世界中に蔓延した新型コロナウイルス
によって、従来型の医療形態が見直され、
近年では国内でもオンライン診療が
急速に普及しつつあります。
「オンライン診療はメリットだけではなく
デメリットも大きいのでは?」
このような疑問を感じている開業医の
先生も少なくないのではないでしょうか?
そこで本書では、開業医における
オンライン診療の現状や、メリット・
デメリットなどについて詳しく解説していきます。
もくじ オンライン診療の普及 医療現場におけるオンライン診療の現状 オンライン診療のメリット・デメリット まとめ |
オンライン診療の普及
歴史を紐解けば、1990年代からインター
ネットを介した画像送信による遠隔医療は
行われており、1997年には僻地・離島への
遠隔医療も認められました。
2018年にはついにオンライン診療の
制度が診療報酬に組み込まれましたが、
2018年の半年間でのレセプト算定
100万件中、オンライン診療はわずか1件
の割合であり、当時は限定的な普及に留まっていました。
しかし、2019年に新型コロナウイルスが
パンデミックを引き起こしたことで、状況は一変します。
これまでの医療体制を抜本的に見直す
必要に迫られた結果、2020年4月10日に
「新型コロナウイルス感染症の拡大に
際しての電話や情報通信機器を用いた
診療等の時限的・特例的な取扱いについて」
という厚生労働省からの事務連絡が発令されました。
この発令によって、これまで定められて
いたオンライン診療における疾患制限は
撤廃され、初診からでも可能となりました。
医療現場におけるオンライン診療の現状
オンライン診療は
「情報通信機器を使用したリアルタイムでの診療」
と定義されていますが、実際の導入には
セキュリティーや医療安全の観点から
下記のような様々な注意点があります。
- 厚労省の定めた基準をクリアしたシステムを使用すること
- 患者からオンライン診療の説明書と同意書を得ること
- 場合によって対面診療に移行可能であること
- 患者側にも個人情報保護法の管理が必要であること
- 患者、医師双方、許可なき録画は不可であること
- 診療に従事する医師は厚労省の定める研修を受ける必要があること
- 医療機関はオンライン診療科の施設基準に関わる届け出を行うこと
では、実際に医療現場ではどのように
取り扱われているのでしょうか?
令和2年に厚生労働省が発表したデータ
によれば、利用者の多くは若年層であり、
特に0〜10歳は全体の約3割を占めます。
対象疾患は発熱、上気道炎、湿疹、
アレルギー性鼻炎などが多く、
各年齢層で同様の結果が得られています。
これらの結果からも分かる通り、
オンライン診療はなかなか病院を受診
しにくい子育て世代の支援や、新型コロナ
ウイルスのような感染症対策において重宝されているようです。
オンライン診療のメリット・デメリット
オンライン診療を実施するにあたり、
医療機関側にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
■ メリット
① 地域外の患者さんを獲得できる
通常の対面診察であれば、患者さんは
地理的に通いやすいクリニックを選び
がちですが、オンライン診療を実施して
いるクリニックでは地域外の患者さんの
獲得にも成功しています。
② 感染症に対する優位性
オンライン診療の導入によって、
新型コロナウイルスなどの感染症患者と
直接的な接触が避けられるため、
感染対策という点では対面診療よりも
優位に診療を行うことができます。
また、クリニックに通院する感染症以外
の患者さんの感染予防にもなり、
医師患者双方にメリットがあります。
■ デメリット
① 診察が限定的である
オンライン診療は非対面型の診療で
あるため、視診や問診は可能でも、
聴診や触診、検査、処置などを行うことができません。
そのため、オンライン診療の適応と
してはほぼ安定している状態、
あるいは急性疾患でも軽症であり、
画面上で診療が完結できる状態であることが必須条件となります。
② 保険点数が低い
オンライン診療で患者対応した場合、
施設基準を満たしている医療機関で
あれば、2023年2月現在で
初診料251点(対面診療の87%)、
再診料73点(対面診療と同一)となります。
つまり、正式に届け出を行なっても
対面診察より保険点数が低く、
日本の診療報酬制度でオンライン診療
が普及しにくい1つの原因となっています。
まとめ
今回の記事では、オンライン診療について解説しました。
過渡期であり未だに多くの課題を
抱えているのが現状ですが、
今後ニーズは拡大していくことが予想されます。
オンライン診療の導入を検討中の方は、
メリットとデメリットをよく考えた上で
判断することをおすすめします。
また、本記事がその一助となれば幸いです。
医師 H.N.
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