医療被ばくの説明ガイド|患者さんへの質問回答例を紹介

放射線は目に見えず、触れることもできない
性質のため、患者さんは被ばくの理解が難しく不安に感じやすいです。

また、過去の原子爆弾や原子力発電所の事故
などにより、放射線に対してマイナスイメージが根付いています。

そのため、必要な放射線検査を患者さんが
ためらうケースや、被ばくに関する質問をされる機会も少なくありません。

この記事では、医療被ばくについての説明と、
患者さんから出た質問への回答例を紹介します。

的確に回答できると患者さんからの信頼度も
あがりますので、ぜひ参考にしてください。

医療被ばくの基礎知識

医療被ばくとは、放射線診断や放射線治療による放射線被ばくのことです。

X線検査の代表例である、
胸部X線検査は約0.06mSv、CT検査は約5〜30mSvという数値が被ばく線量になります。
この被ばく線量を具体的な状況に当てはめて
説明できるように、次の2つを知っておくと役に立つでしょう。
● 自然放射線(日常生活で受ける放射線被ばく):年間2.1mSv
● 東京-ニューヨーク間の飛行機移動:0.2mSv

大量の放射線被ばくは、がんリスクの増加と
関連することが多くの研究で明らかになっています。

しかし、CT検査で受ける程度の被ばく線量では、その関係性は明らかにされていません。

もし影響があると仮定された場合でも、
他の要因でがんになるリスクと比較して、
非常に小さいリスクとされています。

医療被ばくへの質問に答える際のポイント

患者さんから医療被ばくに関する質問に対応する場面は、日常的にあるでしょう。

その際のポイントは以下の3つです。

● 忙しくても丁寧に傾聴する
限られた時間の中で医療被ばくについて質問
されたとしても、丁寧に傾聴することが重要になります。

質問は、患者さんの不安や疑問が背景に
あることが多く、心配ごとを理解し共有することが先決です。

混雑している診察中などは時間が限られて
おり、難しい場面もあるかもしれません。

しかし、短い時間でも患者さんの声を尊重し、
真剣に耳を傾けることが大切になります。

● 質問の意図を正確に把握する
質問の意図を正確に把握することが求められます。

患者さんは専門的な知識を持たず、自身の
感じている不安を具体的な言葉で表現できない場合が多いです。

そのため、言葉の裏にある意図や感情を読み取る力が求められます。

● 数字をうまく活用して答える
数字をうまく活用して答えられるようにすることが大切です。

医療被ばくに関する誤解や不安を解消する
ためには、具体的な数値を用いた説明が有効になります。

例として、自然放射線や飛行機での被ばく量と
医療被ばく量を比較することで、リスクを相対的に理解しやすくなるでしょう。

医療被ばくに対する理解と適切な対応が、
疑問の解消や信頼感を得ることに繋がります。

実際に患者さんからされた医療被ばくへの質問と回答例

実際の臨床現場で遭遇する、患者さんからの
医療被ばくに関する質問と回答を3例紹介します。

これらの例を参考に、患者さんへの説明やコミュニケーションに活かしてください。

質問1:検査は何回受けても大丈夫?

回答例:
放射線による健康への影響は否定できませんが、医療目的で行う放射線検査は限度が設けられておりません。

なぜなら、制限を設けることで必要な検査を受けることができなくなり、現在の体調不良や疾患の原因を把握できないほうが健康に悪影響を及ぼす可能性が高いからです。
また、これから受ける検査による被ばくが原因で健康被害が起きた事例は確認されておりません。

被ばくによる細胞のダメージは、蓄積されず回復します。
そのため、必要な検査は回数にこだわらずに受けてください。

質問2:子どもの検査を介助した後に妊娠が発覚したけど大丈夫?

回答例:
胎児に異常が現れるか心配なんですね。

放射線が原因で異常が現れるのは、細胞の修復を上回るほど破壊されたときです。

介助による被ばくは数μSv以下と測定できるかどうかのレベルのため心配ありません。

質問3:子どもの将来への影響は大丈夫?

回答例:
がんや遺伝子に影響が出ないか心配されているのですね。

がんや遺伝子に異常が出る放射線の量は、
これから受ける検査と比較して桁違いの量です。

医療被ばくで遺伝子に影響がでた例は確認されていません。

ただ、大人と比べると影響は大きいため、
線量を極力減らすなどの管理を行っています。
安心して検査を受けてください。

以上の例を参考に、相談者のペースに
あわせて話をよく聞きながら回答できると良いでしょう。

医療被ばくリスクへの的確な説明が患者さんの信頼度アップに

放射線被ばくは、マイナスイメージをもっている患者さんも少なくありません。

そのため、医療被ばくのリスクを理解し、
患者さんへ的確に説明することは、
患者さんの不安を軽減し、治療への理解と協力を得る上で非常に重要です。

このことは、信頼度の向上につながるので、
質問の回答例を準備しておくとよいでしょう。

(放射線技師 O.S)

参考:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
   CT検査など医療被ばくに関するQ&A

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