患者さんとの会話に取り入れたい『プチ自己開示』

「患者さんと信頼関係を築く」

診療に必要不可欠なのは言うまでもありません。
先生はどのような方法で患者さんと心の距離を縮めていますか?
傾聴、ミラーリング、アイコンタクトなど
様々な手段がありますよね。
しかしこれらは即効性がないという難点も。

そこで、
コミュニケーションのスパイスとして、
短時間でぎゅっと相手の心を掴む方法をお伝えします。
誰にでもできて、すぐに実践できる方法です。

良い患者にならなくてはという心理

医師になった人は生まれつきの能力だけでなく、
人並外れた努力や経済力などさまざまな面で特別であり、
尊敬に値する人物である、
と多くの患者さんは思っています。

「医師はすごい、完璧」というイメージです。

つまり、自分とは住む世界が違う人、と認識されており、
そういった人物と話をするのは緊張するもの。

医師は自分をきちんと診察してくれると分かっていても、
何となく近寄りがたさを感じてしまうのです。

すると、患者さんは
「先生の前ではきちんとしなくては」と思うようになります。
医師に褒めてもらうと、
患者として好ましい治療態度であるだけでなく、
それによって病気もよくなると、
太鼓判を押してもらえるからです。
学校の先生に褒められたいから
勉強を頑張るという気持ちにも似ていますね。

もちろん、内服や生活習慣の改善など、
医師の指示に従って行動することは大切です。

しかし「良い患者でいなくては」と思うがあまり、
分からないことやできなかったこと、心配なことを
相談できなかったらどうなるでしょうか。

患者さんが親近感を覚える人とは

患者さんが本心を話すことができる人というのは、
どのような人なのでしょうか?
ズバリ「自分と同じ」と思える人です。

自分と似たような人であれば、
頭ごなしに否定されることもないし、
自分を理解してくれるのでは、と考えるからです。

そこで提案したいのが『プチ自己開示』です。

医師が患者さんに対して、自分のことを
話すのはタブーだという考え方があります。

深い悩みやトラウマなど、
話を聞いた患者さんの負担になるものは
避ける必要があります。

しかし、患者さんも同じような経験をしている場合は違います。

「なかなか体重が減らなくて…運動が苦手だから」
という患者さんに対して、
「分かりますよ。私も学生時代は徒競走ビリでしたからね」
という自己開示なら患者さんが傷つくことはないでしょう。

むしろ先生が自分に心を許してくれたのだと
感じるのではないでしょうか。

筆者も小児科の先生に
「お子さんが保育園に通い始めてすぐは、
なみだ涙の別れですよね。母も子も。
私もそうでしたよ。辛くてね…」
と話してもらった時はとても救われました。

失敗や苦手なことこそカギになる

プチ自己開示のポイントは、
ちょっとした失敗や弱み、あるある談を話すことです。

誰にでもあるようなマイナスの経験を表すことで、
患者さんは
「先生も私と同じようなことがあるんだ」
と思うことができます。

「張り切ってランニングを始めたら膝を痛めた」
「片付けが苦手で家族に怒られる」
「若いころ酔っぱらって指導医に怒られた」
「疲れるとついつい子どもに八つ当たりしてしまう」

本当に些細なことですが、
患者さんは先生の意外な一面を知れるとうれしいのです。

自分が信頼されているようにも感じます。
先生が自ら失敗談を話してくれるということは、
自分もそれを口にしていいんだと思えます。

自分の弱みを見せるというのは
ビジネスシーンでも活用されています。

上司が部下にできないことを相談する、
自分が苦手な業務を誰かにお願いする。

お互いに補完し合うことでコミュニケーションが円滑になり、
組織力が向上すると考えられています。


医師と患者さんは病気の治癒や
生活の質の向上を目指すパートナーです。

しかしどうしても、
「専門的知識を持つ者」と
「治療依頼する者」という関係なので、
指示する側とされる側、といった上司と部下の関係の
ようになってしまいがちです。
プチ自己開示によって、医師が自ら弱い部分を表現することが
とても大切なのです。

まとめ

患者さんは、医師を「完璧な人」というイメージで見ています。

隙のない言動は相手を萎縮させてしまいます。

「私も失敗するのですよ」
「私にも苦手なことがあるのですよ」と
医師が自ら些細な弱みを表現する
『プチ自己開示』をしてみてはいかがでしょうか。

患者さんとの心の距離が縮まるだけでなく、
先生自身が患者さんを受容しようという気持ちにもなりますよ。

看護師M.K.

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