開業医にとって老後資金問題は
避けては通れない問題です。
勤務医と異なり、開業医には定年が
存在せず、退職金や厚生年金も出ない
ため、「老後資金はどれくらい必要か」
「年金や引退時の貯蓄は平均してどれくらいなのか」
など、老後の不安や悩みを抱えて
いる先生も多いと思います。
そこで本書では、開業医が引退時に
用意しておくべき老後資金について詳しく解説していきます。
もくじ そもそも開業医の引退のタイミングとは? 引退時に必要な老後資金とは? まとめ |
そもそも開業医の引退のタイミングとは?
勤務医であれば定年があるため、
その年齢までに必要な老後資金を
貯める必要がある反面、
ゴールとなる年齢が明確になっています。
しかし、開業医の場合は定年がない
ため、そもそも必要な老後資金を
考える前提が勤務医とは異なります。
当然ですが、クリニックの繁栄期が
長ければ長いほど老後資金は貯まりやすく、
引退時期が遅ければ遅いほど必要と
なる老後資金も少なくて済みます。
つまり、老後資金を考える上では
「何歳で引退するか」
を考慮する必要があります。
結論から言えば、多くの開業医は
60-70代で引退しています。
2021年に報告された
「医療機関の休廃業・解散動向調査」
では、クリニックの休廃業時点での
年齢は70代が最多の42.0%、次いで60代が40.5%でした。
(出典:帝国データバンク「医療機関の休廃業・解散動向調査(2021年)」)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220111.pdf
この前提をもとに、必要な老後資金について解説します。
引退時に必要な老後資金とは?
「老後2000万円問題」は、多くの国民に衝撃を与えました。
これは引退した夫婦2人が生活を
送る場合、年金だけでは毎月
約5.5万円の不足が生じるため、
引退後20-30年間の不足額が
約1320-1980万円に上るという問題です。
つまり、年金だけでは生活できなく
なるため、個人で老後資金を用意する必要があります。
これは開業医にとっても同様で、
引退するまでに開業時の借入金の
返済はもちろんのこと、引退後の
老後資金を貯めておく必要があります。
また一般的な開業医の場合、
勤務医と異なり退職金もなければ
厚生年金も出ません。
(医療法人であれば支給されることもあります。)
もちろん、それぞれが求める老後の
生活の質や不労所得の有無、
ローンの残債などによって状況は
異なるため、一概に
「◯◯万円あれば大丈夫!」とは言えません。
しかし、概算である程度必要な金額を
計算することは可能です。
一般的に、まともな老後生活を
送るには月38万円が必要と言われ
ていますが、医師の場合比較的
生活水準が高いため、月45万円と仮定します。
次に、年金を月20万円受け取れると
仮定し、65歳から生涯を終えるまで
を30年と仮定すると、
(45-20)万円×12ヶ月×30年=9000万円
が必要になると計算できます。
これはあくまで概算であり、
高齢化社会に伴う年金制度の縮小を
考慮すると、年金支給額は
減額される可能性もあります。
また、想定外の出費(医療費や
介護費など)や旅行などの贅沢も
考慮すると、さらに資金を
用意しておかなくてはなりません。
その一方で、開業医であれば
引退の年齢をご自身で選択できます。
多くの開業医が70代で引退している
ことを考慮すれば、仮に75歳で
引退した場合、必要な老後資金は
9000万円から6000万円まで下がります。
つまり、引退するタイミングが
高齢であればあるほど、
生涯を終えるまでの無収入期間が
短くなるため必要な老後資金も少なくて済みます。
今の時代ご自身が老後得られる年金は
簡単にネットで調べることが
可能であり、月々の予想される支出を
当てはめれば、必要な老後資金はある程度概算できます。
無防備に引退を迎えることなく
余裕のある老後を暮らすためには、
貯めるべき老後資金の目安を事前に
計算しておくとよいでしょう。
まとめ
本記事では開業医が引退時に
用意しておくべき老後資金について解説しました。
多くの開業医が70代で引退するため、
引退後の20-30年の生活を
どう暮らしたいか、から逆算して
適切な老後資金を計画的に貯める
とよいでしょう。
今後は、年金問題や高齢化によって
今よりシビアな老後になる可能性も
高いため、本記事が先生の
より良い人生設計の一助になれば幸いです。