
「在宅医療って儲かるの?」
「在宅医療を始めるにはどのようなメリットやコストがある?」
在宅医療を導入するか迷っている
開業医の先生の中には
このような疑問を抱く方も少なくないでしょう。
まず、在宅医療は通常の外来よりも
診療報酬が高く設定されています。
また、高齢者の数が年々増加する一方、
病院が経営困難に陥り倒産に至るケースは
増加傾向にあります。
つまり、在宅医療は高単価であり、
需要の増加も見込める医療になります。
一方で、導入するには
さまざまなコストも生じるため、
安定したクリニック経営のためには
導入する前に関連コストも
知っておく必要があります。
そこで本記事では、在宅医療に関して、
2026年最新の診療報酬や
関連するコストについて
わかりやすく解説します。
在宅医療とは?クリニックが導入するメリット
日本医師会によると、在宅医療とは、
地域のかかりつけ医が行ってきた
「患者さんを最期まで責任を持って診る」
という代表的な診療形態の1つです。
単に患者さんの自宅に
医療を届けるのではなく、
入院医療や外来医療、介護、
福祉サービスなどと相互に補完しながら、
患者さんの日常生活を支える医療のことです。
患者さんが住み慣れた地域で
その人らしい生活を最期まで送れるよう、
全人的な視点から支える重要な役割を持っています。
在宅医療はその診療スタイルによって下記の2つに大別されます。
- 訪問診療:事前に約束した日時で定期的に診察を行う
- 往診:在宅の患者さんから緊急要請を受けて、都度、診察を行う
在宅医療は厚生労働省や
都道府県が中心となり推進されており、
往診件数は横ばいではあるものの、
訪問診療件数は年々増加しています。
一方で、訪問診療を行う医療機関数は、
ここ20年ずっと約20%と横ばいであり、
特定の医療機関で多くの在宅の患者さんを
診療しているのが現状です。
今後新たに在宅医療を取り入れることで、
地域医療における自院の価値を高め、
他院との差別化や増収が見込める一方で、
・そのためのスタッフの新規雇用
・ご家族からの在宅医療への理解
・多職種連携ネットワークの構築
・24時間365日体制の構築、など
導入にはさまざまなハードルも伴います。
在宅医療の診療報酬>令和8年(2026年)改訂のポイント
在宅医療の診療報酬は
一般的な外来に比べて、
1人当たりの診療報酬単価が
高く設定されており、
収益が上がりやすい仕組みとなっています。
在宅医療で算定される診療報酬は、主に下表のとおりです。
| 算定内容 | 点数 | 令和8年改定のポイント・備考 |
| 往診料(基本) | 720点 | 時間外往診体制未確保の在支診(在宅療養支援診療所)は点数引下げ |
| 在宅患者訪問診療料 | 833点〜 | マンションなどの同一建物居住者へ同日複数名の診療をするかで変動 |
| 在宅医療充実体制加算 | 800点 | 【新設・拡充】旧緩和ケア加算を名称変更・重症者対応を評価 |
| 在宅ターミナルケア加算 | 2,000点 | 【拡充】充実体制加算届出機関による看取り評価を倍増 |
| 在宅時医学総合管理料(在総管) | 要件により変動 | 【厳格化】月2回訪問で重症者割合20%未満等の場合は減算対象 |
| 施設入居時等医学総合管理料 | 要件により変動 | 【厳格化】残薬確認・服薬管理が算定の必須要件化 |
| 在宅医療DX情報活用加算 | 10点 | マイナ保険証・電子処方箋等の活用を評価 |
| 訪問診療薬剤師同時指導料 | 300点 | 【新設】6か月に1回、医師と薬剤師の同時訪問を評価 |
| 外来・在宅物価対応料 | 3点 | 【新設】訪問診療時(令和9年6月より6点へ引き上げ予定) |
加算や実施した診療内容にもよりますが、
在宅医療の場合、診療1回あたりの収入は
患者さん1人につき
平均2〜3万円程度と言われており、
明らかに外来で得られる収入を上回ります。
また、
「24時間体制での往診」
「訪問看護の提供」
「緊急時の入院体制の確保」など、
在宅療養支援診療所の
施設基準を満たすことで、
各種加算や管理料を高く算定できるようになります。
そのため、在宅医療に
どれだけのリソースを割くかによっても
得られる収入は異なります。
令和8年度(2026年度)の診療報酬改定では、
「量から質へ」の転換が明確に打ち出されました。
重症患者さんへの対応や看取りなどに
積極的に取り組む医療機関を評価する
「在宅医療充実体制加算」が新設され、
要件を満たせば高い評価(加算の倍増など)が得られるようになりました。
一方で、要介護度の低い患者さんへの
一律の月2回訪問については評価が
適正化されているため、
重症度に応じたメリハリのある診療体制が求められています。
在宅医療に必要なコスト
在宅医療を導入・運用するためには、
下記のようなコストが必要です。
・人件費
・システム代
・移動車や診療グッズの購入
・広告宣伝費
在宅医療には夜間や休日に対応できる
医療従事者やドライバーの確保が必要で、
24時間体制にするか否かによって、
人件費は大きく異なります。
遠隔で操作できる電子カルテや
PACSなどのシステム代、
移動車や診療グッズの購入、
広告宣伝費など、導入にも運用にも
さまざまなコストがかかります。
特に令和8年度(2026年度)診療報酬改定では
24時間365日体制の要件が厳しくなり、
第三者(往診代行サービス等)を
利用する場合の要件も厳格化されました。
さらに、在宅療養支援診療所においては
BCP(業務継続計画)の策定も必須要件に追加されています。
これらに対応するための管理コストや
人員配置も、事前に見込んでおく必要があります。
そのため、在宅医療の導入に
失敗しないためには、
事前に地域のニーズを把握し、
在宅医療に取り組む割合を
どの程度振り分けるか、
最新の施設基準も加味した
緻密かつ長期的な計画を立てることが重要です。
まとめ
この記事では、在宅医療導入の
メリットやコストをご紹介しました。
診療報酬単価が高く、
また需要の増加も見込める在宅医療は、
開業医の先生にとって今後の新しい選択肢となるでしょう。
一方で、導入する上では
さまざまな初期コストや
ランニングコストがかかるだけでなく、
最新の制度変更で求められる要件
(24時間体制の厳格化やBCP策定など)に
対応するための緻密な計画を立てる必要があります。
今後クリニック経営の競争は
さらに激化することが予測されるため、
ぜひこれを機に、在宅医療導入を
検討されてみてはいかがでしょうか。
医師 H.N.



