厚生労働省による受療行動調査によると、
診察の待ち時間は約半数の病院で30分未満となっています。
※この調査の対象は入院施設のある病院で、クリニックの現状ではありません。
飲食店、美容室、映画館などサービス業では
モバイル予約が普及したことで、
多くの人にとって「待たない」というのが
当たり前の時代になりました。
そのため、クリニックの待ち時間対策も
より重要となってきているため、
今回はその具体策をご提案します。
乳幼児や高齢者が多いクリニック
乳幼児や高齢者など
「行動に時間がかかる」
「待っているのが大変」
な方の待ち時間対策です。
このような患者さんに対しては
緩めの予約システムがおすすめです。
彼らは時間厳守が難しく、
とてもストレスになるからです。
例えば9時の予約は
9時から9時15分の間に来院すればOK、
当日の30分前まで予約可能にするなど。
また電話も侮れません。
電話の場合、
予約システムを開いて、
診察券番号を入れて、
時間を選んで…という手間を省けるため、
誰にでも優しいツールです。
「これから行きたいのですが、混んでいますか?」
「今は混んでいるので、30分後くらいに到着するよういらしてください」
この会話だけで安心して来院することができます。
しかし緩い予約システムの最大の欠点が、
厳密な来院予定の把握ができないことです。
そのため、予想外の待ち時間が発生するリスクがあります。
時間厳守がストレスになるのか、
待つのがストレスなのかは、
患者さんによって異なります。
どのような予約システムと
どのくらいの待ち時間が理想的なのか、
スタッフで相談して
クリニックに合った方法を模索してみてください。
待合室の工夫としては、
乳幼児の多いクリニックでは
床に腰を下ろせるスペースを確保することです。
子どもがハイハイで移動できたり、
寝転んだりできます。
高齢者の多いクリニックでは
座りやすい椅子の工夫や、
受付・診察・会計の動線を考慮した
椅子の配置を考えてみてください。
一般成人が多いクリニック
この層へはよりラグジュアリーな環境を提供したいものです。
「タイパ」(タイム・パフォーマンス)が
流行っているように、
より効率的に生活することを
望む人が多いからです。
なるべく待ち時間が減らせる
予約システムの活用がよいでしょう。
待合室には診察状況が分かるよう、
電光掲示板を用意し、
自分があと何分で診察になるか
予測できるようにします。
さらにフリーWi-Fiや充電スペースを設置し、
スマートフォン利用環境を快適にすれば、
患者さんの待ち時間を充実させることができます。
クリニックでサプリメントや化粧品などの
商品を販売している場合は、
待ち時間でお買い物をしてもらうのもよいかもしれません。
一番重要なのは「待ってよかった!」と思える診察
待ち時間対策はとても重要ですが、
システム導入やスタッフの増員にはコストがかかります。
また患者さんの受診には天候や季節、
感染症の流行など様々な要素があり、
1日の来院数を完璧に予想することはできません。
そのため、待ち時間を完全に無くすのは
難しいかもしれません。
しかし例え待ち時間があったとしても、
患者さんに満足していただければ、
それは価値のある待ち時間になります。
つまり「待ってよかった!」と思える診察が重要です。
そこでポイントになるのが、
「患者さんと目を合わせる」ことと
「患者さんの話を最後まで聴く」ことです。
確かに患者さんは、自分の症状や疾患に対し
適切な治療を望んでいます。
それと同時に「自分を尊重されている」
という実感も得たいのです。
また患者さんを待たせてしまった場合には、
先生自ら頭を下げるのも効果的です。
「お待たせして申し訳ございません。」
患者さんの目を見てこのように言うだけで
患者さんが受ける印象は違うはずです。
スタッフの振る舞いがカギ
スーパーのレジに並んでいると想像してください。
店員があからさまにのんびりしている、
客への声掛けが雑になっている、
ついには店員同士で雑談を始めた。
これでは、イライラが募りますよね?
同様に、待合室にいる患者さんは
意外とスタッフの様子を観察しています。
特に受付は目立ちます。
テキパキと仕事をしていると思ってもらえるようにしたいです。
またスタッフの歩き方にも注意が必要です。
本人は気付いていないことが多いですが、
だらだらしているように見える人がいます。
自分の姿は自分では見えません。
待合室を定点カメラで撮影し、
スタッフで共有してみるのも効果的です。
まとめ
サービス業界では予約システムが普及し、
「待たない」ことが当たり前になりつつあります。
クリニックの待ち時間は
患者さんの満足度に直結し、
その対策はとても重要です。
単にシステムを導入するのではなく、
患者層を意識した調整がポイントになります。
まずは患者さんのニーズを話し合い、
具体的な対策を考えてみてはいかがでしょうか。
看護師 M.K.