
高齢化の進行や医療ニーズの多様化に伴い、
「プライマリ・ケア医」の役割が注目されています。
予防から治療、リハビリテーションまで
幅広い役割を担うのがプライマリ・ケア医であり、
特に地域に根差したクリニックには、
その役割が期待されています。
今回は、プライマリ・ケア医に
求められるスキルと、
現場でできる実践のヒントについて解説します。
プライマリ・ケア医とは何か?
日本は高齢化が進んでおり、
加齢による影響を受けながら
複数の疾患を抱える人が増えています。
たとえば、独居の認知症患者さんが、
糖尿病から慢性腎不全へと移行し、
透析の必要が出てきた場合、
内科だけでなく、腎臓専門医との連携や
透析導入後の管理、
生活支援や社会的孤立への対応も
視野に入れた支援が必要です。
このようなケースでは、
患者さんの「病気」だけを診るのではなく
「生活」も見ていく視点や
関係機関との連携が求められます。
今後ますます多様化する地域医療の
ニーズに対応していくためには、
特定の年齢や診療科、領域に限らず、
患者さんを全人的に診ることのできる
プライマリ・ケア医の存在が不可欠となります。
プライマリ・ケア医に求められる3つのスキル
プライマリ・ケア医には、下記の3つのスキルが求められます。
- 総合的に診る力
診療科・臓器別の専門医とは異なり、プライマリ・ケア医には患者さんの「全体像」をとらえる力が求められます。たとえば「腹痛」で来院した患者さんに対しては、内科的疾患だけでなく、他科疾患との鑑別や、心理的ストレス、家庭環境の関与まで視野に入れた対応が必要です。 - 継続的に支える姿勢
プライマリ・ケア医は、初期だけでなく長期的な健康管理も担います。慢性疾患や高齢者のケアでは、数か月、数年単位での支援が求められます。毎回の受診で信頼関係を築きながら、小さな変化に気づける「継続性」が、予防と早期対応の要となります。 - 他職種・専門医との連携力
専門的な治療が必要な場合は、適切なタイミングで専門医につなげる判断力が不可欠です。また、訪問看護師、薬剤師、ケアマネジャーなど地域の多職種と連携しながら患者を支える「ハブ」としての役割も重要です。
開業医ができる3つの実践ヒント
開業医によるプライマリ・ケア実践のヒントを3つご紹介します。
① 患者さんの背景に関心を持つ問診を意識する
生活環境、職業、家庭の状況といった
社会的背景にも目を向け、
単なる病状の把握にとどまらない問診を
心がけることが大切です。
特に高齢者や独居の患者さん、
小児の保護者などでは、
疾病以外の問題が健康状態に影響するケースも多くあります。
また、「来週、孫の発表会」
「夫婦で旅行予定」など、
患者さんとの何気ない会話をカルテに残し、
次回の問診で話題にすることで、
患者さんの心理的距離がぐっと縮まるでしょう。
② 患者さんの通いやすさ・相談しやすさを工夫する
地域の「かかりつけ医」として、通いやすさは大きな要素です。
ユーザビリティに優れたオンライン問診や
予約システムの整備、土曜日の診療など、
患者さんのライフスタイルに合わせた
体制づくりが求められます。
「些細なことでも相談していい」
と思ってもらえる関係性の構築が、
信頼を深める第一歩となります。
③ プライマリ・ケア連合学会の研修制度を活用する
プライマリ・ケアについて学べる機会として、
日本プライマリ・ケア連合学会と
全日本病院協会が共同で運営する
「総合医育成プログラム」という研修制度があります。
現在は国のリカレント教育推進事業(ReGeneral)
としても拡充されており、
プライマリ・ケアに必要な能力を
診療科や領域をまたいで体系的に学ぶことができます。
講義は土日祝にオンラインで受講でき、
eラーニングシステムを用いた自己学習もできます。
そして、修了者には、
「プライマリ・ケア認定医」の
筆記試験免除が認められる特典もあり、
スキルと資格修得の早道となるでしょう。
「選ばれるかかりつけ医」になるために
患者さんを全人的に診療し、
患者さんの生活に寄り添い、
多職種との連携を意識した視点を持つ。
今後は、このようなスキルが
より一層、プライマリ・ケア医に必要とされます。
プライマリ・ケアの視点を
自院の診療に取り入れることは、
患者さんとの関係だけでなく、
医療従事者同士の連携にも良い変化をもたらすでしょう。
今後は、患者数に対する専門医が不足し、
プライマリ・ケア医の需要はますます増していきます。
制度やツールを活用しながら、
自院に合ったプライマリ・ケアを目指してみませんか。
看護師 S.H




