
「何人くらいのスタッフが適正?」
「クリニックの質を保つためにはどのようにスタッフを教育すべき?」
このような疑問を抱えるクリニックの先生も
少なくないでしょう。
健全なクリニック経営において、
スタッフの質や数は非常に重要です。
マンパワーが不足して
スタッフの不満が溜まれば、
提供する医療の質は低下するでしょう。
逆に、人数が多いと人件費はかさみ、
スタッフ間のトラブルも増えるかもしれません。
本記事では、クリニック経営における
スタッフの適正人数や教育方法について
解説します。
クリニックスタッフの適正人数を考える3つのポイント
スタッフの適正人数は
それぞれのクリニックの集患力や
提供している医療の内容、
クリニックの専門性によっても異なります。
そのため、一概に「●人が正解」とは言えません。
ここでは、多くのクリニックで
目安となる以下の3つの指標についてご紹介します。
- 来院患者数
- 人件費率
- 人時生産性
1. 来院患者数
来院患者数は日によって異なりますが、
スタッフの適正人数を考える際には
1日の最大来院患者数の70%程度を
1日の来院患者数の目安とするのが一般的です。
患者さん1名あたりの処置に時間のかかる
人工透析などの診療は例外とし、
通常の外来業務であれば、
患者20名あたりスタッフ1名が適正とされています。
<例:1日の最大来院患者数200名の場合>
来院患者数の1日平均:140名
必要なスタッフ数:7名
2. 人件費率
スタッフを雇うには人件費がかかるため、
来院患者数だけでスタッフを揃えるのは
クリニックを経営する上で危険です。
スタッフの人件費率は、
クリニックの売り上げの
15%程度が理想的であり、
30%を超える場合は利益を確保しにくくなります。
実際に、令和5年度に実施された
医療経済実態調査によれば、
無床クリニックにおける人件費率は
内科で24.2%、小児科で23.0%でした。
<例:スタッフ7名を雇う場合>
スタッフ1名あたりの年収を300万円とすると
人件費:2,100万円
必要な売上:
人件費率15%の場合→1億4,000万円
人件費率30%の場合→7,000万円
3. 人時生産性
人時生産性とは、
「スタッフ1人あたりが1時間でどれだけ稼いでいるか」の指標です。
粗利(売上—材料費等)÷労働時間で算出されます。
<例:スタッフ7名が月160時間勤務>
粗利560万円の場合:人時生産性5,000円
粗利1,120万円の場合:人時生産性10,000円
現時点(2025年12月)では、
クリニックにおける人時生産性の
一般的な指標はありませんが、
人時生産性と同様の考え方をする
労働生産性のデータを踏まえると
5,000円程度を目安として考えると良いかもしれません。
労働生産性
成果(産出量や付加価値)÷労働投入量(従業員数や労働時間)
参照元:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2024
当然、経営者にとっては
人時生産性が高いに越したことはなく、
人時生産性が低い場合は
スタッフが多すぎて暇を持て余している可能性もあります。
人時生産性の向上のためには、
スタッフ数を適正化するとともに、
業務効率化を図る必要があり、
既存スタッフの教育が大切です。
クリニックスタッフの教育方法4選
人時生産性の向上はもちろんのこと、
業務上のトラブルを回避するためにも、
スタッフ教育は避けて通れません。
さらに、昨今の医療業界は
人手不足が取り沙汰され、
とりわけ看護師不足は深刻です。
そのため、外部から優秀な人材を
複数人確保するのは難しい場合が多く、
既存スタッフの教育の重要性が増しています。
効率的に教育を推進するために、
以下の4つを心掛けましょう。
- クリニックの理念を周知する
- 接遇に気を配る
- 各職種のマニュアルを作る
- 教育を標準化する
1. クリニックの理念を周知する
経営方針や診療において
大切にしていることなど、
スタッフ全員がクリニックの理念を
共有することが最も重要です。
スタッフの行動や判断の一つ一つが
理念に沿うことで一貫した対応ができ、
生産性の向上につながります。
2. 接遇に気を配る
患者さんが受診するときは
医師よりも先に事務員や看護師の対応を
受けることが多いです。
診療中はもちろんのこと、
電話対応や受付窓口での接遇にも気を配るべきです。
3. 各職種のマニュアルを作る
なんらかのトラブルやミスがあった場合、
個人の能力のせいにするのではなく、
同じようなミスが起こらないように
各職種のマニュアルを作っておきましょう。
また、あらたに発生したトラブルをふまえ、
定期的に見直すようにしましょう。
4. 教育を標準化する
以上のような対応を
いつでも提供できるように、
スタッフの教育体制を整えておきましょう。
教育する人によって実施内容や
実施タイミングが変わらないよう
しっかり標準化しておくことが肝要です。
▶会員限定コンテンツ
無料ダウンロード可能な
「クリニックにおける接遇対応マニュアル」
をご用意しております。
ぜひご活用ください。
まとめ
スタッフ数が多くても
教育不足でサービスの質が低ければ、
人件費比率は高くなり、
人時生産性は低下します。
一方、どんなにスタッフの質が高くても、
少人数すぎると誰かの離職とともに
体制を維持できなくなります。
スタッフの数と質は
クリニック経営に大きく影響するため、
定期的に自分のクリニックの状況を
見直すことをおすすめします。
医師 H.N.





