
厚生労働省のガイドラインによれば、
オンライン診療とは「遠隔医療のうち、
医師-患者間において、
情報通信機器を通して、
患者の診察及び診断を行い
診断結果の伝達や処方等の診療行為を、
リアルタイムにより行う行為」
と定義されています。
新型コロナウイルス感染症の
流行をきっかけに、
普及率が高まったオンライン診療ですが、
情報通信技術の発展に伴って、
今後さらなる普及が見込まれています。
そこで本記事では、
オンライン診療を実施している
クリニックの事例を通して、
導入の効果や課題についてご紹介します。
クリニックがオンライン診療を導入する効果
へき地などでの医師不足解消や、
医師の働き方改革の一環としても
注目されているオンライン診療ですが、
導入しているクリニックでは
どのような効果が得られているのでしょうか。
ここでは3つの事例をもとに、
オンライン診療を導入するメリットについてご紹介します。
参照元:厚生労働省「オンライン診療その他の遠隔医療に関する事例集 令和5年8月」PDF
厚生労働省「オンライン診療その他の遠隔医療に関する事例集 令和6年4月」PDF
1、都内にある内科クリニック
都心部の地下鉄駅近くにあり、
通勤途中の会社員が多く来院する診療所です。
「対面診療は時間的な制約が大きい」
という患者さんの声を受けて、
オンライン診療を導入しました。
現在は、高血圧症や脂質異常症といった、
慢性疾患の患者さんの定期処方に
オンライン診療を活用しています。
<メリット>
・転勤などで遠方に転居した、かかりつけ患者さんにも対応できる
・患者さんが集中する時間帯を分散させられるため、対面診療の混雑を回避できる
2、小児難病にも対応する小児科クリニック
小児の難病にも対応できる
数少ないクリニックであるため、
遠方からも患者さんが通院してきます。
通院にかかる時間や交通費など、
患者さんの負担を軽減するために
オンライン診療を導入しました。
症状が安定している患者さんや、
飲み続けている薬の定期処方などは
オンライン診療で対応しています。
患者さんが他の医療機関へ
入院している場合には、入院先の医師が
同席してオンライン診療を実施することもあります。
<メリット>
・通院による、患者さんや家族の負担が減る
・診療時間の枠を決めることで効率的に診察できる
・患者さんがリラックスした状態で診察に臨みやすい
・診察室では見られない患者さんの様子がわかるため、多くの医療情報を得ることができる
3、15名の医師が勤務する内科クリニック
新型コロナウイルス感染症の
流行をきっかけにオンライン診療を導入したクリニックです。
常勤と非常勤を合わせて
15名の医師が勤務しており、
オンライン診療の担当医を設定しています。
発熱外来のほか、便秘や花粉症などで
「市販薬を服用するかどうか悩む」
といった軽度の症状の患者さんに対して
オンライン診療を実施することが多い状況です。
新しい医師が入職した際などには、
オンライン診療の理解促進のため、
事例共有する場を設けるようにしています。
<メリット>
・診療時間枠が決まっているため、医師の残業を減らすのに役立っている
・喘息患者さんのペットの飼い方を観察できるなど、日常生活の様子を知ることができる
4、その他の効果
ご紹介した3つの事例以外に、
以下のメリットを感じているクリニックもあります。
・心理的な負担があって診療を避けていた患者さんが受診できるようになった
・遠方に居住する患者さんにもセカンドオピニオンを提供できるようになった
かかりつけ患者さんの症状や
クリニックの診療科などの特長によって、
オンライン診療の導入メリットは様々です。
自院に合った運用を検討してみてはいかがでしょうか。
オンライン診療導入の5つの課題と解決策
クリニックにおけるオンライン診療には、
多くのメリットがありますが、
電話や情報通信機器を使用した診療が
できる医療機関は全体の16%程度であり、
導入には課題があるのも現状です。
参照元:厚生労働省「令和5年1月~3月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」PDF
オンライン診療の導入で考えられる課題と
その解決策についてご紹介します。
参照元:厚生労働省「オンライン診療その他の遠隔医療に関する事例集 令和5年8月」PDF
厚生労働省「オンライン診療その他の遠隔医療に関する事例集 令和6年4月」PDF
1、通信トラブルが起こり、診療に支障をきたすおそれがある
院内の通信環境を整えるのはもちろん、
診察前に患者さんと通信状況の確認を
済ませておくなどの事前準備が必要です。
2、診察時間になっても患者さんからの接続がない
「診察開始後10分経っても接続がない場合はキャンセルとする」
など、診察時間に関するルールを
決めておくと良いでしょう。
「コール機能」など、
患者さんを呼び出す機能がついた、
オンライン診療システムを使うのも1つの方法です。
3、対面診療よりも診療報酬が少ない
オンライン診療は、対面診療と比較して、
初診料や特定疾患療養管理料などの
診療報酬が低く設定されています。
オンライン診療で診察する患者さんの数を
増やせるよう、診療時間や診療環境を
調整する必要があるかもしれません。
4、対面診療が望ましい場合でもオンライン診療を希望されることがある
オンライン診療で対応できる範囲を
あらかじめ明確化し、
患者さんにしっかりと周知しておくことが大切です。
オンライン診療では処方できない薬を
希望する患者さんがいる場合には、
厚生労働省のガイドラインを示すなどして
理解を得る必要があるかもしれません。
5、対面診療に比べてコミュニケーションの取り方に配慮する必要がある
パソコンの操作に気を取られて、
目線がカメラから外れたり
表情が険しくなったりすると、
患者さんに不信感を与える可能性があります。
背景や周囲の音、
照明の明るさなどにも配慮して、
患者さんが話しやすい環境を整えましょう。
時代の変化に対応できるクリニックへ
オンライン診療の導入には
いくつかの課題があるものの、
医師と患者さん双方の負担を軽減させる効果が期待できます。
まずは、厚生労働省のガイドラインや
日本医師会のホームページを確認し、
どのようにオンライン診療を活用できるか
検討してみてはいかがでしょうか。
参照元:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」PDF
日本医師会「オンライン診療について」
看護師 K.Y