今だからこそ見直したい!クリニックでの災害対策

2024年の元旦に発生した能登半島地震や、
2024年8月9日に発生した神奈川県西部を
震源とする首都圏での地震を受けて、
「自院の災害対策を見直したい」と
考える方も多いでしょう。

今後日本では、首都直下地震や
南海トラフ地震などの発生が危惧されており、
いつどこで大規模災害が起こるかわかりません。
参考元:内閣府 防災情報のページ「地震災害」

そこで、今回はクリニックで
取り組みたい災害対策について、
主に地震への備えをご紹介します。

被災した医療従事者から学ぶ災害への備え

自院に必要な災害対策について考えるために、
まずは東日本大震災で被災した
医療機関の状況についてまとめました。
参考元:高知県医療機関災害対策指針

  • クリニックの体験談

東日本大震災で被災したAクリニックは、
およそ400名の患者さんがいる往診クリニックです。
被災直後は電話が通じないため、
患者さん宅を訪問して安否確認を行う必要がありました。

このような経験から、患者さんの病状や
使用している医療機器の一覧表を作成し、
優先度の高い患者さんから訪問できるよう
備えておくことを勧めています。

  • 災害拠点病院の体験談

災害拠点病院であるB病院では、
日頃から防災訓練や研修に力を入れていました。
東日本大震災での経験を通じて、
災害への対応力を養うためには、
何よりも人の育成が重要であることを実感しています。

B病院では
「無線やテントなどを全職員が使えるよう訓練しておく」
「職種に関わらずトリアージや包帯法などについて研修を行う」
といった取り組みを実施していました。
また、日頃から近隣の医療機関や医師会、
保健所、行政機関などとの関係づくりに努め、
いざというときに協力し合える関係性を構築していました。

  • 有床医療機関の体験談

海沿いにあるC病院は津波の影響で
1階部分が水没し、自家発電装置や
備蓄していた食料品を失いました。

このような経験から、浸水が想定される
地域にある医療機関では、上階に水や食料、
自家発電装置、燃料などを備えておく必要があると指摘しています。
また、家具や大型医療機器を固定したり、
引き出しをストッパー式にしたりすることで、
院内の安全を確保することができました。

同じ地震で被災した医療機関でも、
立地や規模、地域での役割によって、
必要な災害対策は異なることがわかります。

まずはここから!クリニックで必要な災害対策

クリニックの場合、入院施設や
往診の有無などによっても、
必要な備えは変わってきます。

正解はありませんが、まずは
以下5つの対策から始めてみてはいかがでしょうか。
参考元:高知県医療機関災害対策指針

1.ハザードマップの確認

まずはハザードマップを確認し、
クリニック周辺で予測される災害について把握しましょう。

地震だけではなく、洪水や火山、液状化、
津波によって、どの程度の被害が予想されるのかがわかります。
参考元:国土交通省国土地理院「ハザードマップ」

被害の程度が予測できると
「浸水に備えて備蓄品は2階に置く」
「津波が来た場合の避難先を複数見つけておく」
など、自院に必要な対応が見えてくるでしょう。

2.備蓄品の準備

飲料水や食料品、医薬品、
医療資材などの備蓄については、
職員数や来院者数を考慮して決める必要があります。
「備蓄品を置くスペースがない」という
クリニックもあるかもしれませんが、
それぞれ最低3日分は備えておくと安心です。
参考元:公益財団法人全日本病院協会「病院の防災対策」

3.施設内外の安全対策

東日本大震災では、耐震性のある建物でも
天井材や照明器具が落下したり、
設備が転倒したりして大きな被害が出ました。

家具や大きな医療機器は固定し、
ベッドやワゴンは日頃からキャスターに
ロックをかけるよう習慣化しましょう。

窓ガラスの飛散や看板の落下、
塀の倒壊といった危険性もあるため、
施設外の安全対策も必要です。
参考元:経営情報レポート「未曽有の震災から学ぶ クリニックの防災対策 」P.5

4.防災訓練の実施

災害拠点病院の体験談でもご紹介した通り、
日頃から防災訓練や研修を実施して、
スタッフのスキル向上を図ることも大切です。

さまざまな場面を想定しながら、
災害発生時の役割分担や必要な行動について、
スタッフ全員で共有しておきます。

防災訓練を実施するタイミングで、
緊急連絡網や防災マニュアル、
備蓄品の見直しを一緒に行うのも良いでしょう。
参考元:経営情報レポート「未曽有の震災から学ぶ クリニックの防災対策 」P.5~8

5.関係機関との連絡方法の確認

大規模な地震が発生した場合、
電話は使用できない可能性があります。
災害時に利用できる連絡手段について確認し、
役所や消防署など関係機関との連絡方法は
事前に決めておきましょう。

災害時に医療機関が利用できる連絡手段には、

  • 災害用伝言ダイヤル
  • NTTが提供する災害用ブロードバンド伝言板
  • 各携帯電話会社が提供する災害伝言板
  • 衛生携帯電話
  • 災害時優先電話

などがあります。

往診や透析を行っている
クリニックや有床診療所では、
患者さんや家族との連絡方法も
相談しておくと良いでしょう。
参考元:経営情報レポート「未曽有の震災から学ぶ クリニックの防災対策 」P.6、P.9~106
参考元:総務省「災害時に活用できる情報伝達手段」
参考元:総務省「災害時優先通信」

いざというときに備えて早めの災害対策を

日々の業務に追われていると
「忙しくて災害への備えまで手が回らない!」
というのが本音かもしれません。

しかし、いざというとき
自分たちを助けてくれるのは、
防災に関する知識や備蓄品といった日頃の備えです。

スタッフと協力しながら、
まずはできることから一つずつ、
始めてみてはいかがでしょうか。

看護師K.Y

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