
第1弾の記事でご紹介した
紹介のタイミングを見極めた後に
重要となることは、「いかに確実にバトンを渡すか」です。
どれほど適切なタイミングで紹介しても、
診療情報提供書(紹介状)の
内容が不十分であったり、
患者さんの納得感が欠けていたりすれば、
紹介先での診療にブレーキがかかり、
結果として患者さんの不利益を招きかねません。
そこで、第2弾となる本記事では、
- ポイント②「診療情報提供書(紹介状)の質」
- ポイント③「患者さんへの説明」
- ポイント④「地域連携」
に関して、症例を交えて考えてみたいと思います。
第1弾では、ポイント①「紹介のタイミング」を解説!
記事はこちらから
医療連携のポイント②「診療情報提供書(紹介状)の質」
適切に伝わる診療情報提供書(紹介状)は、診療を加速させます。
どのような内容が伝わりやすいのか、
筆者の体験を交えて解説します。
伝わる「診療情報提供書」とは
診療情報提供書は、患者さんとともに
次の医療機関へ渡る「診療のバトン」です。
その書き方により、紹介先での
診察の質やスピードは大きく変わります。
症状の出現時期、増悪の経過、
これまでの検査結果が整理されているかご確認ください。
特に以下2点に着目して作成すると良いでしょう。
- 目的がはっきりしていること
- 要点が整理されていること
具体的には、以下の点を押さえておきましょう。
- 傷病名
- 紹介目的
- 既往歴及び家族歴
- 症状経過及び検査結果
- 治療経過
- 現在の処方
これらのポイントは、時系列で整理して
説明することが求められます。
また、【紹介目的】には
「精査目的」、
「治療方針のご相談」、
「手術適応の判断」など、
紹介の目的を明確に記載してください。
例えば、慢性的な腹痛を
訴える患者さんを
消化器内科へ紹介する場合、
単に「腹痛精査」とするのではなく、
「腹痛のため上部内視鏡検査を含めた精査加療の相談です。3か月前より出現した間欠的な心窩部痛、腹部所見軽微も、PPI内服で改善乏しく、3か月で6kgの体重減少あり。悪性疾患も懸念されるので内視鏡検査なども含めて精査加療を相談したい」
といった内容が明確に分かるよう、
目的や背景を具体的に示すことが望ましいです。
<筆者の体験>
当院が紹介を受ける側で印象的だった、
不整脈による動悸疑いで紹介された
患者さんのケースをご紹介します。
診療情報提供書には、
「動悸発作は月に数回、10分程度で自然軽快。動悸出現時の自己検脈では脈拍120回前後で不整あり、受診時の心電図は洞調律」
と、動悸出現時の状況が
詳細に記載されていました。
この具体的な情報により、
発作性心房細動を強く疑い、
初診時から適切な検査・治療につなげることができました。
ありがちな「もったいない診療情報提供書」
一方で対応に困るのは、次のようなケースです。
- 紹介目的が不明確
- 必要な検査結果が添付されていない
- 経過がわからない
このように、必要な情報が不足している場合、
診療がゼロからのスタートとなります。
紹介目的が不明確だと、
何に重点を置いて診療すべきか分からず、
判断に時間がかかったり、
結果的に同じ検査を繰り返えしたりすることになります。
その結果、最終的には適切な治療開始が遅れ、
患者さんの負担増加や不利益につながるかもしれません。
診療情報提供書では、
「何を評価してほしいのか」
を明確にすることがもっとも重要です。
「虚血性心疾患の除外」
「内視鏡検査の依頼」など、
目的が明示されていれば、
専門医はそこに焦点を当てて診療を進めることができます。
以前、筆者が受けた紹介では、
名刺の裏に「よろしく」とだけ
書いてあったものや、
判読が難しい文字で記載されたもの、
延々と昔からの経過が記載され
要点がわからないものなどもありました。
読み手が迷わないように
要点を押さえて記載することが、
スムーズな紹介、適切な治療につながるでしょう。
医療連携のポイント③「患者さんへの説明も大切」
ここでは、患者さんへの説明という側面から解説します。
医療連携をスムーズにするだけでなく、
患者さんの不安を払拭するため、
重要なポイントを整理します。
紹介目的を共有し、前向きな受診を促す
紹介の質は、患者さんの理解度によっても大きく左右されます。
特に、紹介する際には
「なぜ紹介が必要なのか」を
患者さんがどれだけ納得しているかが重要です。
「念のため検査してきてください」
という曖昧な言葉よりも、
「心臓に負担がかかっている可能性があり、心臓病の可能性があるので、専門の設備で詳しく調べたい」
と説明された患者さんの方が、
検査への同意もスムーズで、
診療の流れが円滑なことが多いです。
一方で、説明が不十分な場合、
患者さんは「聞いていた話と違う」
「そんなつもりではなかった」
と不安や不信感が先行し、
スムーズな検査や治療に影響を及ぼす可能性があります。
見通しを伝えて心理的ハードルを下げる
紹介先でどのような検査が行われ、
どのくらいの時間がかかるのか、
入院や手術の可能性はあるのか、など
今後の見通しについての事前説明も重要です。
「採血検査やCT検査をやると思うので時間がかかると思う」
「場合によっては手術や入院になる可能性もある」
など、想定される流れを伝えることで、
患者さんは心の整理をすることができ、
心理的ハードルが下がることにつながります。
かかりつけ医(プライマリケア医)は信頼の架け橋
かかりつけ医からの紹介は
患者さんの行動を大きく左右します。
「症状がないと受診しない」
と考える患者さんも多いですが、
「かかりつけの先生に言われたから」
という信頼は、患者さんの背中を押す重要な要素です。
紹介は医療者同士の連携であると同時に、
患者さんの理解と納得が
大切であることも忘れてはいけません。
その橋渡し役として、かかりつけ医の説明は非常に大きな意味を持ちます。
医療連携のポイント④「地域連携の重要性」
円滑な紹介の背景には、地域医療における日頃の関係づくりがあります。
勉強会やカンファレンスなどで
顔を合わせている医師同士であれば、
「この症例はあの先生に相談しよう」
という判断が自然にできるようになります。
筆者も、地域の総合病院の医師や、
地域の他専門科の医師と定期的に、
症例検討会や勉強会を行い、
日常的にコミュニケーションを取ることで
地域でのスムーズなやり取りが行えるようになってきました。
さらに、退院後の逆紹介や
継続フォローにおいても、
相互理解のある関係性は大きな力を発揮します。
「紹介して終わり」ではなく、
「その後もつながる関係」を築くことが、
地域医療の質を高めると感じています。
まとめ
かかりつけ医(プライマリケア医)から
専門医への円滑な医療連携は、
患者さんの予後を左右する重要な医療行為です。
適切なタイミングの見極め、
質の高い診療情報提供、
患者さんへの十分な説明、
そして日頃からの地域連携を行うこと。
これらが揃って初めて、スムーズで有効な紹介が実現します。
かかりつけ医と専門医が
互いの役割を理解し、
信頼関係のもとに連携することで、
よりよい医療を患者さんへ届けられると考えます。
本記事でご紹介した内容が、
先生方の日々の診療における
円滑な医療連携の一助となれば幸いです。
執筆・監修医師
小鷹 悠二 (おだか ゆうじ)
所属:おだかクリニック 副院長
資格:日本循環器学会専門医、総合内科専門医、医学博士、産業医
総合病院・大学病院での勤務を経て、2018年よりおだかクリニックの副院長として診療・経営にあたる。専門の循環器疾患(虚血性心疾患、心不全、不整脈など)はもちろんのこと、高血圧や高脂血症、糖尿病等の生活習慣病や内科疾患全般の診療に従事。現在は、産業医や学校医など地域の医療を支える活動や、医療コンサルト、ライティング業務など幅広く活動している。




