冬の院内感染対策|換気・湿度・温度の管理を

冬はインフルエンザなど、
感染源となり得る患者さんの
来院者数が増加します。

また、院内の室温を保つために
換気が不十分となり、
院内感染のリスクも高まる季節です。

本記事では、
冬の院内感染を防ぐために重要とされる、
換気や湿度・温度管理について解説します。

院内の温度・湿度管理を再確認

感染リスクを下げるために
定期的な換気を行っているクリニックも多いでしょう。
しかし、冷え込みが増す冬は、
換気中の院内の温度管理も重要です。

厚生労働省は、換気を行っている場合でも
室温は18℃以上を保つよう推奨しています。
また、湿度の維持目安は、40%以上です。

特に冬は、大気の乾燥により
ウイルスが大気中に長時間浮遊し、
感染リスクも上昇します。
加湿器を使用し、湿度の管理を適切に行いましょう。

参照元:厚生労働省「冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法」

飛沫感染やエアロゾル・空気感染のリスクを下げる換気方法

換気状態が悪いと、ウイルスを含む飛沫や
エアロゾル(空中を浮遊する粒子)が
空中に滞り、院内感染のリスクが上昇します。

院内の換気状態を確認し、
冬でも換気を効率的に実施する方法をご紹介します。

■院内の換気状態をモニタリング

厚生労働省は、良好な換気の目安として
1時間に2回以上の換気を基本とし、
二酸化炭素濃度を1000ppm以下に維持することを推奨しています。

そのため、二酸化炭素濃度が
1000ppmを超えている場合は、
換気が不足している可能性があります。

また、室内の二酸化炭素濃度の測定には
専用の測定器が必要です。
厚生労働省のガイドラインでは、
NDIR(非分散型赤外線)方式の
二酸化炭素濃度測定器が推奨されています。

専用の測定器を用いて
二酸化炭素濃度をモニタリングすることで、
換気をするタイミングや必要性を把握でき、
より効率的に換気を行えるでしょう。

二酸化炭素濃度測定器は、
約5000円から20000円で購入可能です。
オンラインショップや家電量販店、
専門の医療機器販売店などで手軽に購入することができます。

参照元:日本環境感染学会「医療機関における換気の評価と改善」
    厚生労働省「感染拡大防止のための効果的な換気について」

■窓の開閉が可能なクリニックの換気方法

院内に窓がある場合は、
室温18℃以上、湿度40%以上を
維持できる範囲内で換気しましょう。

冬の窓開け換気による室温低下を防ぐため、
3つのポイントをご紹介します。

➀一方向の窓を常時開けて連続的に換気する
②人がいない部屋の窓を開け、
 廊下などを経由して少し暖まった空気を
 人のいる部屋に取り入れる(二段階換気)
③開けている窓の近くに暖房器具を設置する
 ※カーテンや書類の接触による火災に注意が必要

参照元:厚生労働省「冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法」

■空気清浄機を用いた換気方法

院内に窓がない場合や、
窓の開閉で18℃以上の室温が保てない場合は
空気清浄機を活用すると良いでしょう。

HEPA(高性能微粒子)フィルター付きの
空気清浄機は、ウイルスを含むエアロゾルを
効果的に除去することが研究で明らかになっています。

空気清浄機を効果的に使用する3つのポイントをご紹介します。

➀HEPAフィルターによるろ過式で、
 風量が5 m³/min程度以上の空気清浄機を使用する
②人がいる場所から6畳程度の範囲内に設置する
③空気のよどみを発生させないように、
 外気を取り入れる向きと
 空気清浄機の風向きを一致させる

参照元:厚生労働省「冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法」
    国立国際医療研究センター研究所「HEPAフィルターによるエアロゾル中の感染性新型コロナウイルスの除去効果

院内感染予防業務のマニュアル化

院内感染対策を確実に行うためには、
実施手順をマニュアルに落とし込み、
実施の有無を可視化することが大切です。

すでに用意している院内感染対策マニュアルがあれば
換気に関する条項を改めて見直したり、
必要に応じて手順を追加したりしましょう。

院内の換気状態や温度・湿度の確認は、
いつ・誰が行うか、が分かりやすいよう、
チェックリストなどを作成し
スタッフ間で共有すると良いかもしれません。

また、加湿器や空気清浄機の管理も重要です。

加湿器の清掃不足により、
老人福祉施設でレジオネラ症が
集団発生した事例もあるため、注意が必要です。

参照元:厚生労働省「加湿器を原因とした老人福祉施設でのレジオネラ症集団発生事例」

空気清浄機も、定期的な清掃やメンテナンスをしなければ効果が減退します。
例えば、空気を清浄するための稼働時間が
以前より長くなったと感じた場合、
フィルターの交換時期を超えて使用している恐れがあります。

院内感染の予防のために
加湿器や空気清浄機を導入するだけでなく、
清掃やメンテナンスも
院内感染予防業務のひとつとして
マニュアルの中に落とし込み、
必ず実施することが重要です。

参照元:一般社団法人 日本電気工業会「空気清浄機 Q&A(よくある質問)

冬の院内感染対策が患者満足度の向上につながる

ウイルスが蔓延しやすい冬は、
温度や湿度を踏まえて換気による
院内感染対策が非常に重要です。

クリニックの責任者として、
適切な換気対応を行うと共に、
対応を確実に実施できているか
確認できる体制も整えると良いでしょう。

また、インフルエンザの流行が拡大する冬は、
院内感染を恐れて通院を不安に思う患者さんも少なくありません。

院内で独自に取り組んでいる感染対策は、
ホームページや院内ポスターで積極的に患者さんに訴求しましょう。

感染対策の適切な実施は、
院内感染を防ぐだけでなく、
患者さんの満足度向上にも繋がるはずです。

看護師 E.O

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