一般的な事業を行う上では、自分の
耐えられるリスクの範囲内での
スモールスタートが基本です。
例えば、服を売りたい人にとっての
スモールスタートとは、まずはネット上で
出店してローリスクに顧客を増やし、
人気が出れば徐々に拡大し
店舗を構えるのが一般的です。
いきなり大きな借金を抱えて
一等地に店舗を構えることは経営上
リスクでしか有りません。
しかし、医業の場合スモールスタートが
難しい事業な上に、収益性のみならず
公益性や社会貢献性を強く求められる
側面があるため、一般的な事業とは
違った経営の難しさがあります。
また経営が安定した後も、高齢化や
コロナウイルスなどの外的要因による
医業への影響は計り知れず、
クリニック経営者は変わりゆく環境に
適応して収益を上げていく必要があります。
つまり、事前の準備やリサーチ、
経営していく上での戦略が
非常に重要になるのです。
もくじ 高齢化社会がクリニック経営に与える影響とは!? 2025年問題によるクリニック経営への影響は? クリニックの取り得る対策は? ①患者需要の見直し ②医業における利益を考える |
高齢化社会がクリニック経営に与える影響とは!?
日本の人口は2008年をピークに
年々減少傾向にあり、2021年は
前年比で51万人も減少しました。
その一方で65歳以上の高齢者の割合は
前年の28.4%から28.7%に増加し、
高齢化社会が確実に進行しています。
また、国民一人当たりの年間の医療費は
高齢なほど増加する傾向にあります。
実際に、高齢者を対象としない小児科の
1施設あたりの年間医療費は
2016年度から唯一伸び率が
連続してマイナスとなっています。
高齢であればあるほど健康に問題が
出やすく、病院に通院する頻度も多く
なるため、これは仕方がない結果だと言えます。
つまり高齢化はクリニックの収支に
大きく関わってくるのです。
では、逆に高齢者の多い一般内科に
とって高齢化は有利に働くのでしょうか?
2025年問題によるクリニック経営への影響は?
高齢化社会が進む日本では、
多くの高齢者の医療費を社会保険料で
補うには限界があるため、政府も
様々な対応策を打ち出しています。
多くの先生もご存知の通り、
2025年以降に
「単身世帯で年収200万円以上、
複数人世帯で年収合計320万円以上の
後期高齢者(75歳以上)」は、
医療費の自己負担割合が、現行の
1割から2割に引き上げられることになります。
また時を同じくして、第一次ベビーブーム
に生まれた、いわゆる「団塊の世代」の
全員が後期高齢者になる時期でもあります。
今回対象となる後期高齢者にとっては
医療費負担が単純に2倍になるため、
今まで気軽に通院していたにも関わらず
今後は通院を控える可能性が高まります。
それは同時に、高齢者の多い一般内科に
とっても収支を悪化させる可能性があるのです。
クリニックの取り得る対策は?
①患者需要の見直し
たとえ後期高齢者の医療費負担が
増加したとしても、健康上の問題が
あれば受診するしかないわけですから、
クリニック側は一人でも多くの
患者さんを受け入れられるように
努力するとよいでしょう。
具体的には、ご自身の開業地の
高齢者人口を改めて調査し、
近隣同業者の数からご自身の
クリニックの患者需要を
再チェックすることを勧めます。
患者層はどういった年代が多く、
どんな病気で受診しやすいのかを
把握すれば、そういった患者さんや
地域のニーズに根ざした医療を
提供できるようになり、
周囲との差別化も測れるかもしれません。
筆者の周りでも、当初予定していた
患者層とは異なる集客になっている
クリニックは多く、その患者層に
あったPRを行うほうが
経営判断としては正しいと感じます。
②医業における利益を考える
医業収益から薬代、診療材料費、
検査委託費などの原価を差し引いた
7-8割ほどが粗利となり、
そこから賃貸料、人件費、そのほかの
経費などを引いたものが経常利益となります。
固定費がかかる以上、黒字を上げる
ためには大前提として患者さんの
集客が必須ですが、その上で
無駄なコストを削減していく必要があります。
実際に業務の一部をAIやオンラインに
切り替ることでコスト削減し、
収益化に成功しているクリニックもあります。
初期費用はかかりますが、周囲との
差別化という意味でも有効な対策になりえます。
2025年以降、クリニック経営が
厳しくなることが予想される
今だからこそ、本記事によって改めて
経営を見直す良い機会になれば幸いです。
医師H.N.
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