クリニック経営を安定させるためには、
スタッフ一人一人がいきいきと働ける環境を
整えることが大切です。
賃金や労働時間、福利厚生などの労働条件に
スタッフが満足していると、モチベーションが上がり、
それぞれの能力が十分に発揮され、結果的に
質の高い医療サービスの提供につながります。
しかし、実際には労務管理に対して苦手意識
を持つ院長先生が多いといわれています。
今回は、
クリニックにおける労務管理のポイント
についてわかりやすくまとめます。
適切な労務管理がクリニック経営を安定させる
一般的に、
大きな企業や病院などでは労務管理を
専門とする部署が設置されています。
一方で、
クリニックでは院長先生が労務管理も
行わなくてはいけない場合がほとんどです。
院長先生は医療に関しては専門家であっても、
労働に関連する法律やマネジメントに関しては
詳しくないことの方が多いのではないでしょうか。
毎日の診療に加えて、
労務管理もしなくてはいけないのかと
負担に思う院長先生も多いかもしれません。
しかし、適切な労務管理はクリニック経営の安定に
直結します。
なぜかというと、
労働条件や環境にスタッフが満足していると
モチベーションが上がり、個人の能力を十分に
発揮でき、結果的に質の高い医療サービスを
提供できるようになるからです。
クリニックにおける労務管理のポイントとは
では、具体的にどのように労務管理を
行えばよいのでしょうか。
クリニックにおける労務管理は、
一般的な企業などに比べて特殊であることを
まず理解するようにしましょう。
クリニックでは、看護師、医師、検査技師、栄養士、
医療事務などさまざまな職種が混在します。
それぞれの職種に、
対する処遇や労働条件が異なるので、
管理が煩雑になることが多いです。
また、看護師などの勤務体制が
交代制になっている場合には、
労働時間の管理が難しくなる場合があります。
医療機関では、スタッフ同士で給与の話を
することも多いといわれており、
他人と比較して労働条件に不満をもつことや、
皆で一致団結して院長先生に
不満を訴える可能性もあります。
看護師をはじめとして、女性の多い職場なので、
妊娠や出産、育児などに対する理解、
柔軟な対応も必要です。
クリニックにおける労務管理のポイントは
一言でいうと「明示すること」です。
それぞれの職種に対する処遇や労働条件は、
雇用時に文書で明らかにして、
可能であれば重要な箇所だけでも口頭で確認し
理解を促すようにできるとよいでしょう。
労働時間の管理は、
出勤時と退勤時に打刻できる機械を導入すれば
勤務時間の把握に役立ちます。
不満が出やすい残業時間に対する
賃金や昇給の条件、賞与などについても、
雇用時に明示するようにしましょう。
一方で、スタッフ側から希望を「明示してもらうこと」
も重要です。
賃金よりも、育児と両立するために
定刻で帰れることを重要視する人や、
やりがいやキャリアアップの機会を
重要視する人もいます。
毎日の診療で忙しいとは思いますが、
定期的にスタッフと会話または
面談する機会を設けて、
労働環境に不満がないかどうか
確認するのも大切です。
労務管理に失敗した例から学べること
労務管理の失敗例を知ることは気持ちの
良いものではないかもしれませんが、
具体例を知るとどのような対策が必要か学べます。
失敗例の1つとして、
院長先生が1人のスタッフに怒鳴って、
「もう明日から来なくていい」と言ったところ、
スタッフは翌日から来なくなっただけでなく、
個人で加入していた労働組合から交渉を申し込まれ、
結果的にパワハラ不当解雇となり、
多額の解決金を支払うことになった事例があります。
他にも、院長先生が時間外勤務の管理を
怠っていたため、スタッフが辞めた後に
過去の残業代の不払い請求をされた
という事例もあります。
また、昇給や賞与の条件について
院長先生に尋ねたのに、明確な返答が得られず
希望を無くした新規のスタッフが
すぐに辞めてしまったという事例もあります。
最近では、看護師や医療事務などの
人材確保が難しいといわれています。
せっかく費用を使って採用したにも関わらず、
すぐに辞められてしまうと損失が大きいです。
このように失敗例を見てみると、
院長先生が
・昇給や賞与の条件も含めた労働条件をよく理解し、
・勤務時間の管理を怠らず、
・スタッフの気持ちに寄り添うこと
が大切だとわかります。
忙しいとは思いますが、
努力をすれば結果的に大きな損失をしないで
済むと自覚しておくとよいかもしれません。
信頼できる社会保険労務士を見つけよう
クリニックにおける労務管理を成功させるためには、
院長先生が労務管理に対する苦手意識をなくし、
それぞれの職種に対する労働条件を
きちんと把握しておくことは大切です。
しかし、毎日の診療も忙しい中で、全てを把握し、
頻繁に変更になる労働関係の法律に合わせて
必要があれば雇用条件などを
アップデートするのは難しい場合が多いです。
そのため、信頼できる社会保険労務士を
見つけておくのも労務管理を
成功させる1つの方法です。
社会保険労務士は、
労働と社会保険のエキスパートです。
社会保険労務士には、
労働に関することを相談できるだけでなく、
雇用条件に関する書類の作成や
労働に関する手続きの代行、
労働基準監督署への対応など
さまざまな仕事を依頼することができるので
院長先生の心強いパートナーになるはずです。
医師M.S.