『2026年診療報酬改定』全診療科共通!ベースアップ評価料とDXで“収益差”がつく時代へ【税理士法人監修】

クリニックを経営される
すべての院長先生にとって、
2026年(令和8年)の診療報酬改定は、
今後の経営基盤を左右する極めて重要な
ターニングポイントとなります。

今回の改定は、本体部分でプラス3.09%
という大幅な引き上げが行われましたが、
その内訳は「賃上げ(+1.70%)」
「物価高騰(+0.76%)」
「医療DXの推進」といった
明確な政策目的に紐づいています。

単に「点数が上がる」のを待つのではなく、
改定の趣旨を経営戦略に活かし、
体制整備に取り組むかどうかが、
今後の収益に大きな差をもたらします。
本記事では、これからの安定経営に向けて
クリニックが取り組むべき具体的な戦略を解説します。

「賃上げ」を経営の武器に - ベースアップ評価料の戦略的取得 -

今回の改定の大きな柱は、
医療従事者の処遇改善です。
特に「ベースアップ評価料」は、
令和8年度から令和9年度にかけて
段階的に評価が引き上げられる仕組みとなっています。

賃上げ対象の拡大を活かす

今回の改定では、
賃上げの対象に事務スタッフや
40歳未満の勤務医師・薬剤師も
含まれることとなりました(経営者・役員は除く)。

スタッフの離職防止や
人材確保の観点からも、
この評価料を活用し、クリニック全体の
給与水準を底上げすることが、
中長期的な安定経営につながります。

継続的な賃上げが点数差に直結

最大のポイントは、
「継続的に賃上げを実施しているか否か」
で算定点数に大きな差が生じる点です。
継続的賃上げを算定可能なご施設は、
原則として、令和8年3月31日時点で
ベースアップ評価料の届出を行っていることが条件となります。

※なお、令和8年5月までに届け出ている医療機関であっても、ベースアップ評価料を令和8年6月から算定するためには、令和8年6月1日までに改めて届出の提出が必要となります。届出漏れには十分ご注意ください。

(初診時)ベースアップ評価料Ⅰ

令和8年6月〜令和9年5月 令和9年6月〜

令和8年6月〜新たに賃上げを行う施設

17点

34点

令和8年6月〜継続的賃上げ実施施設

23点

40点

物価高騰への対応 - 新設「物価対応料」の確実な算定 -

光熱費や医薬品・医療材料の
高騰に対応するため、
基本診療料に上乗せする形で
「物価対応料」が新設されました。

算定項目

令和8年度(2026年)

令和9年度(2027年)

外来・在宅物価対応料(初診)

2点

4点

外来・在宅物価対応料(再診)

2点

4点

訪問診療料(物価対応料)

3点

6点

令和9年度は令和8年度の約2倍の点数設定となっています。
本項目は原則としてすべての患者さんに
算定可能なため、取りこぼしのない運用が重要です。

また、患者さんへの説明としては
「厚生労働省による全国一律の制度改定である」
旨をあらかじめ説明しておくとスムーズです。

医療DXへの対応 -「電子的診療情報連携体制整備加算」の実務ポイント -

従来の医療DX推進体制整備加算が見直され
新たに「電子的診療情報連携体制整備加算」が設けられました。

本加算は1〜3の3段階に区分され、
それぞれ難易度が大きく異なります。

電子的診療情報連携体制整備加算の
算定要件は、以下10項目の施設基準で
どの項目に対応しているのかが重要です。

<施設基準>
  1. オンライン請求を行っていること。
  2. 診療報酬明細書を患者に無償で交付していること。
  3. オンライン資格確認を行う体制を有していること。
  4. 医師又は歯科医師が、オンライン資格確認等システムにおいて、閲覧又は活用できる体制を有していること。
  5. マイナ保険証利用率が、30%以上であること。
  6. マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる体制を有していること。
  7. 明細書発行に関する事項、医療DX推進の体制に関する事項等について、当該保険医療機関の見やすい場所及びウェブサイトに掲載していること。
  8. 電子処方箋を発行する体制又は調剤した薬剤に関する情報を電子処方箋システムに登録する体制を有していること。
  9. 以下のアからウの全て又はエを満たす電子カルテを有していること。
    • 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した体制であること。
    • 電子処方箋管理サービスとの接続インターフェースを有していること。
    • 電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェースを有していること。
    • 厚生労働省が認証する電子カルテ製品であること。
  10. アを満たす又はイ及びウを満たすこと。
    • 国等が提供する電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報等を活用する体制を有していること。
    • 地域の複数の医療機関間で検査結果や画像情報等を含む診療情報を共有又は閲覧できるネットワークであって、以下の(イ)から(ハ)の全てを満たすものを活用する体制を有していること。
      • (イ)当該ネットワークに参加している保険医療機関の数が10以上であり、そのうち診療情報を開示している病院の数が2以上であること。
      • (ロ)登録患者数が1,000人以上であること又は新規登録患者数が年間100人以上であること。
      • (ハ)当該ネットワークの運営主体が連携している医療機関名及び登録患者数をウェブサイトで公表していること。
    • 以下の(イ)及び(ロ)を満たすこと。
      • (イ)診療情報提供料(Ⅰ)の検査・画像情報提供加算又は電子的診療情報評価料の施設基準を届け出ていること。
      • (ロ)当該ネットワークに参加していること及び実際に患者の情報を共有している実績のある保険医療機関の名称について、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること。

加算1はなぜ難しいのか

最高評価である加算1(15点)は、
10項目すべての要件充足が必要です。
特に以下の項目が高いハードルとなります。

  • 施設基準(8):電子処方箋の発行体制
  • 施設基準(10):電子カルテ情報共有サービスの活用

後者はベンダー対応や地域連携体制が
前提となるため、現時点では実現の難易度が高い状況です。

加算2・3は現実的な選択肢

一方で、加算2および加算3は
多くのクリニックにとって現実的に取得可能です。

  • 加算3(4点)
    施設基準(1)〜(7)を満たせば算定可能。
  • 加算2(9点)
    加算3の要件に加え、以下のいずれかを満たすことで算定可能
    (電子処方箋/認定電子カルテ/情報共有サービス)

区分

点数

必要な施設基準

難易度と戦略

加算1

15点

(1)〜(10)の全て

【難】 全てのDX設備が必要。

加算2

9点

(1)〜(7) + (8)〜(10)のいずれか

【中】 電子処方箋の導入等で狙える。

加算3

4点

(1)〜(7)の全て

【易】 基礎的DX対応のみ。

戦略的ステップアップ:電子処方箋と補助金の活用

電子的診療情報連携体制整備加算2
(9点)取得への最短ルートは、
電子処方箋の導入です。
国はその導入を後押しするため、
補助制度を設けています。

<診療所向け補助金(例)>

  • 初期導入:最大27.1万円(事業額の1/2)
  • 院内処方機能を含む導入:最大35.9万円
  • 追加機能導入:最大10.8万円

<補助金の期限に注意>
補助対象となるには、令和8年9月30日までに導入完了が必要です。
この期限内に対応することで、
コストを抑えつつ
「加算3(4点)→加算2(9点)」への
ステップアップが可能となります。

参照元:医療機関向等向け総合ポータルサイト「令和7年10月1日以降に電子処方箋管理サービスを導入した医療機関等における電子処方箋補助金について」

まとめ:今回の改定で押さえるべきポイント

2026年診療報酬改定は、
「対応している医療機関」と
「対応していない医療機関」で、
収益差がはっきりと出る内容となっています。
特に重要なのは以下の2点です。

  1. ベースアップ評価料は“実質必須”
    任意の加算ではありますが、未取得や賃上げ未対応の場合、算定点数に大きな差が生じます。令和9年度には点数も引き上げられるため、早期の届出と体制整備が重要です。
  2. 施設基準の届出漏れ=機会損失
    各種加算は届出を行わなければ算定できません。特に6月算定分は5月中の届出が必要となるため、事前の整理と対応が不可欠です。

今回の改定は「やるかどうか」ではなく、
どれだけ早く確実に対応できるかがポイントです。
必要な届出と体制整備を進め、
確実に収益へつなげていきましょう。

執筆者

日本クレアス税理士法人
中川 義敬 税理士
 (執行役員、近畿税理士会所属)
<経歴>
2007年 税理士登録
2009年 日本クレアス税理士法人 入社
2019年 同 大阪本部本部長 就任
 東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等に従事。医院の新規開業支援、会計税務、医業承継・相続対策など、個人医院から大病院まで医療分野でのサポートに高い経験あり。

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