独居高齢者の単独受診!クリニックが取るべき情報連携の備えとは

高齢者が1人で受診するケースは
先生のクリニックでも
日常的に見られるのではないでしょうか。
独居で生活は自立しているため
「1人で大丈夫」
と判断するのは自然な対応です。

しかし診察内容や薬の指示が
誰にも共有されないままとなり、
誤った服薬が行われてしまうことも
少なくありません。

今回は、独居高齢者の診察に潜む
「情報伝達の穴」をご紹介します。

データでみる独居高齢者の増加

国立社会保障・人口問題研究所の
最新の統計(2024年推計)によると
2020年時点で65歳以上の単身世帯は約738万世帯に上ります。
さらに、「団塊ジュニア世代」
(1971〜74年生まれ)が
高齢者となる2040年以降から、
彼らが後期高齢者となる
2050年に向けて、独居高齢者数は
1,000万世帯を超え、急増し続ける見込みです。

独居の高齢者が1人で受診することは
今後ますます一般化し、
現場で直面する頻度が格段に高まります。
早い段階から仕組みを整えることが
重要だといえるでしょう。

診察のブラックボックス化

独居高齢者であっても、
診察や指示を出す方法は
他の患者さんと同じ対応でしょう。
しかし、高齢者は予想外に
認知や情報処理能力の低下が見られます。
説明にしっかりと頷き、
「分かりました」
と理解を示したように見えても、
実際は違う…ということがあります。

実際にあったケースをご紹介します。

<ケース①>
あるデイサービスを利用している
独居高齢者の患者さんで、
足背の浮腫が強く、病院を受診されました。
後日、デイサービスでは、
「先生が、とりあえず薬を全部やめましょうって言ったから、今は何も飲んでないのよ」
と本人が仰いました。
確かに浮腫は軽減していました。
しかし、その方はペースメーカー留置、
リウマチも抱えています。
総合病院の循環器科とリウマチ科を
それぞれ受診しているのに、
本人の説明からはどちらの医師の判断だったのか分かりません。
軽度の認知症もあり、これ以上の情報は得られませんでした。
結局デイサービスからケアマネージャーにその旨を連絡。
訪問薬剤師経由で主治医に確認し、
再度内服調整が行われました。

<ケース②>
高血圧で通院をしている独居高齢者の患者さん。
症状が悪化したため、クリニック医師に
「この薬を1錠から2錠に増やして飲んでください」
という指示を受けました。
患者さんは診察室で
「分かりました」
としっかり頷いて帰宅されました。

しかし、この患者さんは
薬の飲み忘れを防ぐため、
調剤薬局ですべての薬を一包化してもらっていました。
患者さん自身では薬の調整ができず、
薬局に相談することもなく、
薬が増量されないまま2ヶ月経過してしまいました。

このように、診察内容が
誰にも共有されなければ、
本人・家族・ケアチームの間に大きな齟齬が生じます。
結果として安全性や継続性が損なわれる
「ブラックボックス化」が起きるのです。

クリニックでできる独居高齢者の接遇

まずは高齢者が受診したら、
以下の情報を収集します。

  • 独居であるか
  • 介護認定を受けているか
  • 家族、ケアマネージャーなど本人以外で診療情報を伝える先はあるか

その上で本人以外に情報を伝達する方法を講じます。
例えば診察内容を紙で渡すという
アナログな手法も有効です。

診察の要点を大きな字でまとめた紙を
1枚渡し、家族やケアマネージャー等に
見せられるようにすれば誤解が減ります。
お薬手帳に挟んでおいてもらえば、
必要な時に必要な人に情報が届くことになるでしょう。
投薬の変更や重要な症状の発見時は、
キーパーソンに直接電話連絡することも有効です。

以前は、こうした対応が
クリニックの持ち出し(無報酬)になることが課題でした。
しかし近年は、医療DXが推進され、
診療報酬でも「医療DX推進体制整備加算」
など、情報連携を評価する仕組みが整備されています。

現在、マイナ保険証の利用や電子処方箋
電子カルテ情報共有サービスを通じた
医療機関同士での情報共有が本格化しつつあります。
こうしたデジタルでの情報連携体制の
社会的な流れを踏まえて、院内でも
家族や介護関係者への情報伝達方法を
あらかじめ整えておき、状況に応じて
アナログな対応を組み合わせることが
診療の質を上げ、患者さんの健康に資することになるかもしれません。

まとめ

独居高齢者の患者さんが
1人で受診するケースは増え続け、
診察内容が誰にも共有されないリスクは確実に高まります。

ごく普通に会話ができる患者さんでも、
実は認知や理解力が低下していることもあります。

適切な治療を継続するためにも、
本人以外のキーパーソンとの情報共有は欠かせません。
デジタルとアナログを組み合わせた
情報共有の仕組みづくりは、
将来的にはクリニックの信頼を高め、
地域からの評価や患者さんの
安心につながる「資産」になるはずです。

看護師 M.K.

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