自覚症状がなくても心房細動(AF)を疑うべき兆候|健診・日常診療で見逃さないポイント【オムロン ヘルスケア監修】

「動悸がないので、心房細動(AF)ではなさそう」とは言い切れません。AFは無症状のまま存在することがあり、発作性の場合は、診察時の心電図で異常が見つからないこともあります。だからこそ、症状だけで判断せず、脈の不規則さや健診結果、患者さんの背景にも目を向けることが大切です。健診や日常診療でAFを疑うサインと、必要に応じた追加検査の考え方をご紹介します。

自覚症状がなくても心房細動は存在する

心房細動(AF)は、脳梗塞や心不全と密接に関連する不整脈です。しかし、AFというと「動悸がある不整脈」というイメージを持たれることが多く、症状がない患者さんでは見逃されることがあります。

実際には、AF患者さんの中には自覚症状をほとんど訴えない無症候性AFが存在することが知られています(1)。特に高齢者では、AFがあっても動悸を自覚せず、「少し疲れやすい」「年齢のせいで息切れしやすくなった」と捉えているケースもあります。

また、AFは発作性に出現する場合があり、診察時には正常な洞調律に戻っていることもあります。このため、症状の有無や単回の心電図検査だけでAFを否定することはできません(2)。

AFの早期発見には、自覚症状だけに頼らず、健診結果、脈拍所見、患者背景、日常の血圧測定で得られる情報などからAFの可能性に気づき、必要な検査につなげることが重要です(2,3)。

健診・診察でAFを疑うサイン

AFは健診や日常診療の中で偶然発見されることも少なくありません。以下のような所見がみられる場合には、AFの可能性を考慮する必要があります。

① 心電図でAFが疑われる

もっとも典型的なのは、健診や外来で実施した心電図検査でAFが疑われるケースです。AFを疑う主な心電図所見として、明瞭なP波を認めないことや、R-R間隔が不規則であることが挙げられます。

ただし、発作性AFでは発作が起きていない時間帯の心電図は正常となるため、単回の心電図で異常が認められなくてもAFを否定することはできません(2)。

② 問診・脈拍触診・聴診で手がかりを探す

診察時の脈拍触診や聴診は、AFを疑うための手がかりになります(2)。患者さん自身に動悸の自覚がなくても、脈や心音の不規則性、心拍数の変動などを認める場合にはAFの可能性を考えます。

また、軽い息切れ、疲れやすさ、ふらつき、運動耐容能の低下など、非特異的な症状を伴うことがあります。患者さん自身が加齢や体力低下による変化と捉えている場合もあるため、こうした変化を積極的に確認することが大切です(1)。

③ 日々の家庭血圧測定をAFの拾い上げの機会にする

家庭血圧測定は高血圧のある患者さんを中心に日常的に行われており、血圧測定をAFの可能性に気づく機会として活用できる場合があります。65歳以上でAF既往のない1,607名を対象とした研究では、血圧測定と同時にⅠ誘導心電図を記録する機器を用いたスクリーニングで0.93%に新たなAFが検出され、高血圧のある患者さんでは高血圧のない患者さんに比べ、AFが検出される割合が約3倍高かったことが報告されています(3)。

血圧測定などで脈の不規則性やAFの可能性が示された場合には、それだけでAFと確定するのではなく、心電図による確認など適切な診断につなげることが重要です。

血圧測定を活用したAF発見については、以下の記事もご参照ください。

特にAFを意識したいのは、”高齢+高血圧”の患者さん

年齢(加齢)と高血圧はAF発症の代表的なリスク因子であり、AFの有病率は加齢とともに上昇します(2,4)。そのため、特に高齢で高血圧の患者さんでは、自覚症状が乏しくてもAFの可能性を意識することが重要です。

糖尿病、心不全、肥満、睡眠時無呼吸などもAFの発症・進展に関連する背景因子として知られています。こうした背景因子を持つ患者さんでは、日常診療で脈拍や心電図、症状の変化などを確認します(2)。

AFが疑われたら?見つかったら?

AFが疑われた場合:発作性AFを念頭に長時間記録も検討

AFが疑われる場合には、診断確定や病態評価のために追加検査を検討します。発現頻度の低い発作性AFでは、短時間の心電図記録では捉えられない場合があります。

14日間の連続心電図記録で検出された不整脈を100%とした研究では、累積検出率は24時間で55.2%、7日間で96.6%でした(5)。発作性AFが疑われるにもかかわらず単回心電図や短時間記録で捉えられない場合には、患者背景や発作頻度に応じて長時間心電図記録を検討する意義があります。

AFが見つかった場合:背景に潜在する心不全にも目を向ける

AFは心不全と密接に関連し、心不全の原因にも結果にもなり得ます。AFが確認された場合には、AFそのものの評価・治療だけでなく、「なぜAFが生じたのか」「背景に心不全が隠れていないか」という視点も重要です(6)。

特に高齢で高血圧のあるAF患者さんで、労作時の息切れや運動耐容能低下などを認める場合には、必要に応じてBNP/NT-proBNPなどのバイオマーカーや心エコーによる心機能評価につなげます(6)。

また、診断や治療方針の判断が難しい場合、心不全や構造的心疾患の合併が疑われる場合、頻脈・徐脈を伴う場合などには、患者背景や各医療機関の診療体制に応じて循環器専門医への紹介を検討します。

まとめ

AFは動悸などの症状を伴うとは限らず、無症候のまま存在することがあります(1)。特に”高齢+高血圧”の患者さんではAFの可能性を意識し、健診心電図、脈拍所見、日常の血圧測定などをAFの拾い上げの機会として活用することが重要です(2-4)。

また、無症候性AFでも、症状がないことをもって低リスクとは判断できません。無症候性AFと症候性AFで、死亡、脳卒中、塞栓症などの予後に大きな差がないことが報告されています(7)。

症状の有無だけで判断せず、患者背景や日常診療で得られる情報からAFの可能性に気づき、必要に応じて長時間心電図などの追加検査へつなげる。さらにAFが見つかった場合には、背景に潜在する心不全も含めて評価することが、早期発見から適切な診療につなげるうえで重要です。

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