総務省統計局が発表したデータによれば、
都道府県別の人口は東京都以外の
道府県で減少しており、うち38道府県では
前年に比べて人口減少率が拡大しています。
参照元:総務省統計局「人口推計(2023年(令和5年)10月1日現在)結果の要約」
クリニックの立地は経営に
大きな影響を与える要素のひとつであり、
今後も日本全体で人口減少が
見込まれていることを考えると
「地方で開業するのは不安だ」
と感じる人もいるでしょう。
参照元:内閣府「第1章 第1節 1(2)将来推計人口でみる50年後の日本」
この記事では、
地方で開業することのメリットや、
デメリットを克服するための方法についてご紹介します。
地方でクリニックを開業するメリット4選
ここでは、内閣府の定義に基づき、
東京圏(東京都・埼玉県・神奈川県・千葉県)
以外の道府県を「地方」と考えます。
地方で開業する主なメリットは、以下の4つです。
1.経営にかかるコストを抑えやすい
地方では、東京圏に比べて
土地代やテナント代、人件費などが
比較的安く抑えられます。
都道府県別の最低賃金を比較してみると、
最も高い東京では1,113円、
最も低い岩手県では893円であり、
220円もの差があります。
参照元:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
開業にかかる初期費用や、
ランニングコストを抑えられるのは大きな魅力でしょう。
2.競合が少なく収益を上げやすい
東京圏で条件の良い場所を探そうとすると、
すでに複数のクリニックが開業しており、
新規参入が難しいエリアもあります。
地方であれば、競合するクリニックが少なく、
新規開業に適したエリアを見つけやすいでしょう。
3.地域に根ざした医療提供ができる
とくに医療機関が少ない地域では、
身近な存在であるかかりつけ医が
頼りにされやすく、患者さんやそのご家族と
長い期間付き合っていくことになります。
「患者さんにじっくり向き合う時間が欲しい」
「家族全員の健康を守れるかかりつけ医になりたい」
といった思いのある人は、
地方での開業が向いているかもしれません。
4.クリニック承継後も安定した経営が見込める
近年、少子高齢化などの影響を受けて、
第三者承継やM&Aを選択するクリニックが増加しています。
参照元:日本医師会総合政策研究機構「日本医師会 医業承継実態調査:医療機関経営者向け調査」
「土地勘のない場所で新規開業する」
「集患やスタッフの確保に不安がある」
といった人は、承継開業するのも一つの方法です。
近隣に競合するクリニックが少なければ、
承継後も患者さんが継続して
来院する可能性が高く、新規開業よりも
経営を安定させやすいでしょう。
地方開業のデメリットを克服する方法
地方での開業にはデメリットもあるため、
長期的な視点で対応策を考えておきましょう。
大幅な人口減少が見込まれる地域では、
将来的に患者数が頭打ちになったり、
スタッフの確保が難しくなったりするかもしれません。
近隣の地域からもアクセスしやすいよう、
駅近や主要道路沿いといった、
立地の良い場所を選ぶ必要があります。
また、訪問診療やオンライン診療、
人間ドックなど、新たな事業を開拓していくのも良いでしょう。
国や地方自治体などの助成制度を活用すると、
開業や新規事業にかかるコストを抑えられるかもしれません。
開業医が利用できる可能性がある制度としては、以下のものがあります。
- 地方自治体による医療機関開業支援等補助金
参照元:広島県府中市 府中市内で開業を考えている人へ - 各都道府県による創業者向けの補助金や給付金
参照元:Net21「創業者向け補助金・給付金(都道府県別)」 - 事業再編や事業統合のために経営資源を引き継ぐ中小事業者等が申請できる「事業承継・引き継ぎ補助金」
参照元:事業承継・引き継ぎ補助金の概要
受給要件や申請方法は、各助成制度によって異なります。
また、申請してもすぐに受給が
開始するわけではないため、
時間に余裕を持って準備を進めましょう。
メリット・デメリットを把握して開業エリアを選択
地方でのクリニック開業は、
コストを抑えやすいなどのメリットがある一方、
将来的に患者さんやスタッフの確保が難しくなる可能性があります。
アクセスしやすい立地にこだわったり、
通常診療以外の事業に着手したりといった、
経営の安定化を図る工夫が必要です。
まずは「なぜ開業したいのか」
「どんなクリニックを目指したいのか」
といったことを明確にしたうえで、
地方での開業が自分に合っているかどうか、
検討してみてはいかがでしょうか。
看護師K.Y