ホテルや旅館を利用したとき、
アメニティグッズに感動したことはありませんか?
「あったら便利なものがすでに用意されている。」
ちょっとしたものでも、とてもうれしく思いますよね。
アメニティ(amenity)とは快適性や住み心地のこと。
人が環境の質に対して感じるものです。
ではクリニックのアメニティとは
どのようなものでしょうか。
改装など、大掛かりなことをしなくても
患者さんを喜ばせるヒントを考えてみます。
心遣いのはずがガッカリ 使わなくてもニッコリ
人はクリニックの心遣いを感じると、
「便利だな」
と思うだけでなく
「自分は大切にされているのだ」
と感じ、そのクリニックへの安心感が生まれます。
それに対し、その心遣いが
「ちょっと違うな」
と思えると、
「このクリニックは気が利かないな。
他の面でも行き届いていないかも。」
とすら考えてしまします。
ガッカリな心遣いは、マイナスな感情を生んでしまうのです。
例えば子ども用の手洗い台。
子どもの身長に合わせたものですが、
とても幅が狭いことがあります。
大人が一緒に洗おうとすると
床に水が飛び散ってしまうことも。
それでは靴や床が濡れしてしまい、
かえって不便です。
一方で、院内に
「オムツが必要な場合はお声かけ下さい」
と張り紙があったらどうでしょうか。
自分は使わなくても、
「いざとなった時に安心だな」
と感じることができます。
何となくではダメ 誰がどのようにして使うのか明確にする
受付に荷物台を置いたり、トイレに手すりを付けたり。
多くのクリニックでも見られる工夫ですね。
それらが本当に患者さん目線で置かれているのか、
実際に使う人を想定して試したことはありますか?
荷物台が小さすぎたり、
高さが合わなかったり、他の患者さんの
邪魔になりそうだったったり、
あえて言わないものの、患者さんは
不便を感じている可能性があります。
手すりも高さや場所が的確でなければ
意味を持ちません。
全ての人に完全に合わせることは難しいですが、
実際に試して確認することはとても重要です。
ターゲットはよく来るのんびりペースの患者さん
高齢者や障害者、子ども連れの保護者など、
一般的な成人よりも行動が遅くなりがちな人を
ターゲットにしましょう。
彼らは何らかの原因で動きに制限があります。
それをサポートすることができる設備を考えます。
高齢者は荷物台を支えにして
立つ可能性があるため、安定感のあるものを。
子ども連れの保護者は、荷物が多いので広い台を、
といったようにします。
そしてそれを対象になりきって試します。
腰が曲がって杖をついた高齢者になり、
ハンドバックを持ち、待合室の椅子から受付まで移動し、
カバンを開けて財布を出し、会計をして、
領収書と診察券を受け取り、それをバッグにしまう。
そういった具体的な行動をすることで、
「杖を立てかける場所がない」
「高さが合わない」
などの発見があるでしょう。
アイデアのヒント
高齢者と子連れの保護者を
想定したアイデアを提案します。
具体的なヒントによって、
「私の病院だったらこうかな」
と考えやすくしました。
参考にしてみてください。
①入口
- 歩行車やベビーカーを置くスペース
(屋根があるとなおよい) - アルコール消毒の設置場所
(子どもの顔の高さに据え置きしてあると目に入る危険がある) - 杖置場、靴べら、椅子
(靴を脱ぐ場合) - 上着掛け
(冬は上着を持って移動はしにくいため)
②受付
- 荷物台
- 老眼鏡
- 貸出ボールペン など
③トイレ
- 手すり
- 紙タオル
- オムツ用ごみ箱
- 子ども用便器
- おしりふき など
スタッフ全員で話し合ってみましょう
診察室以外での患者さんの様子は
スタッフの方が良く知っています。
スタッフ全員で意見を出し合い、
検証してみましょう。
また、自分自身が患者として
来院した経験も役に立ちます。
よく来る患者さんに意見を求めるのも
ひとつですね。
皆で話し合うことで、それまで気付かなかった
患者さんの不便さが見えてくるかもしれません。
患者さんはよほどのことがない限り
設備に対する指摘はしないでしょう。
患者さんの心の中の「モヤっと」を
見付けそれを改善する。
患者さんが快適に過ごすことができれば
診療は円滑に行われ、
集患にもつながるのではないでしょうか。
まとめ
患者さんにとって快適な病院づくりは、
小さいことから始められます。
ターゲットは来院数の多い、行動に制限のある患者さん。
アイデアは実際の患者さんを
想定して試してみましょう。
患者さんの動きを細かく想像することで、
普段は見過ごしていた大切なことに
気付くかもしれません。
ぜひ、一度やってみてください。
看護師M.K.