現行の健康保険証は2024年12月2日で
新規発行が終了し、1年間の猶予期間をもって失効します。
そのため、今後はマイナ保険証で
受診する患者さんが増加することは間違いありません。
マイナ保険証の利用率増加により、
クリニックに良い意味でも悪い意味でも
さまざまな影響が予想されます。
そこで今回は、マイナ保険証が
クリニックに与える影響について詳しく解説します。
マイナ保険証とは
マイナ保険証とは、現行の健康保険証を
廃止して新たにマイナンバーカードを
保険証として使うことです。
日本の医療DXの要とも言える施策の
1つであり、2021年10月から本格運用が始まっています。
医療機関におけるマイナ保険証の運用は
2023年4月からの原則義務化が決定し、
不本意にも導入を余儀なくされた施設も少なくないでしょう。
そんな努力も虚しく、2024年4月時点での
施設類型別の利用率は、病院13.73%、
歯科診療所10.91%、医科診療所5.87%、
薬局 5.71%と、特に医科診療所と薬局では
大きく低迷しているのが現状です。
引用元：日本医事新報社「24年4月のマイナ保険証利用率は6.56％―医療保険部会に報告」
一方で、現行の健康保険証は
2024年12月2日をもって新規発行が終了し、
最大1年間の猶予期間をもって失効します。
そのため、2025年末以降に患者さんが
保険診療を受ける場合、強制的に
マイナ保険証が必須となります。
以上の点を踏まえると、
今後マイナ保険証の利用患者さんは
確実に増加が見込まれ、クリニックにとって
さまざまな影響が予想されるため、
今から準備しておく必要があります。
マイナ保険証のメリットや良い影響
マイナ保険証利用率増加に伴う、
医療機関にとってのメリットは下記の通りです。
- 患者情報を瞬時に把握できる
- 他院での診療歴も確認できる
- インセンティブが得られる
- 今後の集客増加が見込める
カードリーダーでマイナンバーカードを
読み取ることで、患者さんの保険証番号や
氏名、住所といった基本情報を医療機関側は
瞬時に入手することができます。
他院で処方された薬剤の服薬状況や
検診結果なども参照することができ、
診療に活かせる点もマイナ保険証のメリットです。
また、厚労省では現在、
「マイナ保険証利用促進集中取組月間」
として様々な取り組みを実施しています。
ぜひ、ご活用ください。
引用元：「マイナ保険証利用促進集中取組月間」と利用促進のためのツール・一時金について
さらに、2024年6月の診療報酬改定では
マイナ保険証の有無で算定される点数も変わりました。
初診料はマイナ保険証なしで3点ですが
使用すれば1点が加算され、
再診料はマイナ保険証なしで2点ですが
使用すれば1点が加算されます。
一部マイナ保険証が使えない医療機関が
あることを考えると、マイナ保険証が使える
医療機関というだけで、患者さんにとっても
メリットがあるため、今後の集客増加が見込めます。
マイナ保険証導入のデメリットや悪い影響
マイナ保険証利用率増加に伴う、
医療機関にとってのデメリットは下記の通りです。
- 設備投資が必要
- システムトラブルのリスクあり
医療機関でマイナ保険証を利用する以上、
カードリーダーの導入や
システム事業者によるネットワークの
設定が必要であり、継続的なコストが発生します。
また、マイナ保険証の利用を巡っては
下記のようなトラブルが報告されています。
- 名前や住所で『●』が表示される
- 資格情報の無効がある
- カードリーダーでエラーが出る
- （窓口）負担割合の齟齬
これらのトラブルは医療機関にとっても
患者さんにとっても非常に煩雑であり、
患者離れを招く可能性もあるため、
クリニックとしては避けたいところでしょう。
現状、各種トラブルの頻度は
減少を認めておらず、今後のシステムの
向上を待つばかりです。
まとめ
今回の記事では、マイナ保険証が
クリニックに与える影響について解説しました。
マイナ保険証は利便性が高い一方で、
未だにほとんど利用者がいないため、
医療現場でもこれからの普及が待たれるところです。
2024年5月末、河野デジタル相は来春から
iPhoneにマイナ保険証が搭載される見通し
であることを発表し、これを機に
スマホユーザーのマイナ保険証利用率の増加も見込まれます。
本記事を参考にメリット・デメリットを
把握いただき、今後の利用者増加に
対応いただければと思います。
歯科医師 K.A.
