
高血圧患者さんを診療する
一般内科・クリニックでは、
心房細動(AF:Atrial Fibrillation)を
いかに早く拾い上げるかが重要です。
心房細動は加齢とともに有病率が上昇し、
脳卒中や心不全の重要なリスク因子となります。
また、高血圧は心房細動の
発症リスクを高めるだけでなく、
脳梗塞や心不全の発症・増悪にも
深く関与しています。
そのため、60歳以上の高血圧患者さんは、
心房細動を常に念頭に置いた診療が求められます。
一方で、心房細動の
約3~4割は無症候性とされ、
自覚症状のみから診断することは
容易ではありません。
しかし、高血圧外来では、
検脈や血圧測定時の脈拍確認、
家庭血圧計の脈不整表示など、
心房細動を疑うきっかけは少なくありません。
こうした小さなサインを見逃さず、
適切な検査につなげることが、
脳梗塞や心不全の予防につながります。
本記事では、高血圧診療で
心房細動を意識すべき理由から、
日常診療で心房細動を疑うポイント、
12誘導心電図や携帯型・貼付型心電計
などを用いた初期評価の進め方、
専門医へ紹介すべきタイミングまで、
かかりつけ医が押さえておきたい
実践的なポイントを解説します。
なぜ高血圧診療で心房細動を意識すべきなのか
高血圧と心房細動は密接に関連しており、
慢性疾患を診るクリニックでも
日常診療で意識したい循環器疾患です。
高血圧が持続すると、
左室肥大や拡張障害を介して
左房への負荷が増大し、
左房拡大をはじめとする
構造的・電気的リモデリングが進行します。
その結果、心房細動が
発症・持続しやすい状態となります。
さらに、心房細動を合併すると
脳梗塞や心不全のリスクが高まり、
とくに60歳以上の高血圧患者さんでは注意が必要です。
一方で、心房細動は無症状のことも少なくありません。
診察時に脈の不整を認めた場合は、
未診断の心房細動を疑う重要な手がかりとなります。
また、心房細動は心原性脳塞栓症の
原因となるだけでなく、
心房収縮の消失や頻脈、
不規則な心拍によって心拍出量が低下し、
心不全症状を発症・増悪させることがあります。
息切れ、下腿浮腫、易疲労感などの
症状を認める場合は、血圧管理だけでなく
心房細動や心不全の合併も念頭に置いた評価が重要です。
高血圧外来で心房細動を疑う3つのポイント
心房細動は「動悸」を主訴に
受診するとは限らず、無症状のまま
経過することも少なくありません。
そのため、高血圧で定期通院している
60歳以上の患者さんでは、
症状の有無にかかわらず、
診察時の検脈や血圧測定時の脈拍評価を
習慣化することが、心房細動の早期発見につながります。
ここでは、日常診療で注目したい
3つのポイントをご紹介します。
1. 脈の不整を認めるとき
心房細動では絶対的不整脈を示し、
血圧測定時や診察時の検脈をきっかけに
気づくことがあります。
また、高血圧患者さんでは、
家庭血圧計で不規則脈波表示が
繰り返し認められる場合にも心房細動を疑います。
その際は、12誘導心電図で確認し、
発作性心房細動が疑われる場合には
ホルター心電図などの追加検査を検討します。
2. 動悸、息切れ、易疲労感があるとき
心房細動では動悸に加え、息切れ、
易疲労感、全身倦怠感などの
非特異的な症状を契機に
発見されることも少なくありません。
以上の症状は心不全や貧血、呼吸器疾患、
甲状腺機能異常などでもみられるため、
高血圧患者さんが訴えた場合には、
心房細動の有無を確認するとともに、
背景疾患も含めて評価することが重要です。
3. 血圧測定値のばらつきが目立つとき
心房細動ではRR間隔が不規則となるため、
1回拍出量が拍ごとに変動し、
血圧測定値にばらつきが生じることがあります。
これまで安定していた血圧が
急に測定しにくくなった場合や、
測定ごとの差が大きくなった場合には、
測定条件や服薬状況を確認するとともに、
脈の不整の有無を確認しましょう。
心房細動の確定診断までの流れ
高血圧外来で脈の不整や心房細動を
疑う症状を認めた場合は、
心電図で心房細動の有無を確認します。
しかし、発作性心房細動では
受診時には洞調律へ戻ることもあり、
12誘導心電図だけでは診断できない場合があります。
すぐに12誘導心電図を実施できない場合や
簡便にリズムを確認したい場合には、
携帯型心電計や心電計付き血圧計
(単誘導心電図)を活用することも選択肢の1つです。
医療機器として承認された携帯型心電計は
記録された心電図波形を医師が確認し、
心房細動を認めれば確定診断が可能です。
また、症状出現時に
患者さん自身が記録できるため、
発作性心房細動の診断にも有用です。
また、保険適用を受けた
携帯型発作時心電図記憶伝達装置を
外来患者さんに使用した場合は、
「D208 心電図検査」の「3 携帯型発作時心電図記憶伝達装置使用心電図検査」
として、1回の診療につき150点
(記録回数にかかわらず)の算定が可能です。
ただし、この点数は保険適用を受けた
医療機器を使用した場合に限られ、
一部のスマートウォッチの心電図機能は
「家庭用心電計プログラム」として
医療機器認証を受けているものの、
対象外であることに注意が必要です。
一方、受診時に洞調律であっても
発作性心房細動が強く疑われる場合には、
ホルター心電図や
貼付型長時間心電計による
追加評価を検討します。
近年は、薄型・軽量でコードレスの
貼付型心電計が利用可能となり、
日常生活を維持したまま数日間の
連続記録が可能な機器もあります。
従来の24時間ホルター心電図では
捉えられなかった
発作性・無症候性心房細動の
検出率向上が期待されます。
また、ホルター心電図や張付型心電計は、
検査終了後に患者さんが機器を
郵送で返却できるものや、
解析を外部で実施してレポートとして
医療機関へ返送されるサービスもあり、
患者さんの通院の負担軽減や、
医療機関の運用負担軽減につながることが期待されます※。
心房細動が確定した後は、
脳梗塞リスクや心不全の有無を評価し、
抗凝固療法の適応や循環器専門医への紹介を検討します。
※該当する機器やサービスや詳細は、ホルター心電図や張付型心電計の各メーカーへお問い合わせください
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心房細動を認めた場合の専門医(病院)紹介の考え方
最後に、心房細動が確認された後、
救急対応が必要か、
循環器専門医への紹介が望ましいか、
あるいはかかりつけ医で
経過観察・治療を継続できるかを
判断するポイントについて解説します。
緊急紹介が必要なケースを見逃さない
以下のような場合は、速やかな救急対応または病院紹介が必要です。
- 血行動態が不安定な場合
- 急性心不全を伴う場合
- 急性冠症候群や脳梗塞が疑われる場合
心房細動を認めた際、血圧低下、失神、
意識障害、著明な頻脈など
血行動態が不安定な場合は緊急対応が必要です。
また、安静時呼吸困難、SpO2低下、
肺うっ血、浮腫増悪など
急性心不全を示唆する所見や、
胸痛、片麻痺、構音障害、失語など
急性冠症候群や脳梗塞が疑われる場合も、
速やかな病院紹介を要します。
専門医への紹介を検討したいケース
一方、血行動態が安定していても、
次のような症例では循環器専門医への紹介を検討します。
- 初めて診断された心房細動
- 抗凝固療法の適応判断に迷う場合
- 心不全や弁膜症などの器質的心疾患が疑われる場合
- 症候性でリズムコントロール(カテーテルアブレーションを含む)の適応を検討する場合
- 頻脈のコントロールが困難な場合
心房細動では、抗凝固療法の適応評価や
レートコントロール・リズムコントロール
の治療方針決定が重要になります。
特に比較的若年で
症候性の患者さんでは、
早期のカテーテルアブレーションが
選択されることもあり、
循環器専門医との連携が望まれます。
クリニックが担う役割
一方、高齢者の無症候性心房細動などは、
循環器専門医と連携しながら、
クリニックが血圧管理や
抗凝固療法の継続、出血リスクの評価、
服薬アドヒアランスの確認などを
担う場面も少なくありません。
高血圧診療のなかで脈拍を確認し、
心房細動を早期に拾い上げ、
適切なタイミングで専門医へつなぐことが
脳梗塞や心不全の予防につながります。
まとめ
60歳以上の高血圧患者さんでは、
加齢とともに心房細動を合併するリスクが高まります。
特に無症候性心房細動は、
動悸などの自覚症状だけでは
気づきにくいため、日常診療での
検脈や血圧測定時の脈拍確認、
家庭血圧計の不規則脈波表示など
小さなサインを見逃さない視点が重要です。
心房細動が疑われた場合は、
12誘導心電図による確認を基本とし、
受診時に洞調律であっても
発作性心房細動が疑われる場合には、
携帯型心電計や貼付型長時間心電計、
ホルター心電図などを活用した追加評価を検討します。
心房細動が確認された後は、
心不全の合併や脳梗塞リスクを評価し、
適切なタイミングで循環器専門医へ紹介することも重要です。
高血圧患者さんを診療するクリニックは、
心房細動を早期に拾い上げられる最も身近な存在です。
日常診療の中で脈を確認し、
必要な検査につなげ、
専門医と連携することは、
脳梗塞や心不全の予防、さらには
患者さんの予後改善につながる重要な役割といえるでしょう。







