
鑑別方法
飲酒歴
飲酒は「付き合い程度」「ビールを少し」と答える方が多く、そのままでは実際の飲酒量が分かりません。種類、1回の量、頻度を聞き、純アルコール量に換算します。計算式は以下の通りです。
純アルコール量=飲酒量(mL)×アルコール度数×0.8
たとえば、
- ビール350 mL缶(5%):350×0.05×0.8=約14 g
- 日本酒1合(15%):180×0.15×0.8=約22 g
- チューハイ500 mL缶(9%):500×0.09×0.8=約36 g
となります。
「毎晩ビール500 mLを2本、週末は日本酒2合」なら、平日は1日約40 g、週末はさらに日本酒分が加わり、週当たりの飲酒量は約300 gになります。飲酒の影響か判断に迷うときは、4週間ほど節酒または禁酒をしてもらい、再検査でγ-GTPが下がるかを確認しましょう。外来でも実施しやすい方法です。
肥満・脂肪肝
脂肪肝を疑う場合はBMIと腹囲も確認し、「20歳頃から何kg増えたか」も聞きます。超音波で脂肪肝を認め、肥満、耐糖能異常、高血圧、脂質異常症のうち、ひとつ以上の異常があり、さらに飲酒量が過量でない場合はMASLDです。
飲酒量が男性で1日30〜60 g、女性で20〜50 gなら、MASLDと飲酒の両方が関わるMetALDを考えます。治療は減量が基本で、現体重の5%以上、繊維化が疑われる場合は7~10%を目標にします。
糖尿病
HbA1cと空腹時血糖を確認します。糖尿病を合併している脂肪肝では、線維化が進みやすいので注意が必要です。線維化の評価にはFIB-4 indexが便利で、年齢、AST、ALT、血小板数から計算でき、特別な検査は要りません。
1.3以上(65歳以上は2.0以上)の場合は、線維化が進んでいる可能性があるため、詳しい評価ができる施設へ紹介します。
薬剤・サプリメント
薬剤性肝障害の可能性も忘れてはいけません。抗てんかん薬などでは、酵素誘導でγ-GTPだけが上がることがあります。一方、肝細胞障害を起こす薬剤としては、抗菌薬、NSAIDs、スタチン、アミオダロン、メトトレキサートが代表的です。
健康食品(サプリメントやプロテインを含む)や漢方薬の使用は、具体的に尋ねましょう。利用開始時期と悪化した時期を照らし合わせ、疑わしければ可能な範囲で中止し、4〜8週間後に再検査します。
ウイルス性肝炎
HBs抗原とHCV抗体は、少なくとも一度は確認しておきたい検査です。毎年健診を受けていても、肝炎ウイルス検査は項目に入っていないこともあります。脂肪肝があってもウイルス性肝炎は否定できず、合併もあります。C型肝炎は経口薬で治癒を目指せるため、見つける意味が大きい病気です。なお、B型肝炎は慢性化すると完治が難しく、核酸アナログ等による管理が中心です。
陽性なら、HCV-RNAやHBV-DNAまで自院で調べず、その時点で専門医へ紹介してもよいでしょう。
診断アプローチと評価のポイント
肝細胞障害型か胆汁うっ滞型かを確認し、飲酒、肥満・糖尿病、薬剤、ウイルスの順にチェックすると見落としが減ります。
初回の追加採血は、以下をまとめて出しておくと、方針を立てやすくなります。
- HBs抗原
- HCV抗体
- 血小板数
- HbA1c
- 脂質
- ALP
- ビリルビン
- アルブミン
胆汁うっ滞型では、腹部超音波検査で胆道系を確認します
ALPとγ-GTPの上昇が目立つ場合は、脂肪肝と決めつけないことが大切です。超音波検査ができない、胆道系の描出に自信がない場合は、検査も含めて専門施設に依頼する方が安全です。
中年女性で胆汁うっ滞型が続く場合は原発性胆汁性胆管炎(PBC)も考え、抗ミトコンドリア抗体が陽性なら専門医へ紹介します。
脂肪肝や飲酒が主な原因の場合は、かかりつけ医で減量や節酒を続けます。
ALT高値が続く場合や、脂肪肝・飲酒だけでは説明しにくい場合は、自己免疫性肝炎などほかの原因も考えます。
当院の症例
先日、健診でALT 68 U/L、γ-GTP 110 U/Lを指摘された50代男性が受診しました。毎晩ビール350 mLを1本飲み、本人は「お酒のせい」と考えていましたが、純アルコール量は1日約14 gで、MetALDには相当しません。
そのほか、BMIは28で、超音波では脂肪肝を認めました。HBs抗原とHCV抗体は陰性、FIB-4は1.1でした。代謝異常が主な原因と考え、MASLDとして減量を中心に治療し、3 kg減でALTは30台まで下がりました。
患者さんは過去に、アルコール性肝炎にC型肝炎を合併していた経験があり、お酒が原因と考えていましたが、やはり原因をひとつに決めつけないことが重要です。
通院を途切れさせないために
肝機能異常は自覚症状が乏しく、通院が途切れやすいため、初回で今後の方針を具体的に患者さんへ伝えることが重要です。「感染リスクがなければ、肝炎ウイルス検査は今回一度でよい」「次回の採血で○○を確認する」などを説明し、再検査の日付もその場で決めておきます。
純アルコール量やFIB-4は、口頭だけでなく紙に書いて渡すのも方法です。インターネットで調べる患者さんも多く、具体的な言葉や数字があると健康への意識が高まることもあります。
まとめ
健診でALTとγ-GTPの高値を指摘された患者さんが来院したらまずは飲酒、代謝異常、薬剤、ウイルスの4つを順にチェックしましょう。HCV抗体、FIB-4まで確認できれば、紹介すべき患者さんを見分けることができます。それ以外の患者さんは減量や節酒を中心に継続的なフォローアップが可能です。
肝機能の異常は症状が乏しく、放置されやすいです。だからこそ、最初に原因を整理し、今後の方針を患者さんと共有することが、かかりつけ医の大切な役目です。すべての患者さんを自院で診察する必要はありません。紹介すべき患者さんを見逃さず、やるべき検査・診療の範囲を意識することが、患者さんの肝臓を守ることにつながるかもしれません。
執筆・監修医師
本多 洋介 (ほんだ ようすけ)
所属:Myクリニック 本多内科医院(神奈川県横浜市) 院長
資格:総合内科専門医、循環器内科専門医
2009年、群馬大学医学部卒。伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院を経て、2024年6月より現職。共著書に『PCI㊙裏技テクニック』(メジカルビュー社)、『超音波ガイドEVT』(メジカルビュー社)など。







