内科クリニックで導入進む!POCT尿検査のメリットと注意点

尿検査は、非侵襲的かつ簡便に実施できる
スクリーニング検査として、
内科診療の現場で欠かせない存在です。

中でも尿定性検査は、
試験紙の色調の変化を目視で読み取り、
判定をする方法が主流でしたが、
近年では、POCT
(臨床現場即時検査)対応の
尿分析装置の小型化や機能の進化により、
クリニックでも装置を活用するケースが増えています。

尿定性検査装置の活用には、
診断の迅速化や患者満足度の向上など、
多くの利点がある一方で、
導入に際してはコスト面やスタッフ教育の
課題もあります。

今回は、クリニックで尿検査装置を導入する
メリットと注意点を整理し、
導入のポイントを解説します。

尿検査の役割とは?

尿検査は、腎疾患や糖尿病、感染症、
肝疾患などのスクリーニングに用いられる、
簡便で非侵襲的な検査です。

クリニックの院内で実施される尿検査には
尿定性検査と尿沈渣検査があります。
特に尿定性検査は診療科を問わず、
ほとんどのクリニックで院内化をしています。

尿定性検査で評価できる項目と主な用途は以下のとおりです。

略語 項目名 主な用途
Glu グルコース 糖尿病などの糖代謝異常のスクリーニング
Alb アルブミン 腎疾患(糖尿病性腎症、慢性腎臓病など)の早期発見、腎機能障害の評価
Cre クレアチニン 腎機能評価、Alb/Cre比の算出による腎疾患スクリーニング
Pro 蛋白 腎疾患全般のスクリーニング
Bld 潜血 腎炎、尿路結石、尿路感染症などの尿路出血の検出
Leu 白血球 尿路感染症の早期発見
Nit 亜硝酸塩 尿路感染の指標
Ket ケトン体 糖尿病性ケトアシドーシスなどの検出
pH pH 代謝性疾患や感染の補助判断
比重(SG) 比重 腎機能、腎の濃縮・希釈機能などの評価

尿定性検査の判定方法としては、
試験紙を用いた視覚的な判定と
POCT対応の尿分析装置での判定があり、
どちらもクリニックで多く普及しています。

POCT対応の尿分析装置であれば、
検査するスタッフの負担を減らし、
疾患の早期発見・経過観察・合併症の
リスク評価に役立てることができます。

POCTによる尿検査装置導入のメリット

試験紙を用いた目視による尿検査と比較して
POCTによる尿検査装置を
導入するメリットを4つご紹介します。

1. 判定の標準化と精度向上

目視は、色の変化を人が見て判断するため、
判定者ごとに差が出やすく、
結果のばらつき(ヒューマンエラー)が
発生しやすい課題があります。
また、検査をする時間帯や部屋の明るさで
判定が変わる可能性もあります。

目視に対して、検査装置では、
色の変化を機械で自動的に読み取るため、
誰が操作しても同じ基準で判定ができます。
そのため、目視の判定で課題となる、
照明や視力、経験値などに左右されず、
高い再現性と客観性を得ることができます。

2. スタッフの業務負担軽減

目視の場合、色の変化を見て、
項目ごとに結果を記録する必要があるため、
尿検査のたびに時間と手間がかかり、
スタッフの負担も増大します。

一方、検査装置の検査フローは、
試験紙を装置にセットするだけなので操作が簡単です。
複数項目を一度に自動判定でき、
判定・入力・集計の手間が大幅に減ります。
また、正しく装置を扱えれば、
一定品質の検査ができ、業務効率が大きく向上します。

3. 検査結果のデータ化と管理の効率化

目視の場合、判定結果をスタッフが紙に手書きして運用します。
そのため、記録ミスやカルテへの転記漏れが
発生する可能性があります。
また、過去データの管理や集計、
院内でのデータ共有も手作業となり、
スタッフの負担も大きくなります。

検査装置による運用であれば、
測定値が自動的に記録・データ化され、
電子カルテや管理システムに簡単に取り込めます。
これにより記録ミスや転記ミスを防ぐことができます。
また、患者データの管理や過去履歴の検索が
目視よりも容易になり、スタッフの負担軽減となります。

4. 品質管理や精度保証がしやすい

目視では判定の標準化や精度保証が難しく、
品質管理のためのチェックや教育も継続的に必要です。
検査スタッフの違いや新人スタッフで
ばらつきが出やすいことも考えられ、
継続的な精度保持に多くの時間や労力が必要になります。

対して、検査装置では、
校正機能が備わっていたり、
エラーの自動検知・通知ができたりします。
外部の精度管理プログラムに参加し、
品質の一貫性を維持しやすいのも特徴です。
装置の定期メンテナンスを
各メーカーが実施しているので、
装置導入時に契約しておくこともおすすめです。

POCTによる尿検査装置導入の注意点

尿検査を導入する際は、
以下の2つに注意すると良いでしょう。

1. 初期導入コストとランニングコスト

POCT対応の尿検査装置は、
機種にもよりますが数万~数十万円の費用が必要になります。

また、試薬などの消耗品のほか、
継続的なメンテナンスも必要であり、
単に機器を購入すれば終わりではない点に注意が必要です。

導入の際には、費用対効果の試算を行い、
自院の運営にあった機種の選定や、
リース契約なども検討すると
スムーズに導入につながるでしょう。

2. スタッフへの教育・習熟が必要

誤判定・ミスがないよう、
検査するスタッフの検査手技の統一や教育が不可欠です。

メーカーの導入時トレーニングや
動画教材を活用したり、
手技の簡単な機種を選んだりするなど、
院内スタッフが装置を扱える環境を整えることが大切です。

メリットと注意点を見極めたうえで導入検討を

POCTでの尿検査は、
その日その場での迅速な検査や
疾患の早期対応を可能にします。

そのメリットを最大限に活かすには、
導入費用やランニングコスト、・スタッフの教育体制の整備が必要です。

導入を検討する際は、
検査数、検査の目的、導入後の流れ、
精度管理体制などをあらかじめ想定し、
現場に合った無理のない導入計画を
立てることが成功のカギとなるでしょう。

看護師 S.H

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