
クレアチニン(Cre)、
尿素窒素(BUN)、
尿酸(UA)は、
外来や健診で頻繁に測定される
血液検査項目です。
これらは腎機能だけでなく、
脱水や痛風などの把握にも役立ちます。
本記事では、
各検査値の意味と臨床的活用法、
BUN /Cr比を用いた病態推定、
そしてガイドラインに沿った診療の流れを解説します。
各検査項目の臨床的意義
それぞれ検査項目の基本をまとめました。
■クレアチニン(Cre)
筋肉の代謝産物であり、
腎糸球体濾過機能(GFR)を反映します。
基準値は男女で異なり、
筋肉量にも影響されます。
慢性腎不全(CKD)における
腎機能の指標として有用です。
<参考基準値>
男性:約0.6~1.1 mg/dL
女性:約0.5~0.9 mg/dL
<症状の例>
高値:腎不全、心不全、尿毒症、尿路閉塞
低値:筋ジストロフィー、尿崩症
■尿素窒素(BUN)
蛋白質代謝の最終産物であり、
主に腎臓から排泄されます。
腎排泄能や水分状態、
蛋白摂取量などを反映する指標です。
<参考基準値>
成人男女共通:約 9~21 mg/dL
<症状の例>
高値:心不全、腎不全、糖尿病、消化管出血、高熱、嘔吐、下痢、脱水、高蛋白食、悪性腫瘍
低値:妊娠、重症肝障害、多尿、低蛋白食
■尿酸(UA)
プリン体代謝の最終産物で、
約2/3が腎排泄、残りは消化管から排泄されます。
日本痛風・尿酸核酸学会のガイドラインでは
血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態を
「高尿酸血症」と定義し、
合併症予防を目的に
治療介入が推奨されています。
高尿酸血症が持続すると、
痛風や腎障害、心血管リスクの上昇と関連します。
特に痛風は、関節に尿酸塩結晶が
できることで激しい痛みの原因となります。
<参考基準値>
男性:約3.0~7.0 mg/dL
女性:約 2.0~6.0 mg/dL
<症状の例>
高値:腎不全、特発性代謝異常、細胞破壊性高尿酸血症、大量飲酒、過栄養
低値:重症肝障害、妊娠
BUN/Cr比で読み解く腎外性因子
BUNは腎機能を評価する項目ですが、
腎血流の変化に敏感であり、
腎外性要因によって血清クレアチニンよりも
大きく変動しやすい特徴があります。
BUN/Cr比の基準は10ですが、
10よりも大きな上昇や低下が見られた場合、
腎外性因子の関与が疑われます。
| BUN/Cr比 | 主な腎外性因子 |
| >10~20 |
|
| <10 | 妊娠、多尿(尿崩症、マンニトール利尿など)、低蛋白食、重症肝障害 など |
例えば、BUNが上昇し
Creが軽度上昇または正常なら
脱水が疑われます。
外来では、夏季や発熱時、
高齢者の経口摂取不足でよく見られます。
専門医への紹介タイミングを逃さないための腎機能評価
血液検査でCre、BUN、UAなどに
異常が認められ、
腎機能障害が疑われる場合には、
より詳しい腎機能評価が必要です。
腎機能評価では、
Creと年齢・性別から算出する
推算糸球体濾過量(eGFR)と、
尿検査でアルブミン尿/蛋白尿や
血尿の有無を確認します。
これを、日本腎臓学会の
「CKD重症度分類」に当てはめて
CKDステージを判定します。
CKD重症度分類は、
蛋白尿区分(A1~A3)と
GFR区分(G1~G5)を
組み合わせたリスク分類です。
CKDステージG1~G3aは基本的に
かかりつけ医での治療となります。
一方で、血尿を伴う場合や、
G3b以降の症例では、
腎臓内科などの専門医への紹介・連携が必要となります。
CKD診療ガイド2024には、
CKDステージによって
腎臓専門医への紹介基準が明確に示されています。
専門医への紹介タイミングが
適切なものとなるよう、
今一度、表をチェックしておくと安心です。
外来で腎機能・脱水・痛風を見逃さないために
クレアチニン(Cre)、
尿素窒素(BUN)、
尿酸(UA)は
日常診療で頻繁に確認する項目ですが、
各数値のチェックに留まらず、
BUN/Cr比や関連する検査値からの
病態推定が重要です。
腎機能低下が疑われる場合には、
eGFRや尿検査の結果からCKD重症度を把握し、
必要に応じて早期に専門医へ紹介することが、
患者さんの予後改善につながります。
看護師S.H










