導入は時代の流れ?今見直してみる「リフィル処方」

令和4年度の診療報酬改定では、症状が安定
している患者さんを対象に、一定期間内に
1つの処方箋を反復利用できる「リフィル処方箋」が導入されました。

医薬品の適切な使用推進による薬剤費
削減策の一環として導入された制度です。

かかりつけ医として改めて注目し、
適用可能な患者さんに試してみてはいかがでしょうか。

リフィル処方のメリットについて紹介します。

増加する長期処方、幅広い人にニーズが高いリフィル処方

厚生労働省の調査によると、処方箋に
おける、1剤当たりの投与日数は長期化しています。

令和2年では、処方の3分の1以上(34.7%)が長期処方(31日以上)です。
つまり、安定した患者さんへのdo処方が増加しているのです。

実際、薬だけもらいに受診する「お薬再診」
の患者さんは多いのではないでしょうか。

リフィル処方は、お薬再診を抑制できる制度です。

健康保険組合連合会が、令和4年に行った
一般住民3,000人の調査では、6割以上が
「リフィル処方箋を利用して通院回数を減らしたい」
と答えており、ニーズの高さが伺えます。

リフィル処方箋活用のハードルは低い

リフィル処方箋発行はシンプルで、通常の
処方箋の「リフィル可欄」にレ点を入れ、
リフィル回数を記載するだけです。

2016年に導入された分割処方
(医師が決めた日数分を分割して処方する)
とは異なり、「分割指示に係る処方箋(別紙)」などは不要です。

ただし、リフィル処方にも注意事項があります。

リフィルの制限回数は3回まで、投与量に
限度が定められている薬(新薬、劇薬、麻薬、向精神薬など)と湿布は対象外です。

リフィル処方を適用できる患者さん

定期診療している患者さんの中にも、
リフィル処方が適用できる方はいないでしょうか。

例えば、通常90日のdo処方をしている
患者さんを、30日のリフィル処方にした場合、
患者さんは30日ごとに3回のリフィルを利用
することで90日分の薬を受け取れます。

同じ90日ですが、患者さんにとっては
医療機関への受診回数が減るため、
通院や診療待機時間が節約でき、コスト負担も軽くなることになります。

医療機関にとっては「薬だけ再診」が減り、労働負担が軽減されます。

その分、在宅医療や専門分野への取り組みを
強化するなど、業務効率化を図れるでしょう。

一方、かかりつけ医としては、診療間隔が
長くなることで、病状の悪化や副作用も気になりますね。

ただ、目線を変えると、病状が変化しても
診察でき、医師の診療を受けなくても
定期的に薬剤師がチェックできるため、
疾病管理の質を担保できると考えられます。

リフィル処方の可能性

▪️諸外国では進み、日本では停滞するリフィル処方の普及

リフィル処方のさらなるメリットは医療費の抑制です。

これを主な目的として、米国、英国、
フランス、オーストラリア、カナダなどでは、
リフィル処方が実用化されています。
米国では1951年から導入され、対象患者の規制もありません。

しかし、日本におけるリフィル処方箋の普及は進んでいません。

令和4年の中医協の調査では、
「リフィル処方箋を発行したことがある」
と回答した割合は、診療所で39.9%、病院では18.1%に留まっています。

▪️ポジティブとネガティブな側面、日本でのリフィル処方の活用は?

2016年の保険薬局の調査では、
リフィル処方に置き換え可能な処方箋は
1億1,000万枚以上、その中でも必然性が
高いものは2,400万枚以上におよびました。

一方、リフィル処方による通院回数の減少は、
かかりつけ医の経営を考えると、必ずしも
ポジティブな要素だけではありません。

しかし、医療費削減は日本でも喫緊の
課題であり、今後政策が変わってくる可能性もあります。

さらに、リフィル処方箋の認知度が上がると、
患者さんからの要求も上がってくると予想されます。

今後は、患者さんニーズ、医療の質担保、
医療費削減、医療機関経営のバランスを
とって、リフィル処方を有効活用していくべきでしょう。

「選ばれ続けるかかりつけ医」としてリフィル処方を見直す

リフィル処方の導入は、時代の流れとも考えられます。

また、無駄なお薬再診をなくす努力は、
医療サービスの提供者として欠かせなくなるでしょう。

現状、リフィル処方の対象となる患者さんは少数だと思います。
「選ばれ続けるかかりつけ医」へのステップ
として、適用可能な患者さんから試してみてはいかがでしょうか。

薬剤師 M.H

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