかった場合は刑事訴訟となり、
6ヶ月以上の懲役または30万円以下の罰金などが
適用される場合があります。
また、行政処分として、
クリニックの管理者変更や開設許可の取り消し、
閉鎖を命ぜられる可能性があります。
患者さんが誤認せず、適切な治療が受けられるホームページに
患者さんの適切な受診機会を喪失させたり、
不適切な医療を受けさせることは、
あってはならないことです。
このような状況が、知らない間におきるという事態に
ならないよう、情報収集をしていくことが重要です。
患者さんの立場に立ち、
患者ファーストの医療を提供できるクリニック
として、ホームページの内容を
ぜひ見直すことをおすすめします。
看護師 S.H.