近年、カスタマーハラスメント(カスハラ)は
大きな社会問題となっており、
厚生労働省でも対策マニュアルを整備するなど、
対応を強化しています。
医療機関でも例外ではなく、
患者さんによるカスタマーハラスメントは
医院運営を妨げるのみならず、
適切な医療の提供にも影響をしかねない問題です。
「モンスターペイシェント」とは、
スタッフや医療機関に対して
過度な要求や理不尽な態度など、
カスタマーハラスメントにあたる行為をとる患者さん、
もしくはその家族のことを指します。
クリニックにとって、
モンスターペイシェントの存在は
診療の妨げとなり、
医療現場でのストレス増大に
つながるかもしれません。
この記事では、クリニックが
モンスターペイシェントに遭遇した際に
どのように対応すべきか、
診察前、診察中、診察後のステージごとに
具体的な対策を解説します。
診察前にしておくべきモンスターペイシェント予防法
診察が始まる前に、
モンスターペイシェントとのトラブルを
未然に防ぐための準備を整えることが重要です。
ここでは、3つの予防法をご紹介します。
1.スタッフとの連携を追加
特に、受付スタッフは
最初に患者さんと接することが多く、
モンスターペイシェントの兆候を早めに察知できるでしょう。
院内スタッフが適切に対応できるよう、
応対マニュアルの作成やロールプレイ研修、
問題が発生した際の報告ルートを整備しておくことも効果的です。
2.患者さんとの事前コミュニケーション
診察前に、患者さんが何を期待しているのか
しっかりと把握することが重要です。
例えば、問診票の記入時や診察待ち中に、
受付スタッフや看護師が
症状や希望する治療について聞き取り、
医師に事前に伝えておくことで、
診察中~診察後の不満やトラブルを
軽減できるかもしれません。
3.院内暴力防止のためのポスター掲示
「暴言・暴力・セクハラ行為を行った方は
警察に通報することがあります」
と明記したポスターや、
防犯カメラの設置を示すポスターを
院内に掲示することで、
迷惑行為を予防する効果が期待できます。
無料で利用できるポスターが
Web上に掲載されているため、
印刷して活用することもできます。
診察中のモンスターペイシェント対応策
モンスターペイシェントが診察中に見せる
典型的な問題行動に対して、
冷静かつ適切に対応することが求められます。
典型的なモンスターペイシェントの行動は以下のとおりです。
- 医師の診断を否定し、インターネットなどで得た不確かな情報をもとに自己診断を主張する。
- 過剰な検査や処方を求める。
- 無理な要求を繰り返し、診察時間を不当に引き延ばす。
- 医師やスタッフに対して高圧的な態度をとり威圧する。
これらの対応策としては、
重要なポイントが以下の3つです。
1.冷静な態度を保つ
モンスターペイシェントに対して
感情的に反応することは避け、
冷静に対応することが重要です。
相手の言葉に耳を傾けつつ、
事実に基づいた説明を行い、
必要な診療内容を伝えましょう。
2.エビデンスに基づいた説明
モンスターペイシェントの
自己診断や無理な要求に対しては、
医学的なエビデンスを示しながら
丁寧に説明することが有効です。
例えば、
「この症状に対する標準的な治療法はこれです」
といった形で、根拠のある情報を提供し、
納得いただくことが重要です。
3.限界を設定する
患者さんが過剰な要求を繰り返す場合、
対応する限界を設定することも必要です。
例えば、診療範囲を超えた要求には
「これ以上の検査や治療は、
必要性がないため行えません」
と明確に伝えることが大切です。
さらに要求が続く場合には、
「業務への支障をきたすため、
業務妨害で警察に通報することになる」
と伝える方法もあります。
診察後に重要なフォローアップ
診察が終わった後も、
以下3つのフォローアップが欠かせません。
1.診療内容の記録
モンスターペイシェントと考えられる
患者さんの診察では、
診療内容や患者さんの要求、
スタッフや医師の対応、
対応時間や回数を
詳細に記録しておくことが重要です。
万が一トラブルが発生した際、
証拠として役立つだけでなく、
後の診察での参考にもなります。
2.患者さんへの説明の徹底
診療後、患者さんに
診察内容に合ったパンフレットや
説明用紙を提供することで、
患者さんの不満や混乱を軽減できます。
また、診察後の問い合わせ先や
アフターケアについても明確に伝え、
安心感が生まれることで、
トラブルを防止できます。
3.クレーム対応
モンスターペイシェントからの
クレームが発生した場合、
感情的にならず、冷静に対応することが求められます。
患者さんの意見をしっかりと聞いた上で、
適切な対応策を示し、必要に応じて
専門家(弁護士やコンサルタント)に
相談することも検討しましょう。
関連コンテンツ (会員限定)
✓クリニックにおけるクレーム対応マニュアル(PDF)
https://arkrayclinicsupport.com/content-page/download/complaintman/
✓クレーム対応マニュアル テンプレート(PPT)
https://arkrayclinicsupport.com/content-page/download/complainttemp/
✓クレーム報告書(Word)
https://arkrayclinicsupport.com/content-page/download/complaintrep/
✓クレーム報告書管理表(Excel)
https://arkrayclinicsupport.com/content-page/download/complainttable/
モンスターペイシェント対応は診察前から後まで続く
モンスターペイシェントへの適切な対応は、
医師が診療をスムーズに進め、
患者さんとのトラブルを防ぐために
欠かせない要素です。
診察前の準備、
診察中の冷静な対応、
診察後のフォローアップ、
この3つを意識することで、
モンスターペイシェントによる影響を
最小限に抑えることができます。
モンスターペイシェントとのトラブルを
未然に防ぐために、改めて、
院内スタッフとの連携の強化について
検討してみてはいかがでしょうか。
看護師 S.H