他院から診療情報提供書(紹介状)を依頼されたら診療報酬を算定できる?

近隣のクリニックや病院から
「診療情報提供書を書いてほしい」
「返書をお願いしたい」
と依頼されたとき、
依頼を受けた側の医療機関が
診療情報提供料を算定できるのかは、
現場で迷いやすいポイントです。

結論としては、
「他院から依頼された」
という事実だけで、依頼された側が
診療情報提供料(Ⅰ)や(Ⅱ)を
算定できるわけではありません。

本記事では、診療情報提供書において、
依頼された側が算定できる報酬、
依頼する側が算定する代表的な報酬、
対象施設、返戻や査定を防ぐための注意点を整理して解説します。

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他院からの依頼で情報提供をしても診療情報提供料は算定できる?

結論:原則として診療情報提供料(Ⅰ)は算定できない

基本的に診療情報提供料は、
患者さんを他の医療機関等へ紹介する際に
紹介元が診療情報提供書(紹介状)を
作成・交付した場合に算定するものです。
そのため、他院から
「情報提供をお願いします」
「受診後の結果を返送してください」
と依頼された側、つまり紹介先が、
依頼を受けて対応をしても、原則として、
診療情報提供料(Ⅰ)を算定することはできません。

算定が認められるケースは
次のような場合に限られます。

  • 紹介先での対応後、紹介元での継続治療が必要で診療情報提供書を作成・交付した場合(逆紹介)
  • 紹介元の依頼で精密検査と診断を行い、その結果を紹介先へ文書で回答する場合

また、医科の医療機関が、
歯科からの依頼を受けて、
検査結果や投薬内容等を文書で提供した場合、
診療情報連携共有料(120点)を
算定できることがあります。

本記事の以下内容は統一して表記します
 紹介する側の医療機関=紹介元
 紹介を受ける、紹介された側の医療機関=紹介先

【紹介先向け】算定可能な診療報酬の詳細

紹介先の医療機関においても、
一定の条件を満たせば算定可能な報酬があります。
ここでは、代表的な2つをご紹介します。

1、連携強化診療情報提供料:紹介元への経過報告で算定

紹介先が、患者さんの受診後の
検査結果や治療経過、今後の方針などを
紹介元へ文書で報告する場面では、
要件を満たすことで、
連携強化診療情報提供料(150点)の算定が可能です。
これは、地域医療連携を推進する観点から設けられている評価です。
どの医療機関でも自由に算定できるものではありませんので注意が必要です。

<算定のポイント>

  • 紹介された患者さんであること
  • 紹介元へ文書で診療経過等を提供していること
  • 所定の疾患や施設基準を満たしていること
  • 患者さんの診療内容に基づく実質的な情報提供であること
  • 同一患者さんに対して3か月に1回まで算定可能

詳細な算定基準は以下の資料をご確認ください
 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定説明資料等について」
 説明資料「07_令和8年度診療報酬改定の概要 7.外来医療の機能分化・強化等」PDF 7ページ

単なる「受診しました」
「問題ありませんでした」では、
情報提供の質として不十分と判断されるおそれがあります。
実質的な情報提供として、
・「今回の評価」
 症状、所見、検査値、病状変化など

・「実施した内容」
 処方変更の有無、検査、指導内容など

・「連携先に依頼・共有したい方針」
 継続診療の項目、紹介・再連絡の目安、次回受診予定など

を記載することが必要です。

2、電子的診療情報評価料:電子的な情報連携に対する評価

地域医療連携ネットワークや
電子カルテ連携の活用が進む中、
紙の診療情報提供書だけでなく、
電子的に診療情報を共有する体制に対して
評価されるのが電子的診療情報評価料(30点)です。

<算定のポイント>

  • 他院から診療情報提供書の提供を受けた患者さんであること
  • 一定の電子的連携基盤を利用していること
  • 共有された診療情報を実際の診療に活用していること
  • 情報を自院の電子カルテ等へ適切に反映していること
  • 形式的な閲覧だけではなく、診療に資する情報連携であること

この評価料は、電子的な連携体制そのものが前提です。
そのため、PDFをメール送信しただけ、
個別にFAXを送っただけでは要件を満たしません。
地域医療連携ネットワークの体制や
検査結果、画像情報、
投薬内容、入院時概要等を
電子的に閲覧・共有できる体制
構築されていることが必要です。

また、連携体制を整えていても、
算定ルールが院内で共有されておらず、
算定漏れ、または誤算定が
起きやすい項目なので注意が必要です。

【紹介元向け】算定可能な診療情報提供料

ここでは、紹介元が算定できる2つの診療情報提供料を整理します。

診療情報提供料(Ⅰ):最も一般的な紹介のケース

診療情報提供料(Ⅰ)(250点)は、
患者さんを他の医療機関や対象施設へ
紹介する際に一般的に用いられる項目です。

<算定のポイント>

  • 患者さんの同意のもとで情報提供すること
  • 診療情報提供書を作成して交付すること
  • 紹介先での診療、検査、入院、相談等に資する内容であること
  • 単なる事務連絡ではないこと
  • 対象施設が算定上認められる範囲であること

厚生労働省のテンプレートをもとに、
診療情報提供の書き方マニュアルを作成しました!
何をどこまで書くべきか?をまとめています
「診療情報提供書(紹介状)作成マニュアル」


<対象となる紹介先の範囲>

  • 病院
  • 診療所
  • 歯科医療機関
  • 保険薬局
  • 訪問看護ステーション
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • 行政機関や福祉関係機関など、療養・就学・生活支援上必要な連携先

ただし、すべての介護施設や福祉施設が
無条件に対象になるわけではありません。
施設類型によって扱いが異なり、
算定対象外となるケースもあるため注意が必要です。
また、対象施設であっても、
情報提供の目的が診療や療養、
生活指導上必要であることが前提です。
たとえば、単なる証明書代わりの文書や、
患者さん希望で作成した内容
(診療上の必要性が乏しい文書)は、
別の文書料の扱いとなる可能性があります。

診療情報提供料(Ⅱ):セカンドオピニオンを求める場合

診療情報提供料(Ⅱ)(500点)は、
患者さんやそのご家族が他の医療機関で
セカンドオピニオンを求める際、
主治医が診療情報の提供で算定できる項目です。

<算定のポイント>

  • 患者さん・ご家族がセカンドオピニオンを希望していること
  • 他院での治療依頼ではなく、意見聴取を目的としていること
  • これまでの診療経過、検査結果、画像所見、病理結果などを整理して提供すること
  • 文書交付の実態があること

セカンドオピニオン後に
実際の治療を依頼する場合には、
状況によって診療情報提供料(Ⅰ)との
考え方が関係することがあるため、
目的の整理が大切です。

返戻を防ぐ!診療情報提供料のよくあるNG例と注意点

ケース1:受診を伴わない「返事」や「問い合わせ」

紹介元から「どうでしたか」
と聞かれたため返答しただけ、
あるいは受診前の相談に回答しただけ
などは、診療情報提供料の算定根拠として弱いです。
紹介先においては特に、患者さんの
実受診と診療経過に基づく情報提供であることが必要です。

<NG例>

  • 患者さんがまだ来院していない段階での返答
  • 電話のみの回答
  • 事務担当者間のやり取りのみ
  • 診療録上に根拠が残っていない対応

ケース2:診療情報提供書の記載要件を満たしていない

診療情報提供書や返書に
必要な情報が不足していると、
形式上「文書がある」だけでは不十分と
判断される可能性があります。

<NG例>

  • 宛先が不明確
  • 患者さんの氏名や生年月日の記載漏れ
  • 紹介目的の記載なし
  • 診断名の記載なし
  • 検査結果や経過の具体性がない
  • 医師署名または記名押印の不備

マニュアルとテンプレートを活用し
記載要件の漏れを防ぎませんか?
◆「診療情報提供書(紹介状)作成マニュアル」
◆ 厚生労働省「診療情報提供書テンプレート

ケース3:FAXやメールのみで文書を交付

情報提供の手段でFAXやメールを使うことは
実務上ありますが、診療報酬上の算定では
「文書交付」の実態が重要です。
※電子的診療情報評価料の評価を除く

<NG例>

  • 原本を作成していない
  • 診療録に控えが残っていない
  • 送付先や送付日が確認できない
  • 患者さんへ交付したのか、紹介先へ直接送ったのかが不明

ケース4:特別養護老人ホームなど対象外の施設への情報提供

介護・福祉系施設は種類が多く、
名称が似ていても算定可否が異なることがあります。
特に注意したいのが、特別養護老人ホームなどの施設です。
現場では入所調整や健康管理目的で
情報提供書を作成することが多いですが、
診療報酬上の診療情報提供料としては
対象外または要件を満たさないことがあります。

<NG例>

  • 老人ホーム全般を一律に算定対象と考えてしまう
  • 施設入所用文書を診療情報提供書と同じ扱いにする
  • 医療機関宛てではない文書も同様に請求する
  • 実際には診療連携ではなく入所判定資料として使われる文書に診療情報提供料を算定してしまう

まとめ

他院から診療情報提供書の作成や
返書を依頼された場合、
紹介先がそのまま診療情報提供料を
算定できるわけではありません。
原則として、診療情報提供料(Ⅰ)や(Ⅱ)は
紹介元が算定するものであり、
紹介先は連携強化診療情報提供料や
電子的診療情報評価料など、
別の評価項目で算定可能かを確認する必要があります。

診療情報提供書は単なる書類ではなく、
地域医療連携や継続診療の質を支える重要なツールです。
適正な算定ルールを理解し、
対象施設や要件を正確に押さえることで、
請求の適正化とスムーズな医療連携の両立につながります。

本記事が、今後の診療の一助となれば幸いです。

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