『2026年度診療報酬改定』生活習慣病管理料と充実管理加算で変わるクリニック経営【税理士法人監修】

2026年度(令和8年度)診療報酬改定は、
これまでの仕組み
「要件を満たせば算定できる評価」から、
「診療の質で評価される仕組み」
へと大きく変わりました。

特に内科クリニックにとって重要なのが、
「生活習慣病管理料」と「充実管理加算」です。

今回の改定は一言でいうと、
「検査を行い、
データで管理し、
結果を出しているか」
が問われる制度になった点にあります。

そこで今回は、クリニック経営に
大きく影響する内容を詳しく解説します。

生活習慣病管理料は「検査前提の診療」へ

2026年度の改定で
最も実務に影響が大きいのは、
「生活習慣病管理料(I)」の新設された内容です。

ポイントはシンプルです。
『原則、少なくとも6か月に1回以上は必要な血液検査等を行うこと』

これまでのような
長期処方中心のフォローだけでは、
算定継続が難しくなる方向性が明確になりました。
一方で、特定健診や事業者健診などの
結果を活用できる場合は、
自院で再検査しなくても問題ありません。

重要なのは検査をしていることではなく
結果を把握・管理していることです。
また、「療養計画書」は
患者さんの署名が不要となり、
現場の負担は軽減されています。

この背景には、政府が推進する
「医療DX」や「外来業務の効率化」があります。
診察室での患者さんとの対面時間を
「書面へのサイン」の事務作業ではなく、
「より質の高い療養指導」に充てるべき
という考え方が反映されています。

紹介が“収益になる”時代へ(医療機関連携強化加算)

今回新設された加算は以下2つです。

  • 眼科医療機関連携強化加算:60点/年1回
  • 歯科医療機関連携強化加算:60点/年1回

糖尿病の患者さんなどを対象に、
眼科・歯科へ紹介し、
連携を行った場合に算定可能です。
ここでのポイントは、
単なる紹介にとどまらず、
受診状況の把握や情報共有を含めた
実効性のある連携が求められる点です。

<実効性のある連携の例>
  • 糖尿病患者を眼科へ紹介し、眼底検査結果の情報提供を受けて今後の治療方針に反映する
  • 歯科へ紹介し、歯周病の治療状況について情報共有を受ける
  • 紹介後の受診状況を確認し、継続的な受診を促す

最大の変更点「充実管理加算」(点数が変動する時代)

従来の「外来データ提出加算」は、
データを不備なく提出することで
一律に評価を受けられました。
しかし、今回の改訂で新設された
「充実管理加算」は、
診療の“成績”によって
3段階に変動する”相対評価”へと移行しました。

自院の”成績”で点数が決まる仕組みです。

  • 充実管理加算1:30点(全国の上位20%)
  • 充実管理加算2:20点(全国の上位50%)
  • 充実管理加算3:10点(データを提出していれば算定可)
<収益インパクトの例>

充実管理加算1「30点」と
充実管理加算3「10点」では
1回あたり「20点(200円)」の差が生じます。
月1回算定する場合の対象患者数による収益差は以下の通りです。

対象患者数(月間) 年間収益差
100名 約24万円
300名 約72万円
500名 約120万円

患者数が多いクリニックほど収益への影響は大きくなります。
充実管理加算は単なる届出項目ではなく、
クリニック経営にも影響する評価項目といえます。

■ 既存の医療機関(令和8年3月31日時点で届出を行っている医療機関)

これまで外来データ提出加算を
算定していた場合、経過措置として
当面は充実管理加算1(30点)を算定可能です。
つまり、改定直後から収益は維持しやすい設計です。

■ 新規で始める場合

今回の改定から新たに
充実管理加算を算定する場合は、
既存医療機関とは取扱いが大きく異なります。

令和8年度の基本的な流れは以下のとおりです。
・6月~7月:データ作成
・8月:実績データ提出
・届出:所定の期限までに提出
・10月:算定開始

新規参入の医療機関については、
令和8年10月から令和10年3月まで、
充実管理加算3(10点)のみ算定可能とされています。
つまり、新規で算定を開始した場合、
約1年半は10点で固定される仕組みです。

令和10年4月以降は、
令和8年度に提出した実績データに基づき
評価が行われ、評価結果に応じて
10点・20点・30点のいずれかが適用されます。

この充実管理加算は、
「すぐに高得点が取れる加算」ではなく
「実績を積み上げて評価される加算」
という性格を持っています。
また、点数が後から決まる
(=収益が事前に読みづらい)
という点も、運用上の重要なポイントです。

院長が今すぐやるべき3つの対応

今回の改定は複雑に見えますが、対応はシンプルです。

  1. 検査体制の構築
    ✓ 6か月に1回の検査を確実に実施できる仕組みを作る
    ✓ 健診データも積極的に取り込み、効率的に運用する
  2. 医療機関連携の標準化
    ✓ 眼科・歯科との紹介ルールを整備し、連携を仕組み化する
  3. データを意識した診療体制への転換(最重要)
    ✓ HbA1cや受診継続率などの指標を意識した診療を行う

地域包括診療料や地域包括診療加算も
見直されていますが、
データ提出関連の評価は10点程度にとどまります。
そのため、生活習慣病管理料と
充実管理加算(最大30点)を
軸にするかどうかが、収益上の分かれ目になります。

最後に、今回の改定は、
「診ているだけの外来」から
「管理している外来」への転換
を求めるものです。

特に「充実管理加算」は、
今後の改定でも拡大される可能性が高く、
早期対応した医療機関ほど有利になります。
まずは、
①検査 ②データ ③連携
この3点を整えることが、
今後のクリニック経営の分かれ道となるでしょう。

執筆者

日本クレアス税理士法人
中川 義敬 税理士
 (執行役員、近畿税理士会所属)
<経歴>
2007年 税理士登録
2009年 日本クレアス税理士法人 入社
2019年 同 大阪本部本部長 就任
 東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等に従事。医院の新規開業支援、会計税務、医業承継・相続対策など、個人医院から大病院まで医療分野でのサポートに高い経験あり。

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