医療連携のポイントvol.1「かかりつけ医(プライマリケア医)から専門医へ紹介するタイミングを見極める

日々の外来において、
「これは専門の先生に、お願いした方がいいかな」
というシーンに日常的に遭遇します。

かかりつけ医(プライマリケア医)から
専門医への紹介(医療連携)は、
患者さんを適切な医療へとつなぐ
重要な役割を担っており、
紹介のタイミングと質が、
患者さんの予後に直結することも少なくありません。

そこで今回は、日常診療の中で実感する
「紹介するうえでの重要なポイント」を
2つの記事でご紹介します。
第1弾となる本記事では、
ポイント①「紹介のタイミング」を、
症例を交えて考えてみたいと思います。


<coming soon>
第2弾では以下3つを解説!
 ✓ポイント②「診療情報提供書(紹介状)の質」
 ✓ポイント③「患者さんへの説明」
 ✓ポイント④「地域連携」
 ※公開までしばらくお待ちください

かかりつけ医(プライマリケア医)から専門医への紹介が重要である理由

急性疾患の中には心筋梗塞や脳梗塞など、
早期介入により大きく転帰が変わるケースが少なくありません。
また、見逃しや治療の遅れにより、
急速に状態が悪化するケースもあり、
判断のわずかな差が、その後の経過を
大きく分けることがあります。

筆者はこれまで、
専門医として”紹介を受ける側”と
かかりつけ医として”紹介する側”の
両方を経験してきました。

その中で強く感じるのは、
紹介は単なる「依頼」ではなく、
診断や治療に直結する、
「命をつなぐ行為である」ということです。
どのタイミングで、どのような情報を添えて送り出すか。
その積み重ねが、
診断のスピードや治療の質、
さらには患者さんの予後にも影響します。

紹介のタイミングを見極める 1「違和感」

紹介の良し悪しをもっとも左右するのは、
やはりタイミングです。

患者さんの紹介における遅れは、
病気によっては、ときに致命的な結果を招きます。
一方で、過度に早い紹介は、
患者さんの負担となり、過剰医療となるケースも否めません。
このバランスが難しいところですが、
実臨床では「違和感」を大切にすることが
非常に重要だと感じています。

<筆者の体験Ⅰ>

印象的な症例のひとつに、
70代男性で、労作時の軽い息切れを主訴に
紹介されたケースがあります。

身体所見上は明らかな異常は乏しく、
血圧や脈拍も安定、SpO₂も正常範囲内でした。
しかし、かかりつけ医は
「いつもより動作がゆっくり」
「会話がゆっくりで、会話の間が微妙に長い」
という、普段とは異なる違和感を覚え、
BNP測定と胸部X線を施行。
軽度の心拡大と胸水貯留、
BNP上昇を認めたため紹介となりました。

結果は、これまで未診断だった
心不全の増悪であり、早期介入により
重症化せず外来治療で安定化し、
入院を回避できました。

外来治療でコントロール可能な
早い段階で介入でき、まさに
「このタイミングで来ていただいてよかった」と感じた症例です。

<筆者の体験Ⅱ>

一方、別の症例では、
糖尿病歴が長い80代女性の
胸部の違和感について、
症状が軽微なので経過観察後に
紹介された患者さんがいます。

2週間以上経過を見た結果、
症状が増悪した状態で紹介となり、
紹介時には、不安定狭心症に進展していました。

結果的に緊急カテーテル治療を要し、
治療も長期化した末、
ADLが大きく低下した状態で退院となりました。

高齢、糖尿病などの影響で
胸部症状が出にくかったことも
診断が遅れてしまった一因でしたが、
「もう少し早く紹介があれば」という思いが残る症例でした。

こうした経験から、
かかりつけ医の「違和感」は、
極めて重要な診断の手がかりであると考えています。

心血管疾患をはじめ、
緊急性が高い疾患の中には、
数値や画像、強い症状だけでなく、
患者さんの微細な変化が
徴候として現れることもあります。

その“いつもと違う”を拾えるのは、
患者さんの普段の状態を知っており、
継続的に診ているかかりつけ医ならではの強みです。

紹介のタイミングを見極める 2「緊急性」

紹介のタイミングを考えるうえで、
最初に判断すべきなのは、
「通常の外来紹介でよいのか」
「緊急性が高い状態なのか」という点です。

基本的に次のような所見がある場合には、
外来紹介ではなく、速やかな救急搬送を検討すべき状態と言えます。

  • 持続する強い痛み(胸痛や腹痛、頭痛など)、冷汗や吐き気を伴うこともある
  • 急激に悪化する呼吸困難(起座呼吸、会話困難、強い喘鳴など)
  • 失神やその前駆症状
  • 著明な血圧低下や頻脈・徐脈
  • チアノーゼや意識レベルの異常

こうした所見を認める場合は、
「紹介状を書いて後日受診」ではなく、
その場での緊急の対応が求められ、
迅速な救急紹介が必要です。
迷う場面でも、「念のため救急要請」
という判断が患者さんの安全につながることは少なくありません。

筆者のクリニックでは実際に、
胸部不快感を訴えて来院した患者さんが
診察中に症状が増悪したため、
速やかに心電図を評価し、
心筋梗塞の疑いがあったため、
即座に救急搬送したケースがあります。

紹介先で急性冠症候群と診断され、
早期治療につながりました。

このような場面では、
「様子を見る」という選択肢で
治療を遅らせることがあってはいけません。

紹介のタイミングを見極める 3「院内検査」

タイミングの判断を支えるものとして、
院内検査の存在も大きいと感じています。

  • 心電図
  • 血液検査(CRPや肝・腎機能、白血球数などの血算、BNPまたはNT-proBNP、トロポニンTなど)
  • 胸部X線
  • 感染症の迅速抗原検査
  • エコー検査(心臓超音波検査や腹部超音波検査)

これらの検査を院内で実施でき、
結果をその場で確認できるだけで、
「紹介するかどうか」の判断はかなり明確になります。

特に急を要する循環器疾患などでは、
はっきり異常とは言えない
“グレーゾーン”が多く、
そういったときには、検査結果が
背中を押してくれることがあります。

例えば、「心電図で軽度のST変化を認めるが症状は軽微」というケース。
院内検査でトロポニン上昇や
心エコーの壁運動異常などの所見があれば、
紹介の必要性がぐっと高まります。
検査結果の小さな異常をきっかけにして、
適切な紹介につながることが少なくありません。

<院内検査装置のご紹介>

迷ったときは”とりあえず相談”

迷ったときは、専門の医師や救急医などに
「とりあえず相談する」という姿勢も大切です。
これは決して消極的な姿勢ではなく、
むしろ積極的な医療連携です。
相談・紹介というと
「完成された状態で送るもの」
という印象を持たれることもありますが、
必ずしもそうではありません。

悩ましい場合には、
患者さんに院内でお待ちいただき、
紹介したい病院の専門医の先生に連絡し、
「このような患者さんが来ているのですが、本日診察いただくことは可能でしょうか。それとも明日や後日の外来でも大丈夫そうでしょうか。
といった形で相談してみることをおすすめします。

紹介を受ける側にとっても、
あらかじめ病状の確認ができ、
受診のタイミングも調整できるため、
win-winな方法です。

迷ったときは、ぜひ実践してみてください。
電話1本の相談が、患者さんの転帰を変えるかもしれません。

執筆・監修医師

小鷹 悠二 (おだか ゆうじ)
所属:おだかクリニック 副院長
資格:日本循環器学会専門医、総合内科専門医、医学博士、産業医
 総合病院・大学病院での勤務を経て、2018年よりおだかクリニックの副院長として診療・経営にあたる。専門の循環器疾患(虚血性心疾患、心不全、不整脈など)はもちろんのこと、高血圧や高脂血症、糖尿病等の生活習慣病や内科疾患全般の診療に従事。現在は、産業医や学校医など地域の医療を支える活動や、医療コンサルト、ライティング業務など幅広く活動している。

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