「お大事にどうぞ」という言葉は、
多くの先生が挨拶がわりに口にしている
のではないでしょうか。
当たり前すぎて、不快感を覚える
患者さんは少ないでしょう。
しかし、医師がこれと同じように話す
フレーズの中に、効果がないどころか
場合によっては逆効果になりかねないものが
あります。
今一度、よく行っている声かけを
見直してみてはいかがでしょうか?
1日に何回言っていますか?鉄板フレーズ
① 「ゆっくり休みましょう」
② 「ストレスを減らしましょう」
③ 「適度な運動をしましょう」
どれも患者さんにとって大切なことで、
生活習慣が重要なのは言うまでもありません。
医師がどんなに適切な診察や処方をしても、
患者さんが変わらなければ効果は
半減してしまいます。
生活習慣病などは、患者さんの行動変容
あっての治療という側面もあります。
当たり前のことなのに効果がない理由
例えば先生が風邪をひいたときに
知人に「ゆっくり休みなよ」と言われたらどうですか?
「休めるなら休んでるよ…」と
反発心を持った経験はありませんか?
患者さんも同じです。
もっと早い段階で休みを取り、
体調を整えたかったけれどもさまざまな
事情で我慢を重ね、症状をこじらせて
しまう方が多いのではないでしょうか。
健康に関する情報が溢れている中、
自分の生活習慣を変えたいと思っている
患者さんは少なくありません。
しかし、生活習慣を変えるということは
「新しいタスクが増える」
ことに近いです。
仕事や子育て、介護などの役割に
追われている人は、例えそれが自分にとって
大切なことで、それをしないことによって
自分の健康が損なわれる恐れがあっても、
新しいタスクを増やす余裕がないのです。
そのような状況の中、まるで「お大事に」と
同じように「◯◯しましょう」と言われると、
患者さんの受け取り方によっては
ストレスになってしまうことがあります。
しかし、患者さんは先生の言葉が正論だと
分かっているので、そのストレスを先生に
ぶつけることはありません。
苛立ちと諦めの気持ちで帰宅した患者さんは、
生活習慣を変える糸口を見つけられないまま、
もやもやとそのままの生活を続けることに
なってしまいます。
一歩だけ踏み込む これだけでガラッと変えられる
鉄板フレーズに潜む悪影響を回避するには
どうすればよいのでしょうか?
「代わりに何を言えばよいの?」となりますよね。
「言わない」のではなく、「言って、プラスする」
ことで大きく変えることができます。
先ほどの、先生が風邪をひいたシーンであれば、
「ゆっくり休めたらいいけど…仕事大変なの?」
と聞かれたらどうでしょうか。
だいぶ印象が変わりませんか?
鉄板フレーズの悪影響の原因は、相手の事情を
考慮しない、一方的な言い回しにあります。
一言、状況を聞く言葉を付け加えるだけで、
相手を理解しようとする姿勢を示せます。
「ストレスを減らしましょう。
ところでお子さんは夜泣きはいかがですか?」
「適度な運動をしましょう。
ところでお仕事には電車で?」
このように、プラスする一言は
できる限り具体的なものにします。
「毎日大変ですか?」
「運動する時間はありますか?」
と曖昧な表現ではあまり意味をなしません。
「大変と言われたら大変だけど…何が大変なんだろう?」
「運動する時間がないのか、自分がサボっているだけなのか…」
と患者さんの頭の中も曖昧になってしまいます。
ピンポイントな質問をすることで、
相手も具体的な想像ができます。
自分の問題に気づきやすくなるのです。
「夜泣きはしないのですが、
イヤイヤ期で言うことを聞かなくて…」
「イヤイヤ期が辛いのですね。誰かに相談していますか?」
「車通勤です。車だと運動不足になりますよね」
「車通勤だと運動する機会は少なくなりますよね。
昼休みはどう過ごしていますか?」
など、具体的なやりとりをするうちに、
患者さんの問題や解決への糸口が
見えてくるかもしれません。
解決方法までをしっかりと提示する
必要はありません。
患者さんが「こうすればいいかも」と
思えるよう背中を押すようなイメージです。
まとめ
「ゆっくり休みましょう」
「ストレスを減らしましょう」
「適度な運動をしましょう」
当たり前のように患者さんに
投げかけている言葉が、
患者さんにとってどのような影響を与えるのか、
改めて考えてみてはいかがでしょうか。
具体的な質問を足すことで、
魔法の言葉に変わるかもしれません。
看護師M.K.
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