
海外から日本に訪れる旅行者の数は
年々増加しており、
とくに都市部や観光地のクリニックでは、
外国人が突然来院することも予測されます。
言葉や文化、医療制度など
異なる国から来た旅行者の診察では、
さまざまなトラブルが
発生する可能性があるため、
日頃からの備えが大切です。
この記事では、外国人旅行者が
来院した際に想定されるトラブルと、
その対策についてご紹介します。
外国人旅行者の来院で起こり得るトラブルは?
外国人旅行者が来院した際に
発生することが多いトラブルを3つ挙げ、
それぞれの対応策についてご紹介します。
1.言語の違いに関連したトラブル
ある調査では、
診療で外国人対応を行った際に
トラブルに発展した経験がある医師の
50%以上が言語の違いに関連したトラブルに遭遇している。
日本語が理解できない外国人への問診は、
症状が正確に聞き取れず、
正しい診断や治療ができない可能性があります。
あらかじめ英語や中国語、韓国語など、
外国語で記載された問診票を
用意しておくと、スムーズに対応できます。
スマートフォンで使える翻訳アプリや
AI通訳機を利用するのも良いでしょう。
翻訳アプリを使用する場合は、
対応するOSや言語、精度を確認し、
自院に合ったものを選ぶ必要があります。
また、医療通訳を専門としたサービス を
利用するのもおすすめです。
事前登録や設定が必要なことが多いので、
利用するケースが発生することを想定して、
前もって準備を進めておきましょう。
2.医療保険制度の違いや支払いに関連したトラブル
日本の医療機関に
かかったことがない外国人には、
まず医療保険制度の違いを
理解してもらう必要があります。
受診の流れや診療費の支払い方法など、
事前にイラストや外国語で書かれた資料を
準備しておくと、スムーズに説明できるでしょう。
また、日本の健康保険や
その他の民間医療保険に
加入していない外国人は、
原則として医療費が全額自己負担になります。
実際の加入状況ですが、
約73%の外国人旅行者が
民間医療保険に加入しています。
しかし、滞在日数が短いなどの理由で
保健に加入する必要がないと考える旅行者も少なくありません。
参照元:国土交通省観光庁「訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査等を行いました」
全額自己負担となった場合、
診療費は各医療機関が設定する、
自由診療価格になることを説明しておきましょう。
海外旅行保険や
クレジットカードの付帯保険に
加入している場合は、
原則として被保険者が保険会社に連絡し、
補償の範囲や診療費の支払い方法などを確認します。
診療費の支払いは一旦患者さんが行い、
あとから保険会社に
請求するタイプの保険もあるため、
現金以外の支払い方法にも対応できると安心です。
3.文化や宗教に関連したトラブル
たとえば、イスラム教を信仰する国では
以下の宗教的な制約があります。
「異性や知らない人の前で肌を見せられない」
「豚の成分が含まれた医薬品が使用できない」
宗教上の理由などで
配慮すべき事項があるかどうかは、
診察前に確認すると良いでしょう。
希望に添った配慮ができない場合は
代替案を提案し、患者さんに
了承を得たうえで診察や検査を行います。
外国人旅行者への対応に困ったら?
外国人旅行者への対応で悩んだときに
相談できる窓口などを見つけておくと、
いざというとき慌てずに対応できます。
ここでは、活用できる3つのサービスをご紹介します。
1.特定非営利活動法人 AMDA国際医療情報センター
日本にいる外国人や、外国人患者さんを
受け入れる医療機関に向けて、
さまざまなサービスを提供している団体です。
外国人患者さんへの対応に悩む医療機関が
活用できるサービスには
「医療機関向け情報案内」
「電話医療相談」などがあります。
「遠隔医療通訳 アムダ通訳ライン」では、
電話やZOOMを使用した遠隔通訳を無料で利用できます。
利用には事前のお打ち合わせが必要のため、
利用機会が発生する前にご相談をしておきましょう。
2.厚生労働省委託事業 夜間・休日ワンストップ窓口サービス
外国人患者さんへの対応に悩む、
医療機関の関係者が利用できる相談窓口です。
夜間や休日に電話相談が可能な窓口で、
2026年3月31日まで開設される予定です(2025年5月時点)。
厚生労働省では、希少言語に対応した遠隔通訳サービスも
提供しています。
こちらも前述のサービスと同様に事前登録が必要です。
3.外国人患者受入れ医療機関認証制度を受けた医療機関
「外国人患者受入れ医療機関認証制度」
とは、外国人が日本の医療サービスを
安全に受けられる体制が整っている医療機関を認証する制度です。
認証を受けた医療機関では、
多言語による診療案内や、
宗教に配慮した対応などが受けられます。
日頃から近隣の認証医療機関と
連携しておくと、
自院で受け入れが難しい外国人患者さんを
紹介する際などに役立つでしょう。
認証医療機関は、
一般社団法人日本医療教育財団の
ホームページ上で検索可能です。
独自に相談窓口や通訳サービスを
提供している地域もあるため、
各都道府県のホームページも確認しておきましょう。
参照元:厚生労働省「「外国人患者受入れ医療機関認証制度」の認証取得後の受入れ対応状況に関する調査」の結果公表
参照元:一般社団法人 日本医療教育財団「認証医療機関検索」
外国人旅行者への円滑な対応のために万全の備えを
外国人旅行者の来院時には、
言語や医療保険制度、
文化の違いなどにより、
さまざまなトラブルが起こる可能性があります。
受け入れマニュアルを作成して
院内スタッフと情報共有するなど、
外国人旅行者が安全に
医療を受けられるよう、
日頃から準備しておくことが大切です。
トラブルを未然に防ぐための準備は、
外国人旅行者だけではなく、
かかりつけ患者さんやスタッフの安心にもつながるでしょう。
看護師 K.Y