プレパレーションとは、子どもに対する
病気や治療の説明のことです。
1989 年に国連で採択された子どもの
権利条約により、医療においても
子どもを尊重しようとする考えが高まりました。
2000年頃から日本でも研究が盛んになり、
現在は小児病棟などで行われています。
プレパレーション 外来での現状は?
2010年のある研究では、
7歳以上の子どもに病気の説明を
「する」と答えた施設が約70%。
それに対し、0歳児は6%、
1~3歳が16%、4歳~6歳が43%。
幼い子どもに対しては
説明をしない傾向にあるという結果ですね。
- 言葉の意味が通じない子どもには
意味がないのでは? - 診察室に入った時から大泣きで、
とにかく早く診察を済ませることが優先。
このような理由が考えられます。
体調の悪い子どもの負担を最小限にするためにも、
診察は素早く行いたいですよね。
時間が勝負での外来で、
プレパレーションを行うのは
とても難しいのが現状です。
外来でもできるプレパレーション
しかし子どもへの説明をしなくてよい…
ということではありません。
知らない人に囲まれて、強く押さえつけられ、
嫌なことや痛いことをされる…
自分のこととして想像すると、
かなりの恐怖ではありませんか?
子どもが、先を見通せるよう説明するのは
とても重要なことです。
そこで、提案するのが予防接種の活用です。
子どもの体調が良く、診察内容が
決まっているため導入しやすいからです。
以下に、事例を挙げてみます。
①ホームページやパンフレットで、保護者向けに受診前の説明を掲載する
子どもへの具体的な声かけ方法など、
保護者がすぐにできるような内容にすると
よいでしょう。
②待合室に、診察の流れ・予防接種の方法を掲示する
実際の映像やアニメーションも効果的です。
③注射器や人形などを置き、子どもや保護者が触れられるようにする
可能であれば、看護師が子どもに説明をすると
よいでしょう。
④診察室では子どもの目を見て挨拶
「こんにちは。〇〇ちゃん。注射頑張ろうね。
先生も頑張るよ。」と明るく声をかけることで
恐怖心を和らげることができるかもしれません。
⑤予防接種が終わったら子どもの頑張りを称える
「〇〇ちゃん。おつかれさま!
すごく頑張ったね。これで体が元気になるよ。」
「〇〇ちゃんの協力で、すごく上手くいったよ。
先生助かった!ありがとう」と
お礼を言うのも効果的です。
また、多くの病院で配っているご褒美シールは、
予防接種の時だけもらえるので
こどもにとってはかなりうれしいようです。
プレパレーションは保護者の協力が不可欠
子どもが予防接種をすることを知らずに受診し、
診察室で大暴れ…というケースは
小児科あるあるではないでしょうか?
保護者の気持ちも分からなくはありません。
「病院」「注射」と言うだけで子どもがぐずって
手が付けられなくなる。
病院までは何とかご機嫌に到着したい…。
しかし、これでは予防接種のたびに
子どもだけではなく、保護者も
医療従事者も大変な思いをすることになります。
筆者は2人の子どもの母ですが、
2人とも0歳の頃から受診前の説明をしています。
予防接種の予約を取った日に
「〇〇日に注射だよ」と一言伝えます。
前日に「明日は注射だよ。練習しようか?」
と口を開けてのどを見たり、
注射のまねをしたりします。
「注射をすると病気に強くなるよ。
元気に過ごすために大切なことだよ」と
予防接種の意味も説明します。
当日には
「今日は注射だよ。〇時に行くからね」
と声かけをします。
病院に到着したら
「これから注射だよ。緊張する?
少し痛いけど、イヤイヤって動いたらギューッと
おさえてもっと辛くなるよ。
先生はとっても上手だから大丈夫。
静かに座っていたらすぐに終わるよ。
ママ、応援しているからね」
と待っています。
現在子どもは8歳と4歳で、
性別も性格も異なりますが
予防接種で大暴れしたことは
1度もありません。
あくまで一例ではありますが、事前の声掛けが
功を奏した例としてご参考いただければと
思います。
子どもが予防接種を受け入れるには、
保護者の協力が必要不可欠です。
面倒でも丁寧に説明することが、
子どもにとっても、保護者にとっても
効果的であることを理解してもらいましょう。
クリニックのイベントとして
保護者を招いて講習会をしたり、
看護師に気軽に相談できるようにしたりすると、
より協力を得やすくなるのでは
ないでしょうか。
「ちゃんと説明してくれる」が安心につながる
その時は完全に理解することができなくても、
「説明してくれた」という記憶は
子どもの中に残ります。
クリニックは楽しいところではないけれど、
怖くないように助けてくれる。
自分を大切にしてくれる所だと
分かれば少しは安心できますよね。
病気や怪我での受診は、
子どもも保護者も事前の準備は
なかなかできません。
体調のせいで機嫌が悪い子どもは、
しっかりと説明したからといって
納得してくれるとは限りません。
「〇〇するよ」と声をかける程度で、
押さえつけてでも迅速に検査や治療を
行う方がよいこともあるでしょう。
だからこそ、元気な時にしっかりと
関わることが重要なのです。
また病院嫌いの子どもは大人になっても
あまり変わりません。
小児科でのプレパレーションは
その子の将来の健康を守ることにもつながります。
まとめ
外来でのプレパレーションはとても大変です。
限られた時間の中、子どもに合った説明を
するのは至難の業ですよね。
まずは予防接種からはじめてはいかがでしょうか。
ホームページなどを活用して保護者の
協力を得ながら、子どもが元気なときに
しっかりと説明することで、
病院嫌いの子どもを減らすことが
できるかもしれません。
看護師M.K.
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