薬剤師との連携で吸入薬の効果を存分に引き出そう

現在、喘息やCOPDの治療は長期管理で、
薬物療法の基本は吸入薬です。

吸入薬は薬が直接気道に届くため、副作用
を抑えつつ、内服薬よりも少ない成分量で
効果を発揮します。

その反面、正しく吸入できないと本来の
効果を発揮できません。

薬のプロである薬剤師と連携し、
吸入薬を有効に活用する方法を紹介します。

吸入薬を長期に使っていても効果が出ない……原因は吸入不良か

吸入薬を長期にわたって処方しているのに、
期待する効果が出ない患者さんはいませんか?

そういう患者さんは、きちんと吸入できていない可能性があります。

松山赤十字病院の調査によると、吸入薬を
院外処方された患者さんの16%が
きちんと吸入できていませんでした。

吸入手技の不良は年齢とともに増加し、
70代では 21%、80代では 32%、
90代では全ての患者さんが手技不良でした。

参考:医薬連携における吸入手技不良リスクの予測
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌.2020年28巻3号.p425-426

薬剤師のスキル活用で吸入不良を減らす

薬剤を処方しても、吸入できていなければ
効果が出るはずはありません。

吸入手技の向上には、医療者の指導が
欠かせませんが、1回に必要な吸入指導
時間は最低10分、初回導入時には25分
必要だとされています。

忙しい外来の中、医師や看護師が患者さん
一人一人に吸入指導を行うことは難しい
のではないでしょうか。

さらに、高齢者は“できた気になっている”
傾向にありますが、実際にはできていないことが多々あります。

一度の説明では理解できていないことも
多いので、医療者は積極的にアプローチし、
繰り返し指導しなければなりません。

その対応策として、薬剤師と協力し、正しい使い方が
できているかどうかなどの確認を行って
もらうことで、患者さんの吸入指導を
補完する方法があります。

徳島文理大学の研究によると、院外薬局で
定期的に指導することで、患者さんの
理解度と吸入手技が向上しています。

その効果は初回の指導よりも2回、3回と回を重ねるごとに上がっていました。

参考:医療機関と連携した保険薬局における吸入実技指導が喘息患者の臨床効果に与える影響
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌.2020年29巻 1号 p.121

薬剤師のスキルで吸入アドヒアランスを向上させる

喘息もCOPDも治療の中心は長期管理である
ため、服薬アドヒアランス(処方どお
り服薬しているか)は、吸入手技の向上と共に欠かせません。

ところが、症状が改善したからと自己判断
で吸入回数を減らしてしまう患者さん、
逆に自己判断で過剰使用してしまう
患者さんも多いのが現実です。

吸入意義を理解していない患者さんも、
アドヒアランスを守れないリスクが高いでしょう。

上記の徳島文理大学の調査では、定期的に
服薬状態をチェックすることで、
吸入アドヒアランスも向上することが明らかになっています。

今後さらに重要になる薬局の吸入指導サポート

薬局でのサポートが有効であるため、
国内の多くの施設や地域で吸入指導連携が進み出しました。

保険薬局での吸入指導によって、喘息や
COPDの症状や呼吸機能改善など治療効果が
向上しているという報告も数多くあります。

製薬企業は次々に新しい吸入薬を開発し、
今後も診療現場に提供し続けるでしょう。

そのほとんどが作用機序の違う2剤以上を
組み合わせた配合薬であり、吸入機器も
高度に進化しています。

治療効果向上に、薬剤選択に、薬のプロ
である薬剤師との連携は今後
ますます重要になるでしょう。

薬剤師との連携プレーで吸入薬のメリットを最大限に引き出す

喘息やCOPDの治療の主体は長期管理で、
薬剤は吸入薬が第一選択です。

吸入薬の対象は小児から高齢者まで幅広く、
また個々の患者さんによって状況が違う
ため、一人ひとりに、きめ細かな指導を
続けていく必要があります。

しかし、かかりつけ医だけでこのような
指導を実行することは困難であることがほとんどです。

保険薬局と連携し、薬剤師の方々からも
指導を行っていただくことで、吸入薬の
本来の効果を発揮させ、よりよい治療の一助となれば幸いです。

薬剤師 (M.H)


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