- 治療や生活指導はしっかりしているのに、
症状コントロールが上手くいかない。 - 状態が悪化し、改めて症状の変化や
生活状況を確認すると、実は
以前からその兆候があったことが判明した。
慢性疾患を治療する中で
経験するケースではないでしょうか。
今回は確認の仕方が原因で、
患者さんとズレが生じてしまう
かもしれないというお話です。
「大丈夫です」「分かりました」と言っていたのに…
トラブルが起きた時に医療従事者が
思い浮かべることは、
「大丈夫だと言っていましたよね?」
「確認しましたよね?」
と相手を責めるような言葉かもしれません。
医療従事者は患者さんの言葉を信じるしかありません。
疑いの目で接しては
良好な関係を築くことは難しいです。
また、1人の患者さんにかけられる時間には限りがあります。
そのため、できる限り
分かりやすい説明を心掛け、
患者さんが何でも話せるよう努力しておられるのではないでしょうか。
それにも関わらず、
患者さんの理解を得られなかったら、
とても残念な気持ちになるでしょう。
それと同時にこれ以上の対応は無理だ、
お手上げだとも思ってしまうかもしれません。
問題が顕在化して初めて分かるズレ
このようなズレは一般的なやり取りでは
気付きにくく、新たなトラブルが発生し、
詳細に確認して初めて明らかになります。
「あの時しっかりと理解してもらえていれば」
「あの時から行動を改善してもらえていれば」
このように考えてしまうかもしれません。
確かに症状の悪化は患者さんの自己責任なのかもしれません。
しかし本当にそうなのでしょうか?
患者さん自身もその問題を認識していない可能性があります。
嘘をついているとか、誤魔化している
という認識ではなく、医療従事者の問いに
素直に答えていたらそのような結果になっただけかもしれません。
医療従事者と患者さんの認識のズレは
誰が悪いという話ではなく、
単なるコミュニケーションエラーである可能性があります。
その質問 実は本音を聞き出せていないかもしれません
ではなぜこのようなズレが起こるのでしょうか。
そのカギは質問の方法です。
「薬は飲みましたよね?」
「説明は分かりましたか?」
などYES以外には答えにくい
閉鎖的な問いかけをしていませんか。
「不安なことはないですか?」
「分らないことはありませんか?」
など範囲が広すぎて照準を
絞りにくい問いかけはしていませんか。
診察室でよく聞く質問です。
しかし患者さんにとっては
とても答えにくい質問かもしれません。
日常生活で考えてみます。
シャンプー中の
「痒いところはありませんか?」
レストランやホテルで利用方法の説明を受けて
「分からないことはありませんか?」
このような質問をされることは良くあります。
この質問を受けて、私たちは、会話の流れからYESと答えておくのが円滑、
もしくは自分の非を露呈しないために、
ついついYESと答えたくなるかもしれません。
自分にとっては新しいことを説明された場合、
疑問が湧くくらいしっかりと理解するには時間がかかります。
そのため口から出るのは一番無難な答えになってしまうのです。
これがコミュニケーションにズレが生じる原因のひとつです。
特に高齢者は、理解力低下を
相手に気付かれまいという意識が働きがちです。
また相手に面倒をかけたくないという気持ちもあります。
そのため本音とは異なることを口にしてしまうこともあります。
患者さんが答えやすい質問とは
- YES/NOでしか答えられない質問
- 漠然としてポイントを押さえにくい質問
これらと逆の質問が答えやすいものだと言えます。
「薬はどれくらい残っていますか?」
「この3日間の夕食は何を召し上がりましたか?」
「スーパーの買い物袋を持って痛みはでませんか?」
ピンポイントで具体的な問いかけをすれば、
患者さんはそのことに答えれば良いと分かります。
例えば
「薬はまだ1週間分くらいあると思います」
と答えた場合、内服状況を把握することができます。
飲み忘れが多いと判断した場合、
「薬の飲み忘れに気づくのはいつが多いですか?」
と質問を続けることで、患者さんの内服パターンを
詳細に把握できるでしょう。
もし仕事の関係で昼食後に忘れがちなら、
1日2回の処方に変更するか検討できます。
患者さんの病状に応じて、
最も知りたい情報にフォーカスし、
具体的に質問すると良いかもしれません。
初めは煩わしさがあるかもしれませんが、
慣れてくるとある程度傾向が見えてくるでしょう。
まとめ
患者さんの情報を正確に把握し、
医療従事者と患者さんのズレを減らすことは、
とても大切なことです。
質問の方法を工夫するだけで、
患者さんの反応が変わるかもしれません。
知りたいことをピンポイントで
具体的に質問してみてください。
患者さんが答えやすい問いかけをすることで、
重要な情報を得るだけでなく、
信頼関係にもつながります。
看護師 M.K.