Blog コミュニケーション コミュニケーショントラブル対策スタッフ教育 インシデントレポートで医療事故を防止し、安全な治療環境づくりへ 2024年1月16日 2024年1月16日 Facebook post 医療安全を語る上で有名な言葉に、1999年に米国医学会が提言した「To Err is Human(人は誰でも間違える)」 があります。 エラーは誰でも起こしてしまう可能性があります。しかし、医療現場でのエラーは、重大な医療事故になりかねません。さらに、医療事故が起こってしまうと、患者さんへの不利益だけではなく病院の評判にも影響を及ぼしてしまいます。 そこで今回は、医療事故を防ぐためのインシデントレポートの活用について解説します。 もくじ インシデントと医療事故(アクシデント)の違い インシデントレポートを書く目的と意義 医療事故の事例 インシデントレポートを習慣化し事故を隠さない風土づくりを インシデントと医療事故(アクシデント)の違い インシデントと医療事故(アクシデント)の定義 は以下になります。 ・インシデントエラーは起きたが実害はない、あるいは簡単な処置や治療を要したケースのことをいいます。また、患者さんに実施する前に気がついたヒヤリハットも、インシデントに含まれます。 ・医療事故(アクシデント)医療に関わる場所で起きた、患者さんもしくは医療従事者に濃厚な処置や治療を要する必要が生じたケースのことをいいます。 厚生労働省は医療機関に対して、医療安全対策の推進のため、日本医療機能評価機構へ事故等の事案やヒヤリハットの事例報告を勧めています。 インシデントレポートを書く目的と意義 インシデントレポートは、インシデントの要因を分析・対策し、再発を防止することを目的としています。 詳細を見てみましょう。 ■インシデントレポートを書くことでリスクの芽を摘む インシデントやヒヤリハットの報告は、リスクの芽を摘み、医療事故を未然に防ぐことにつながります。 リスクマネジメントをする上で、企業などでも広く認知されている「ハインリッヒの法則」があります。これは、「1件の重大な事故の裏には、29件の軽微な事故と300件のケガにもならない事故がある 」というもの。つまり、医療事故は突然起こるのではなく、そこに至るまでにいくつものエラーが連鎖しています。 インシデントレポートの活用で、潜在的な要因を分析・対策できれば、大事故へつながるエラーの連鎖を断ち切ることができるでしょう。 ■スタッフ間の情報共有で再発を防止 インシデントやヒヤリハットが起きた際は、原因の分析と対策方法の立案をクリニック全体で行うことが大切です。 インシデントレポートをカンファレンスなどで情報共有することで、再発防止につなげることができます。 インシデントレポートはインシデント等を起こした、あるいは発見した当事者が作成します。「いつ・どこで・誰が・何をしたか」といった正確な情報をもとに記載し、スタッフ全員が自分事として捉えられるよう、できるだけ詳細に書くことが重要です。 医療事故の事例 実際に起きた医療事故の事例を見てみましょう。 ・外来待合室で高齢女性の転倒・骨折会計窓口の椅子の横に座っているところを患者支援センター看護師が発見する。本人は、時計を見ながら椅子を確認せず座ろうとして、床に座り込んだと話す。外来受診を勧めるが「骨折していない」と受診を拒否したが左の股関節痛を訴え、屈曲できないため整形外科に紹介され股関節骨折を認めた。手術が必要なため他院へ搬送となる。 出典: 医療事故情報|A758D50D05B68792B|公益財団法人日本医療機能評価機構 この事例のように、ひとりで通院する高齢者は多く、転倒を起こさない環境整備はどの病院でも課題ではないでしょうか。 安全な治療環境づくりには、スタッフのリスク管理能力が欠かせません。インシデントレポートを活用することで、スタッフのリスクへの意識が高まることも期待できるでしょう。 インシデントレポートを習慣化し事故を隠さない風土づくりを 医療事故の対策には、インシデントを隠さない風土を育むことが大切です。 看護師などの医療スタッフは、インシデントに懲罰意識を感じることが多く、インシデントレポートを書くことを嫌がる風潮があります。そのため、インシデントを起こしても周りに知られたくないという心理がはたらいてしまいます。しかしインシデントレポートは、インシデントを起こした個人を責めるのではなく、システムや業務改善につなげるためのツールです。 勉強会の実施や、先生方が率先してインシデントレポートを書くことで、スタッフのインシデントレポートへの苦手意識を払拭できるかもしれません。 安全な医療提供を追求し、患者さんの信頼を築くために、インシデントレポートは貴重なツールであることを忘れないようにしましょう。 看護師 Y.N ☆関連記事☆ 【トラブル対策‼】駐車場トラブルを起こさないために 良い組織に必須な心理的安全性 ~すぐできる院長の行動3選~ 小児科クリニック内でのまさかを防ぐ!子どもの転倒・転落事故予防法とは Facebook post
コミュニケーション 「ちゃんと確認したのに…」患者さんとのズレの原因は? 治療や生活指導はしっかりしているのに、 症状コントロールが上手くいかない。 状態が悪化し、改めて症状の変化や 生活状況を確認すると、実は 以...
コミュニケーション 看護師が求人情報で知りたい情報とは?応募数がアップする3つのポイント クリニック運営において重要になるのが、スタッフの確保です。特に看護師は、流動性・離職率が非常に高い職種といえます。看護師が採用先を探す際に、...
コミュニケーション クリニックのホームページも対象!医療広告ガイドラインとは? クリニックや病院のホームページに広告を載せていない場合でも、医療広告ガイドラインの広告規制の対象になるのをご存じでしょうか?どんな内容がNG...
医院運営 待合室や休憩室に観葉植物が欲しい!設置前に確認しておきたいメリット・デメリット クリニックの開院祝いとして贈られることが多い観葉植物は、待合室や休憩室に置くだけで雰囲気がよくなったり、見ているだけで癒されたりするアイテム...
スキルアップ クリニックの待ち時間対策を始める前に「待つ」ことを考えてみませんか? 選ばれ続けるかかりつけ医になるために、 待ち時間対策は欠かせません。 Web予約システムを導入する 業務を見直して無駄を省く 待合室をラグジ...
コミュニケーション 診察がスムーズに進む!患児が安心できる4つの方法 小児科を訪れる子ども達にとって、注射などは怖くて避けたいもの。必要なものだと理解できない幼児の場合、全力で泣き叫び、暴れてしまいます。そうす...
コミュニケーション 小児科デビューは不安だらけ!子育て経験の浅い保護者のためにクリニックができること 子育て経験の浅い保護者にとって、小児科受診には様々な疑問や不安が伴います。 「問診では何を聞かれるの?」「病院には何を持っていけばいいの?」...