診察し処方箋を発行する中で、疑義照会を
一度も受けたことのない医師は
少ないのではないでしょうか。
時には疑義照会を「面倒だ」と
感じることもあるかもしれません。
しかし、そう思われるとわかっていても、
薬剤師が医師に対して行なわなければ
ならないのが疑義照会です。
今回は、薬剤師が医師に疑義照会を
しなければならない理由と、照会を
減らすために医師側でできる工夫を
ご提案します。
もくじ 疑義照会が必要な理由 薬剤師の義務 医師の義務 疑義照会の後は必ず記録を残すことが重要 疑義照会の対象となるケースとは 疑義照会を減らすための工夫 疑義照会を減らすことで業務効率もアップ |
疑義照会が必要な理由
■薬剤師の義務
処方箋に関する法令はいくつかあります。
まず、薬剤師法 において
「薬剤師が患者から受け取った処方箋に
疑わしい点がある場合、内容を確認
しなければ調剤してはならない」
と定められています。
この確認行為を疑義照会といい、
法律に定められた薬剤師の義務です。
薬剤師法(処方せんによる調剤 ) 薬剤師法(処方せん中の疑義) |
■医師の義務
健康保険法 では
「薬剤師からの疑義照会に対して
医師が対応しなければならない」
と定められています。
つまり、疑義照会に対応することは
医師の義務でもあるのです。
健康保険法(処方箋の交付 ) 第23条の2 保険医は、その交付した処方箋に関し、保険薬剤師から疑義の照会があつた場合には、これに適切に対応しなければならない。 |
医師が何らかの意図で処方した薬でも、
処方箋には限られた情報しか記載
されていないため、薬剤師は
問い合わせをする以外に方法がありません。
そのため、意図した処方なのか
入力ミスなのか確認をしておくことが、
医師と薬剤師、そして患者さんにとって
大切になります。
疑義照会の後は必ず記録を残すことが重要
薬剤師は医師の指示(処方箋)の元、
調剤を行います。
疑義照会を行った場合、その照会内容を
薬剤師は処方箋へ、医師はカルテに記載する
ことが重要になります。
なぜなら、医師にとっては次回の処方の際の
処方ミスの予防に、
薬剤師にとっては医師に無断で処方内容を
変更して調剤を行なっていない
証拠となるからです。
疑義照会の対象となるケースとは
それでは、実際にどういったことが疑義照会の
対象となるのかをご紹介します。
処方箋を受け取ったあとに
薬剤師が確認する内容ともいえます。
- 薬剤名の間違い
- 用法用量の間違いや疑問
- 他院との重複処方
- 薬の相互作用が問題となる場合
- 副作用や薬剤アレルギーが疑われる場合
- 処方箋自体に記載漏れなどがある場合
- 妊娠・授乳中に使えない薬が処方されている場合
- 患者さんからの訴え
- 薬剤名の指定
※ジェネリック医薬品はどれも成分量は
同じなので、一般名で記載されていれば
自由に製薬会社を選ぶことができます。
しかし、漢方薬は製薬会社によって量が
異なるため、変更する場合は必ず
医師に確認が必要となります。
疑義照会を減らすための工夫
電子カルテを導入する病院・診療所が増えた
ことで、書き間違いによる処方調剤ミスは
減っています。
それ以外にも、処方箋を発行する前に
確認作業や工夫を行なうことで、
単純な疑義照会を減らすことが可能です。
目視での確認のほかに、電子カルテの
メーカーや種類によっては
次のような対策もできます。
- 前回の処方内容のコピー
- よく出すセット(風邪や胃腸炎に対していつも処方する薬など)はまとめて登録
- よく疑義照会される内容を画面に表示
- 1日最大用量を超える場合はアラーム設定
- 飲み合わせが悪い薬はアラーム設定
よく疑義照会される内容をまとめて見やすい
位置に置いておくことは、電子カルテでも
紙カルテでも可能です。
メモを壁に貼ったり、電子カルテであれば、
アラームが出るように設定したりすることも
できます。
処方箋発行前の目視での最終確認を
習慣化すると、よりチェックの精度が上がる
ことでしょう。
疑義照会を減らすことで業務効率もアップ
疑義照会は医師・薬剤師の義務であると
同時に、患者さんに対する不利益防止の
ためでもあります。
薬の処方ミスの防止だけでなく、
疑義照会によって生じる患者さんの
待ち時間を減らすことに繋がるでしょう。
また、疑義照会の回数が減れば、診察を
中断して電話やFAX対応をするという手間も
省けるため、業務効率もアップします。
ちょっとしたことではありますが、疑義照会の
回数が増えると手間も増えてしまいます。
ぜひ一工夫してみてはいかがでしょうか。
看護師 S.H.
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