
受診した患者さんが最初に接する
看護師や事務員などの医療スタッフは、
まさに「クリニックの顔」であり、
医療スタッフの質や人格は
クリニックの経営にも影響を与える可能性があります。
医療・福祉の分野における
離職率は13.8%で高い水準となっており、
せっかく雇用した貴重な人材の
一定数が離職してしまうことも
明らかとなっています。
一方で入職者数は年々減少傾向にあり、
離職した一定数を補うための新たな
雇用についてもハードルが高くなっています。
そのため、クリニック経営を
健全かつ安定させるためには、
貴重な人材の流出を避ける必要があります。
また、新規雇用においては
採用段階から注意が必要です。
そこで本記事では、
医療スタッフの離職の現状や、
スタッフを採用する際に気を付けたい
「ミスマッチ採用」について詳しく解説します。
新規雇用と離職の現況
日本では少子高齢化が非常に深刻であり、
2024年9月の時点で、総人口に占める
高齢者の割合が29.3%と過去最高となりました。
少子高齢化にともない、
医療機関や看護施設の利用者が増え、
医療スタッフの需要が急激に増加傾向にあります。
また、医療スタッフの高齢化により、
今後、高まる需要に追いつけなくなる可能性があります。
これにより、クリニックでも
看護師をはじめとする人材の確保が
困難となることが予想されています。
さらに、新規雇用が困難となるだけでなく、
より条件の良い職場への転職が活発になるなど、
貴重な人材の流出も問題です。
正規雇用看護職員、新卒看護職員、
および既卒看護職員の離職率の推移は以下の表の通りです。
看護師の離職率は毎年ほぼ変化がなく、
せっかく新規雇用しても一定数は離職してしまう状態が続いています。
看護師の離職率はほかの職種と比較して
特別高いわけではありませんが、
地域によって傾向に差があり、
特に東京・神奈川・大阪では
正規雇用看護職員の離職率が高くなっています。
これは、都心部では比較的復職 しやすいため、と考えられます。
以上のことから、
今後さらに促進する少子高齢化の影響や
推移が横ばいである離職者の影響は、
クリニックを経営する方にとって
間違いなく悩みの種となるでしょう。
医療スタッフが離職する原因
では、なぜ医療スタッフが離職してしまうのでしょうか?
クリニックの医療スタッフが離職する主な原因を4つ挙げます。
・ 比較的簡単に復職できる
・ 職場の人間関係
・ 業務量が多い
・ ミスマッチ採用
医療業界は慢性的な人員不足であり、
とりわけ看護師不足は深刻です。
そのため、離職したとしても
比較的簡単に復職できるため、
人間関係や業務内容に不満があれば
看護師は離職しやすい状況にあります。
また、クリニックは病院と比較して
組織が小さいため、人間関係が密なものになりやすく、
離職の原因となるケースが多くあります。
さらに、新卒の離職者に関しては、
原因のほとんどは、新卒者と職場の双方に
採用段階から問題があることで生じる
「ミスマッチ採用」が原因といわれています。
ミスマッチ採用を防ぐポイント
クリニック側が求める人物像や
期待する業務内容と、
入職した医療スタッフの経験・志向が
食い違っている場合、スタッフは
「思っていた仕事と違う」
「職場の雰囲気が合わない」
などの不満を感じやすくなり、
その結果、短期間での退職につながってしまいます。
このような「ミスマッチ採用」を防ぐために
注意したいポイントを3つご紹介します。
1. コミュニケーションを見直す
2. 面接前に必要な人材をイメージする
3. 適切な求人手段を取る
1. コミュニケーションを見直す
採用したスタッフと馬が合わない場合、
ついクリニックを経営する側が
「採用を失敗した」と思いがちです。
しかし、ミスマッチ採用の原因は
実はクリニック側にあるかもしれません。
コミュニケーション不足で、
採用されたスタッフの方が
「上司選びに失敗した」と感じている可能性もあります。
離職者が多い場合は、自身のコミュニケーションを見直すと良いかもしれません。
2. 面接前に必要な人材をイメージする
スタッフの採用活動を始める前に、
クリニックが求める人材像を、
可能な限り具体的にイメージしておくべきです。
「明るくて元気な人」
といった抽象的なものではなく、
① 当院は小児科なので、
できれば小児科勤務歴があり、
子供に優しく接することのできる人材
② 土曜日も月2回以上勤務可能で、
午後の診療も最後まで対応可能
以上のように、具体性を持つことが重要です。
3. 適切な求人手段を取る
求人手段によっては、
メリット・デメリットがあるため、
クリニックのニーズに合った求人手段を選択しましょう。
求人手段の例とその特徴を以下にまとめました。
求人手段 | 特徴 |
知人の紹介 | スタッフからの紹介 コミュニケーション能力が高い人を見つけやすいが、人材を見つけるチャンスが少ない |
ハローワークなどの無料媒体 | 人材を見つけるチャンスは多いが、専門性を求める場合には合わない |
SNS | 若者の求人には必須だが、SNSを運営するクリニック側の企業努力が必要となる |
人材紹介会社 | より幅広く人材を集めやすいが、コストがかかる |
まとめ
今後さらに、医療スタッフの人手不足が
悪化していくと予想されています。
その人手不足を乗り越えるために、
優秀な人材の確保と離職の防止が非常に重要です。
離職の原因は様々ですが、
その1つの「ミスマッチ採用」を減らし、
クリニックに合った求人手段で
医療スタッフの確保をしてみてはいかがでしょうか。
医師 H.N.