クリニック運営における士業のベストプラクティス

クリニック経営には、医療に直接関わる
問題以外にも多種多様な問題が立ちはだかります。
問題の種類によっては専門家の手を
借りなくてはいけないことも少なくありません。

ところが、法的問題は弁護士、
労務関係の問題は社会保険労務士、など、
なんとなくのイメージで依頼しているかもしれません。

わかりにくい士業の業務範囲を理解し、
適切な士業に仕事を依頼することで、
問題の速やかな解決はもちろんのこと、
解決にかかるコストを削減することが可能です。

今回は、主な士業とその業務範囲について
簡単に解説し、依頼する場合の注意点についてご紹介します。

日本における主な士業とその職務範囲

日本における主な士業には、
弁護士、税理士、社会保険労務士、
司法書士、行政書士などがあります。

今回はこの5つの士業について簡単にまとめました。

弁護士

弁護士は、法律に関する専門的な知識と
スキルを持つプロフェッショナルです。
彼らはクライアントの法的問題に対して
アドバイスを提供し、訴訟・紛争解決、
契約書の作成・チェック、法的な手続きなどを行います。

弁護士は広い範囲の法的事項で活動でき、
クリニックで問題となる民法や労働法を始め、
多様な分野でのサービスを提供しています。

弁護士は個々に専門性が高いため、
専門以外の業務には精通していないことがあります。
クリニックの顧問弁護士を選ぶ際には、
医療業界に精通した弁護士を選ぶと
質の高いサービスを受けることができます。

ただし弁護士は、訴訟行為も含めた
幅広い業務が可能であるため、
依頼コストが高額となりがちです。
また、面倒だからと全て弁護士に任せると、
高額なコストとともに的外れなアドバイスを
されることがありますのでお気をつけください。

税理士

クリニックに限らず、ビジネスにおいては
税金の正確な計算と節税対策が非常に重要です。
そこで税理士の専門的なアドバイスが求められます。

税理士は、税務に関する専門的な知識と
技術を持つ専門職です。
主な業務内容は、企業や個人が正確かつ
効率的に税金を納付できるように、
税務申告、税務相談、税務監査の対応、
税務計画などを行うことです。

ただしすべての税理士が医療業界に精通しているわけではありません。
クリニック経営に特化した税理士を選ぶことが望ましいです。

社会保険労務士

社会保険労務士は、クリニック経営において
労務管理や社会保険手続きを
スムーズに行う上で非常に役立つ専門家です。

そのため、労働関係の法律(労働法、
労働基準法など)や社会保険(健康保険、
厚生年金保険など)に関する専門的な
知識と技術を持っています。

一般的には、企業や団体の人事労務に
関する相談を受け、労働契約書の作成、
労働条件の設定、給与計算、社会保険の
手続きなどをサポートします。

注意点としては、社会保険労務士は
基本的には相手方と交渉をしたり、
訴訟行為をする権限を持っていない点が
挙げられます。
(特定社会保険労務士による裁判甲斐紛争手続きを除く)

したがってトラブルの相手方との
交渉代理が必要な時点で、弁護士の介入を要します。
クリニックに顧問弁護士がいない場合は
社会保険労務士側が弁護士と連携していると、
話がスムーズに進むかもしれません。

司法書士

司法書士は、法的文書を作成し、
様々な手続きを法的に正確に行う専門家です。

主に不動産登記、商業登記、債権回収、
成年後見などが対象範囲となっています。
司法書士は、これらの手続きをスムーズかつ
適切に進めるために必要な法的知識と
実務の技術を持っています。

司法書士は、業務領域が非常に限られるため、
労務問題や税務、一般的な法律相談には
対応できないことに注意が必要です。

行政書士

クリニック設立時に行政書士のお世話になった方は多いと思います。
行政書士は、行政手続きに関する
専門的なサービスを提供する日本の士業の一つです。

具体的には、行政に対する申請や
許認可の手続き、各種書類の作成などを行います。
事業者が遵守すべき法律や規制が多い中、
行政書士はそのような手続きをスムーズに
行うためのアドバイスやサービスを提供する専門家です。

ただし、行政書士は、税務や一般的な法的問題
(例:労働問題、訴訟など)には専門性がありません。
そのような問題が発生した場合には、
関連する士業に相談することが適切です。

まとめ

以上、日本における主な士業と
その業務範囲について簡単に解説いたしました。

適切な専門家を選ぶことは、
トラブルの素早い解決とコスト削減につながります。
ケースによっては複数の士業が連携して
対応する場合もあります。

相談を検討する際は、その専門性や経験、
士業同士の横のつながりについて確認すると良いです。

医師 M.M.

【参考資料】
クリニック労務管理の「やってはいけない」 特定社会保険労務士 大杉 宏美(著)

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