2年以上、COVID‑19との戦いが続いています。
感染者数に波はあるものの、
もはや陽性患者は特別な存在では
ありません。
先生のクリニックでも、
発熱患者が来院した場合や、検査の結果
COVID-19陽性となった患者さんへの対応の
流れが定着しているのではないでしょうか。
もくじ PCR検査陽性は日常 患者さんにとっては突然の初体験 医療従事者の慣れすぎた対応は辛い 10秒だけ心を寄せる まとめ |
PCR検査陽性は日常
2022年5月31日時点での1日の
COVID‑19新規陽性患者数は21,903人。
(厚生労働省「国内の発生状況など」より)
コロナ禍前の、2017年のある1日の中で、
感染症と推定される下痢および胃腸炎で
受診した患者数が28,400人。
(厚生労働省「平成29年患者調査」より)
1日あたりの患者数だけでみると、
COVID‑19は以前の感染性胃腸炎と
同じくらいの数だと言えます。
2022年1月からの第6波で
医療機関でのPCR検査は増加し、
陽性判定が出るのは日常…という
クリニックも多いでしょう。
患者数が増えればそれだけスタッフの
経験値が上がり、忙しい中でも対応に
慣れてきているのではないでしょうか。
患者さんにとっては突然の初体験
2022年6月1日時点のCOVID‑19
累計患者数は人口の約7%です。
言いかえれば、93%の人は感染したことが
ありません。
ほとんどの患者さんにとって
COVID‑19は初体験ということです。
当たり前ですが
「来週の月曜日に熱が出るな」
と予測できる人はいません。
自分や家族の発熱はその人にとって
予測していなかった急な出来事です。
濃厚接触者の認定も同じです。
昨日まで予想もしていなかった
PCR検査を受け、陽性ならそのまま
自宅待機となります。
何日も家から一歩も出ない生活を
強いられることは、今までにない経験です。
仕事や学校、子育て、介護、さまざまな
役割を急に休まなければならず、
経済的な負担が伴う場合もあります。
軽症であっても
「大したことがなくてよかったな」
と思える状況ではありません。
症状への不安、自宅待機への不安、
経済的な不安、復帰後の不安…。
患者さんや家族は大きな不安を抱えて
家に閉じこもることになるのです。
医療従事者の慣れすぎた対応は辛い
検査結果が陽性であったことを知らされ
大きなショックを受ける中、
医師や看護師が冷静すぎると患者さんは
冷たいと感じ、さらに落ち込んでしまう
可能性があります。
忙しい中
「何て声をかけるべきか…」
と迷いもあるでしょう。
- 大変そうな相手を目の前に、
優しい言葉をかけたら堰を切った
ように話し始めるかも知れない。 - でもゆっくりと患者さんの話を聞く
時間は取れない。 - クリニックはあくまで治療の場であり、
自宅療養のサポートまでできない。 - 患者さんから
「あれはどうしよう、これは困る」
と話しかけられても対応できない。
…こういった事情や思いがあり、
あえて淡々と話すようにしている、
という方もいるでしょう。
しかも対応に慣れれば慣れるほど、
流れるように説明できてしまいます。
すると患者さんは思うのです。
「忙しいのはわかるけど冷たい対応だな、
ちょっとくらい心配してよ…」と。
10秒だけ心を寄せる
自分が患者さんだったら、大変だよなぁ…
と一瞬だけ考えてください。
そして、自分なりの言葉をひとことでよいので
かけてください。
それだけで、患者さんの心は楽になります。
大変さを分かろうとしてくれただけで、
安心するのです。
患者さんもクリニックが忙しいことは
十分承知しています。
その場で解決しない不安を
ダラダラと話すようなことはないでしょう。
例えば、
「陽性となってご不安ですよね、
動揺される方が多いのですが、まずは
落ち着いてくださいね」
などの声かけをして
10秒だけ心を寄せたら、
「これからの流れについて説明しますので
わからないところがあればご質問ください」と
あとは冷静に今後の流れを説明する。
緩急をつけることも大切です。
患者さんは
「焦ったり不安になったりしてもいいんだ」
と動揺する自分を認識することで
冷静さを取り戻すことができるでしょう。
まとめ
多くの患者さんにとってCOVID‑19の陽性は
初体験です。
日々メディアなどでさまざまな情報が
飛び交っている中、突然自分がその
当事者になってしまうのです。
クリニックのスタッフにとってはいつもと
同じ業務であり、
次々と対応に追われる中ではあると
思いますが、ほんの一瞬だけでも、
患者さんに心を寄せてみてください。
クリニックのスタッフから掛けられる
ひとことで、患者さんの不安な気持ちを
軽くすることができるかもしれません。
看護師M.K.