クリニック開業×資金戦略!失敗しない事業計画と医療機器投資とは【税理士法人監修】

開業にあたり最初に直面する課題として、
「開業場所をどのように選ぶか」
「内装費用にどこまでこだわるか」
「どの程度、医療機器に投資すべきか」
といった点を考える上で、
具体的な事業計画の作成が重要です。

また近年、慢性疾患患者さんの増加や
高齢化が進む中で、検査の精度や即時性が
より重視されるようになってきました。
そのため、開業時に「院内検査機器」を
導入するケースも増加傾向にあります。

しかしながら、数百万円単位の
投資が必要となるため、
決して小さな負担ではありません。

そこで今回は、以下3つのテーマを
まとめてご紹介いたします。
• 事業計画書作成における実践的なポイント
• 金融機関が重視する視点
• 医療機器投資に関する考え方

もくじ

  1. 事業計画書において金融機関が重視するポイント
  2. 開業資金と資金調達の具体例
  3. 医療機器投資と集患の関係
  4. まとめ:開業成功のカギは「検査・立地・数字」

1.事業計画書において金融機関が重視するポイント

金融機関が融資を検討する上で、
事業計画が確かな根拠に基づいて
計画されているかは重要です。
ここでは、根拠付けで押さえておくべき
ポイントを3つに絞ってご紹介します。

① 診療圏調査と競合分析は「裏付け資料」になる

開業予定エリアにどの程度の需要があり、
また競合とどのように差別化できるかを
把握することは、クリニック開業において非常に重要です。
その際に活用できるツールの一つが「診療圏調査」です。

【診療圏調査とは】
診療圏調査とは、対象エリアにおける
人口構成、年齢別人口、競合医療機関の
立地・規模・患者数などのデータをもとに、
開業後にどの程度の患者数が見込まれるかを予測する分析です。
この調査は、外部の専門業者に委託して実施するのが一般的です。
主な委託先としては、
以下のような開業支援に関わる事業者があります。
• 医薬品卸会社
• 医療機器会社
• 医療系リース会社
• 医療に特化したホームページ制作会社
• 医療特化型税理士事務所
• 医療経営コンサルタント など

これらの事業者は、開業支援の一環として
診療圏調査を行っており、
場合によっては無料で提供されるケースもあります。
注意点は、診療圏調査の結果は
あくまで統計データをもとにした予測値です。
実際の患者数や経営状況は、
開業後の診療スタイル、地域との関係構築、
スタッフの対応、マーケティング戦略
などによって大きく左右されます。
したがって、調査結果を
「鵜呑み」にするのではなく、
複数の情報を参考にして総合的に判断することが大切です。

【診療圏調査で確認できる主なポイント】
• 徒歩圏・自転車圏などの人口構成と将来人口の推移
• 近隣の同業クリニックの数・診療内容・評判
• 商業施設、学校、駅からの距離・利便性
• 想定される1日あたりの患者数
• 診療単価

厚生労働省の「医療施設動態調査」や
市区町村の人口統計・ビジョンなどの資料は
自力での調査にも活用でき、客観的な資料として
説得力を高めてくれます。

【自力でできる診療圏調査の方法】
前述の通り、外部委託と並行して、
自力で現地調査や情報収集を行うことも非常に有効です。
以下のような方法でも、競合状況や地域ニーズを把握できます。
• Googleマップで競合クリニックの位置を確認
 → 地図上で診療科目や立地(駅近・駐車場の有無など)を視覚的に把握。
• 競合クリニックのホームページをチェック
 → 診療内容、診療時間、専門性(糖尿病専門外来など)などの差別化ポイントを分析。
• GoogleクチコミやSNSを調査
 → 患者さんの満足度や不満点、医院の雰囲気などが見える場合がある。

【競合分析のポイント】
• 競合クリニックの診療の特徴
• 導入されている医療機器
• 予約システムの有無
• 院長のキャリアや方針
• ネット上の評判など

先生ご自身がこれらを把握して
資料としてまとめる、
あるいは金融機関との面談時に
明確に回答できることが重要なポイントとなります。

★金融機関の視点
「本当に患者さんが集まる立地なのか?」
という点は、開業を検討するうえで
非常に重要な確認事項です。
診療圏調査は金融機関が融資判断を行う際の
重要な資料の1つとしても位置づけられています。
そのため、開業候補地の将来的な人口動向や
競合の状況をしっかりと把握し、
見込み患者数の多いエリアを
選定することが極めて重要です。

② 売上予測は「根拠のある数字」で構築する

売上予測は、金融機関が融資判断を行う際に重視する項目です。

以下のように、
患者数×診療単価×診療日数を基に積算し、
自費収入を加えて構成します。

【売上予測の一例(内科)】

項目内容
1日平均患者数30人
診療単価(保険点数ベース)5,000円
診療日数月25日
月間売上約375万円
自費月間売上約20万円
年間売上約4,740万円

患者数は、診療圏調査の結果を踏まえた数字とすることで、説得力が高まります。
また、予測以上の患者数が必要な場合には、
「どのような集患施策を行うのか」
「他院との差別化ポイントは何か」
を説明できるようにしておくことが大切です。

初年度は徐々に患者数が増え、
2年目以降に理想的な水準に達するような
現実的な計画が望まれます。

③ 費用は「現実的な数字」で見積もる

費用については、
現実に発生する可能性のある金額を
設定することが大切です。
主な費用項目は、以下のとおりです。
• 売上原価
• 人件費
• 賃借料
• 広告宣伝費
• 福利厚生費
• 水道光熱費
• 通信費
• 修繕費
• 保険料
• リース料
• その他の経費

さらに、先生ご自身やご家族の
生活費についても考慮する必要があります。

★金融機関の視点
経費の根拠が曖昧であると、
「過剰なコストではないか?」
「削減余地はないか?」
といった指摘を受ける可能性があります。

根拠となる資料や見積書を用意し、
説得力のある計画を立てることが求められます。

また最近では、
事業にどれだけ自己資金をいれるか、
ということ以外に
資産をどれだけもっているか、
ということを金融機関に確認される傾向にあります。

2.開業資金と資金調達の具体例

開業資金は、
診療科目や規模にもよりますが、
5,000万〜1億円程度が一般的です。
最近では物価の上昇により、
1億円を超えるケースも少なくありません。
その上で開業費用のみに集中し、
十分な運転資金の確保ができていないケースが見られます。

開業後、予想通りの患者数にはならず
立ち上がりに時間がかかることや
診療報酬の入金が
申請から2か月後になることも考慮し、
余裕をもった資金調達が重要です。

運転資金は、一般的には
毎月発生する費用の
おおよそ6か月程度を目安として、
計画をしておくということも1つの目安です。

【開業資金の例】
• 内装・設備:2,000万円〜3,000万円
• 医療機器:1,000万円〜2,000万円
• 広告・WEB・看板:200万円前後
• 物件取得・入居費用:500万円〜1,000万円
• 採用費:200万円前後
• 運転資金(6か月分程度):1000万円〜3,000万円

【主な調達手段】
• 自己資金(全体の1〜2割が目安)
• 親族からの借入
• 日本政策金融公庫・民間金融機関からの融資

★金融機関の視点
自己資金がゼロ、
または使途が曖昧な資金が多いと、
「計画性や経営に対する覚悟が不足している」
と評価される可能性があります。
資金の用途を明確にし、運転資金についても
余裕を持って準備しておくことが大切です。

3.医療機器投資と集患の関係

医療機器への投資をどこまで行うかは悩ましい問題です。
導入する機器が増えるほど、
初期投資や借入額が増加しますが、
そのことで集患力を高めた先生も多いです。
たとえば、開業時から
院内検査を導入することで、
即時に検査結果を提供できるため
診療のスピードや精度が上がり、
他院との差別化にもつながります。

院内検査に向いているクリニック

• 糖尿病や高脂血症など、生活習慣病管理が中心のクリニック
• 発熱外来や感染症対応に注力するクリニック(CRP、抗原検査など)
• HbA1c検査が多く見込まれるクリニック
• 他院との差別化を図りたい場合

ただし、患者数が少ない場合や、
外注検査で十分に対応できる場合には、
開業初期の導入は慎重に判断する必要があります。

院内検査機器導入の大きな2つのメリット

① 診療効率の向上と慢性疾患管理の強化
 即日結果により再診が減少すること、
 結果が分かるためすぐに治療開始できます。
 そのため、患者満足度が向上する可能性があります。

② 差別化戦略
 即時検査体制がブランディングになり、
 HPやSNSでのアピール材料となる可能性があります。

医療機器投資を抑える「事業承継開業」という選択肢

医療機器や内装への投資が多くなると、
融資審査が厳しくなる可能性があります。
そこで、既存のクリニックを引き継ぐ
「事業承継開業」も有効な選択肢です。

【事業承継開業のメリット】
• 機器・内装・スタッフが既に整っている
• 患者基盤や診療圏が確保されている
• 開業初期の赤字期間を短縮できる

高齢の医師が
後継者を探しているクリニックも多いため、
選択肢として検討する価値があります。

まとめ:開業成功のカギは「検査・立地・数字」

理想の医療を実現するには、
収益性・診療効率・差別化の
バランスを取った戦略的な開業が不可欠です。

医療機器投資は強力な武器である一方、
費用面ではリスクも伴います。
そのため、事業承継といった
柔軟な戦略も含め、
バランスのとれた計画を立てることが求められます。

【事業計画書作成におけるチェックポイント】
〇 地域ニーズに即したコンセプト設計
〇 診療圏調査と競合分析による客観的裏付け
〇 コスト抑制策としての事業承継の検討

執筆者

日本クレアス税理士法人
中川 義敬 税理士
 (執行役員、近畿税理士会所属)
<経歴>
2007年 税理士登録
2009年 日本クレアス税理士法人 入社
2019年 同 大阪本部本部長 就任
 東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等に従事。医院の新規開業支援、会計税務、医業承継・相続対策など、個人医院から大病院まで医療分野でのサポートに高い経験あり。

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