2024年度診療報酬改定の背景と開業医に与える影響

2024年は6年に1度のトリプル改訂であり、

  • 医療保険の診療報酬
  • 介護保険の介護報酬
  • 障害福祉サービスの報酬

が同時に改定されます。

増加する高齢者への救急対応の拡充や、
オンライン診療の普及、
医師の働き方改革など、
現状の問題点を解消すべく、
さまざまな要因を勘案して診療報酬が改定されます。

医療機関にとって診療報酬改定の内容は
収益性に大きく影響を与えるため、
その内容や動向に注視すべきでしょう。

また、近年の物価高騰や賃上げムードで
さまざまなコストの増加も見込まれるため、
今回の診療報酬改定は開業医にとって
例年以上に注目を集めるところです。

そこで今回は、2024年度診療報酬改定の背景と
開業医に与える影響について解説します。

診療報酬とは

診療報酬とは、病院や診療所などの
医療機関が行った診療行為に対して
支払われる医療費のことです。

受け取った診療報酬から、人件費、
医薬品や医療材料の購入費、
医療機器・機材に係る費用、
施設維持・管理費などの諸費用を
差し引いた残りが医師の収入となります。

診療報酬の内訳は以下の2つに大別されます。

  • 本体:医療従事者の診察や手術などの人件費
  • 薬価:診療に伴い必要となる薬剤や治療材料などの価格

それぞれ数千以上に及ぶ項目が
点数化されており、1点10円で計算されます。

診療報酬の支払いの原資は約50%が保険料、
約40%が税収、約10%は患者さんの自己負担です。
仮に診療報酬が1%プラス改定になると
追加で4600億円以上の費用が必要です。

そのため、医療の進歩や日本の経済状況の
変化も踏まえ、通常は2年に1度、点数が見直されます。

診療報酬改定の流れ

具体的な診療報酬改定の流れは下記の通りです。

  1. 厚生労働大臣が全体の改定率を決定する
  2. 改定率を基に、中医協に意見を求める
  3. 厚生労働大臣から診療報酬改定の内容が発表される

中医協とは中央社会保険医療協議会の略で、
診療報酬を支払う健康保険組合や
受け取る側の医師、学者などの公益委員の
3者で構成されており、それぞれの立場から議論に参加します。

では、2024年度診療報酬改定では
どのような改定がなされたのでしょうか?

2024年度診療報酬改定の背景と開業医に与える影響

深刻化する少子高齢化による医療費高騰を
抑えるため、2016年度以降の診療報酬改定では
人件費に当たる本体を引き上げ、
その代わり薬価を引き下げることで、
全体としてマイナス改定としています。

前回(2022年)の改定では、
本体+0.43%、薬価-1.37%とし、
全体では-0.94%となりました。

薬価の引き下げを含むマイナス改定は
診療所の収益減に直結するため、
医療機関にとって注視すべき点です。

一方、世間の賃上げムードや物価高騰に
対応するため、日本医師会は
人件費に当たる本体部分の大幅引き上げを
要求していました。

「本体部分の引き上げは医療機関が潤うが、
国民の負担する保険料は増加する」として、
財務大臣の諮問機関「財政制度等審議会」は
本体部分の引き下げを提言していました。

財務省の示すデータによれば、
病床を持たない「無床診療所」の
経常利益率の平均が、2020年度の3.0%から
2022年度には8.8%にまで上昇しており、
利益剰余金が昨年度までの2年間で
平均1900万円増加したことを示しています。

以上のことから、財務省では、
仮に本体部分を引き下げても、
利益剰余金から医療従事者の賃上げも
十分対応可能としています。

賃上げに関わる改訂については、
クリニックの経営にも大きく影響するため、
今回の診療報酬改訂以降においても
動向を注視する必要があるかもしれません。

一方で、今回の診療報酬改定には
オンライン診療・医療DX・かかりつけ医など
今後のクリニック経営に大きな変化を
もたらす要因が多く盛り込まれました。
また、高血圧、脂質異常症、糖尿病が
特定疾患療養管理料から除外される内容も
今回の改訂より組み込まれました。

クリニック経営に良い意味でも悪い意味でも
大きな変革をもたらす可能性もあるため、
実際に改定が施行される2024年6月まで、
その動向を注視すべきでしょう。

医師 H.N.

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